決して整っているとは言えないがむしろそこが「味」とでも言える石畳が敷かれ、上空から見れば綺麗な円弧を描いているこの街の中心にはこの街の象徴(シンボル)であろう大きな噴水ある。

外側から見た石壁の反対側にあたるのは、木造で作られた簡素な住宅であり、家屋によっては商売を営んでいると思われる建物がいくつか乱立している。

あやすけのブログ


「村」といっても規模はとても広く、村の中では遅い時間だというのに出歩く人も少なくない。

それもこの村の造り、高く積まれた外壁による安心感がそうさせているのであろう。いくら明かりが充実していてもゾンビやスケルトンが街中に紛れ込むことも珍しくはない。そういう危険もあり日が落ちてから外に出るものは基本的に【戦闘】においてドロップアイテムを狙う者が多い。故にこの時間にこの人数。しかも老若男女関わらず家にいないのは素晴らしいとも言えるわけだが・・・

「随分と賑わいのある村なんですねぇ・・・」

と率直な感想を道案内をしてくれている村長に発する。

「まぁ最初からこの様な賑わいをみせていたわけではないのですよ。」

老齢の顔の目じりを下げニコニコと俺の方を見ながら村長が言う。まぁそうだろうな。と心の中で思うだけで口にはしなかった。

宿泊施設まで案内してくれればよかったのだが、到着したところは村長の持ち家。村の入り口の門からまっすぐ直線的に進み小さな高台を登ったところにポツンと1件だけ大きめの家屋がそれだ。

愛犬・・・ならぬ愛狼パリーを表で待たせ村長宅へお邪魔する。

リビングの椅子に手を添えられ「さぁさぁ」と着席を求められたので小さなため息を混ぜ腰かけた。

「申し遅れました。わたくしめの名は・・・」

と村長の話が始まった。どうも見た目とは裏腹に饒舌であった村長は「ポン」と名乗った。

「ツユ村」の「ポン村長」

なんだか可愛らしいなと思いながらも話しを聞いていた。

なぜ流れ着いた旅人に村長がこうも話したがるのか。

理由はすぐに理解できた。というよりも門のところで話した女が言った一言。

『マーヴェリックの方ですか・・・?』

ここで普通の村なら突っ返されるはず。少なくとも今までの経験上がそうであったから。しかし彼女はそうしなかった。ということは結論から言うと「マーヴェリック(MR)が必要」ということだ。

MRは建築、農耕等1人で行う。そして身を守るのも1人。故に戦闘能力はそこらの民間人を遥かに凌駕する。その戦闘能力が必要なのであろう。

「それで・・・俺は何をすればいいのかな?ポン村長。」

話しを遮られた村長は大きく目を見開いて瞬きを3回程し、すっと目を細らせた。先程までの雰囲気とはまるで別人。部屋全体の温度が一気に下がった。

「さすがMRですな・・・」と皮肉と称賛を混ぜっ返したように目の前の老齢なる人物は言い放つ。

「協力するってわけぢゃないけど・・・まぁこうして村にも入れてくれたわけだし。それくらいのお礼はしないとね。」

この時俺はこの村で起こる出来事が、自分にとって深く関係をもつものとはまだ知らずに・・・



to be continued