彼は、当時、私より2歳年上の24歳。
私はその時フリーではなく、他の人と付き合う事は許されない身でしたが、
どんどん、彼の魅力に惹きつけられていき、
心も身体も離れる事ができなくなっていきました。
当然、彼の強い要望で、それまでのお仕事は辞め、
新しいお昼間の仕事を探しました。
そして、社宅扱いになっていたマンションを引き払い、
住まいも新しく変わりました。
それまで住んでいたマンションは、仕事先から歩いて通える、
都会のワンルームマンションで、
24時間管理人が常駐し、ロビーも豪華で、
内廊下には、赤い絨毯が敷かれていました。
ベッドやサイドボードなどの家具は造り付けで、
床も毛足の長い白い絨毯が敷き詰められた、高級マンションでした。
今度の所は、4階建ての1DKのアパートの3階で、
1階が喫茶店、2階が大家さん、
3・4階が6部屋のこじんまりとした可愛いアパート。
もちろん、エレベーターはなく、外階段をのぼっていきます。
彼の自宅から、車で10分程の距離にあるのも、決め手となりました。
私の新しい仕事先は、宝石の卸商社の受付兼事務。
商社というと聞こえはいいですが、
宝石店や、個人の宝石商の人たちが出入りし、
営業の男性たちが、国内外に出かけて宝石を仕入れたり、
得意先をまわったりしていました。
お給料は安く、家賃の一部を彼に補助してもらっていました。
エアコンとセミダブルのベッドも買ってもらいました。
大手の企業に勤めているとはいえ、彼もまだ若く、
お給料はそんなに高くなかったのですが、
実家から通っているので、生活費がかからないと言って、
彼のお給料のほとんどを、私達二人のために使ってくれました。
付き合っている間、二人で何度か旅行に行きました。
彼は見栄を張りたいのか、実家の生活レベルからくるのか、
新幹線は、必ずグリーン車。
ホテルも、いつも高級な所を予約してくれて、
サプライズも好きで、よく、前もって、ホテルのお部屋に、
シャンパンやフルーツの盛り合わせなどを用意してくれていました。
他にも、特別な日ではなくてもバッグや服などのプレゼントをくれたり、
仕事から帰って来ると、部屋が暗いので、いないのかなと思っていたら、
部屋の中で、キャンドルだけを灯して、
オードブルのようなものを買って並べて用意してくれたりしました。
彼は、帰国子女なので、当然英語は得意で、
疲れてくると、日本語ではなく英語になってしまうほどで、
将来は、絶対カナダに戻りたいと言っていました。
この時、私は中学レベルの英会話くらいしかできず、
彼が電話などで、流ちょうに英語を話している事に寂しい思いをしていて、
この時の事を引きずっていて、今、一生懸命英語を勉強しているのかも・・・
すごく優しくて、情熱的で、紳士的な彼でしたが、
一方で、私の話し方や、行動、服装にかなり注文をつけてきました。
また、結構、嫉妬深い所もありました
彼曰く、
海外の女性のように、しっかりとした自分の意見を持ち、
NOがはっきり言えなくてはいけない とか、
露出の多い服は、着てはいけないとか、
男性にむやみやたらに笑顔を見せてはいけないとか、
(海外では、ニコッとすると自分に気があると思うらしい)
最初は気にならなかったけど、
いつも、私の顔を覗き込んだり、
行動を監視している所があり、
私もいつの間にか、彼の顔色を伺うようになっていました。
それでも、一緒にいられることが嬉しくて、楽しくて、
こんなに、愛し愛されている私達は、もう離れられないと思っていました。
でも、
心の片隅では、いつも、不安を感じていました。