「最近モンスター達の動きがどうも怪しいのです・・・」

そう呟き部屋の隅に視線を泳がせる〈ポン村長〉。

「へぇ・・・怪しいねぇ・・・」

腕を組み椅子の背もたれにもたれかかる。

「あやつら以前と比べると賢くなっている気がするのです。」

今度は俺の目をじっと見つめ真剣な眼差しでそう言った。

「賢くなったって・・・あいつら人間を見つければ我先と言わんばかりに迫ってくるだけじゃないのか?」

「それが・・・徒党を組んでいるらしいのです・・・」

そもそもモンスターというのはどういうわけか人間しか襲わない。

暗闇にうじゃうじゃ湧いて出たとしても周りに人間がいないとそこらをただ散策しているだけなのだ。

そのうち朝日が射せばその日光によりモンスターは基本的に消失するか焼失するのだ。

「偶然モンスターが同じ方向に進行してた・・・とかそんなオチじゃないよな・・・?」

信用しきれずについつい疑いの目で村長に聞き返す。

「この村の外壁には足場がありまして・・・そこで数名の監視係が黒い人影がモンスターに指示を出しているような素振りをしていた。と報せてきたのです。」

まさか。嘲笑しそうになったところを「現に・・・」と村長が続ける。

「現にここから南へ数十キロのところにある村が1件、西に進んでいき、大きな池を拠点とする村が1件・・・
その他にも村と呼べる規模ではないにしろ、数件が壊滅状態に陥ってます。そのすべてが統率化されたモンスター共が襲ってきた・・・ということなのです・・・。」

モンスターの統率化。

考えただけでゾっとする。

あの凶悪な怪物どもがインテリジェンスという概念を所持している。仮にそうだとしてもおそらくは複雑なものではないと思うが・・・。ここ数年モンスターと対峙してきたがそんなような事は一回もなかった経験がそう言ってるのだが・・・。

「村への危険が去るまでこの村にいてほしいのです。」

そう懇願され、渋諾しその日はパリーと共に宿舎へ足を運んだ。

見上げた夜空の月は深く紅い色をしていた。