眼前に佇むやや年季の入った、しかし頑丈そうなそれはこの世界でおそらくは一番ポピュラーな木材「オーク」を大量に使用した「門」なのだが、目の前で見ると「門」と認識することを容易にさせてくれない。それは巨大(おお)きく、まるで何かに脅えているようにさえ見える。
門の両方から堅牢な石壁が門の外側と内側を遮断するように大きな円弧を描き、内側にあるであろう人々の住処を護っている。
門と石壁の周りには松明が定期的に置かれモンスターもこれなら近づき辛いであろう。
日が暮れる前にたどり着きたかったものの、いざ到着してみると周りは既に宵闇に包まれ門は堅く閉ざされてしまっていた。
「ここに来て野宿かよ・・・。」
確かにここならモンスターの追撃もない・・・とは言い切れないが辺りを見回しても敵意を抱いているような群衆も見当たらないし、明かりも十分。だがやはり目の前により安心でおそらくは宿屋もあるだろう・・・と思うと諦めきれない自分がいた。
ここ数日の野宿で正直体力はもちろん・・・風呂に入りたい・・・と切に思った。
石壁に背を凭れズルズルと臀部を地べたに落ち着かせ、はぁ~・・・と深いため息をつき満点の星空を見上げた。
なんかこうやってる俺ってロマンチストだな・・・とぼやきながらパリーの頭を撫でながら物思いに耽っていると・・・
「誰かいるんですか?」
幼さの残るやや高めの、声に驚き、喉の奥から情けなく高い声が「ひゃっ!?」と出てしまった。
「誰かいるんですか?」
再度投げかけられる問いに、答えなければ野宿確定!と瞬間的に判断した俺は門の向こう側からの質問に間髪入れず、「いるいるいます!」としどろもどろに答えた。
巨大な門の一部。丁度人が立ち上がった時の頭部にあたる場所が小窓の様に開き、先程の声より大きな声で「どちら様ですか?」と聞こえた。嬉しさと驚きが相俟って既に直立していた俺は慌てて小窓へと向かった。
誰もいない・・・???と頭の中に浮かぶ複数のクエスチョンマークを女の声がかき消した。
「あの・・・届かないんです・・・」
なるほど低身長すぎて小窓に顔が届かなかっただけなのだった。まぁそれにしても小窓から頭頂部すら見えないとなると相当身長が低いな・・・と失礼な事を思いながら「えーと・・・ちょっと旅をしてて・・・この村の噂聞いて来たんだけど・・・入れてもらえませんかね・・・」とまぁ虚実と真実を清濁織り交ぜ発した言葉に対し…
「マーヴェリックの方ですか・・・?」
ぼそりと低身長な女が呟いた。
『マーヴェリック』・・・主に集団や村、町などで共同して生活していくスタイルの人々を『フェロートレーダー(FT)』と言い、それに反し、単独で建築から農業、狩猟までをも1匹狼で行うのが『マーヴェリック(MR)』と呼ばれている人種。FTの人たちからするとただのはぐれ者という認識が強く、毛嫌いされているのが現状だ。
「やっぱマーヴェリックは厳しいのかな・・・?」と静かに問いかける。まぁ覚悟はしていた。というよりもそもそもこの扱いには慣れているし別に恥や戸惑いもない。自ら望み、臨んだ道なのだから。
俺の問いに女は「今村長を呼んできます。」とだけ言い残し足早にどこかへいってしまった・・・ような足音だった。
待つこと数分。小窓から顔を覗かせたのは老齢だが目の奥に何やら芯の強い・・・何かを感じさせる瞳だった。老人は静かに口を開いた。「旅の人よ。お疲れの様だ・・・さぁさぁ・・・今門を開けましょう。少しお下がりなってください。」優しい口調で老齢の村長はその言葉を残しすっと小窓から離れた。
ぎいぃぃぃっ・・・と大量の木材とそれらを補強する冷やかな金属が軋み、鈍い悲鳴をあげている。
門が開くとそこは予想以上に古めかしく、しかし想像以上に温かみのある村だった。
門の両方から堅牢な石壁が門の外側と内側を遮断するように大きな円弧を描き、内側にあるであろう人々の住処を護っている。
門と石壁の周りには松明が定期的に置かれモンスターもこれなら近づき辛いであろう。
日が暮れる前にたどり着きたかったものの、いざ到着してみると周りは既に宵闇に包まれ門は堅く閉ざされてしまっていた。
「ここに来て野宿かよ・・・。」
確かにここならモンスターの追撃もない・・・とは言い切れないが辺りを見回しても敵意を抱いているような群衆も見当たらないし、明かりも十分。だがやはり目の前により安心でおそらくは宿屋もあるだろう・・・と思うと諦めきれない自分がいた。
ここ数日の野宿で正直体力はもちろん・・・風呂に入りたい・・・と切に思った。
石壁に背を凭れズルズルと臀部を地べたに落ち着かせ、はぁ~・・・と深いため息をつき満点の星空を見上げた。
なんかこうやってる俺ってロマンチストだな・・・とぼやきながらパリーの頭を撫でながら物思いに耽っていると・・・
「誰かいるんですか?」
幼さの残るやや高めの、声に驚き、喉の奥から情けなく高い声が「ひゃっ!?」と出てしまった。
「誰かいるんですか?」
再度投げかけられる問いに、答えなければ野宿確定!と瞬間的に判断した俺は門の向こう側からの質問に間髪入れず、「いるいるいます!」としどろもどろに答えた。
巨大な門の一部。丁度人が立ち上がった時の頭部にあたる場所が小窓の様に開き、先程の声より大きな声で「どちら様ですか?」と聞こえた。嬉しさと驚きが相俟って既に直立していた俺は慌てて小窓へと向かった。
誰もいない・・・???と頭の中に浮かぶ複数のクエスチョンマークを女の声がかき消した。
「あの・・・届かないんです・・・」
なるほど低身長すぎて小窓に顔が届かなかっただけなのだった。まぁそれにしても小窓から頭頂部すら見えないとなると相当身長が低いな・・・と失礼な事を思いながら「えーと・・・ちょっと旅をしてて・・・この村の噂聞いて来たんだけど・・・入れてもらえませんかね・・・」とまぁ虚実と真実を清濁織り交ぜ発した言葉に対し…
「マーヴェリックの方ですか・・・?」
ぼそりと低身長な女が呟いた。
『マーヴェリック』・・・主に集団や村、町などで共同して生活していくスタイルの人々を『フェロートレーダー(FT)』と言い、それに反し、単独で建築から農業、狩猟までをも1匹狼で行うのが『マーヴェリック(MR)』と呼ばれている人種。FTの人たちからするとただのはぐれ者という認識が強く、毛嫌いされているのが現状だ。
「やっぱマーヴェリックは厳しいのかな・・・?」と静かに問いかける。まぁ覚悟はしていた。というよりもそもそもこの扱いには慣れているし別に恥や戸惑いもない。自ら望み、臨んだ道なのだから。
俺の問いに女は「今村長を呼んできます。」とだけ言い残し足早にどこかへいってしまった・・・ような足音だった。
待つこと数分。小窓から顔を覗かせたのは老齢だが目の奥に何やら芯の強い・・・何かを感じさせる瞳だった。老人は静かに口を開いた。「旅の人よ。お疲れの様だ・・・さぁさぁ・・・今門を開けましょう。少しお下がりなってください。」優しい口調で老齢の村長はその言葉を残しすっと小窓から離れた。
ぎいぃぃぃっ・・・と大量の木材とそれらを補強する冷やかな金属が軋み、鈍い悲鳴をあげている。
門が開くとそこは予想以上に古めかしく、しかし想像以上に温かみのある村だった。