店先に大事な商品を置きっぱなし。

 

これも実際のお店で例えるとすぐにわかることだが、売れていないホームページのほとんどは商品をただ並べてあるだけである。

 

ホームページは、カタログのように商品画像だけ並べて置けばいいという、まったく工夫のない思い込みがある。

 

実際の店舗で、店先に商品だけ並べておいて売れているところがあるならば商売は簡単だ。

 

しかしそれだけでは売れない。

 

電子カタログではなく、あくまでもお店である。

 

有名な「穴あき包丁」はホームセンターで棚に置いてあってもなんとも思わないが、実演販売のプロが口上やセールストークを交えて面白おかしく商品を演出するから、一日に50本も売れるのだ。

 

自社の商品・サービスをどう魅力的に表現するか ? が最大のポイントだ。

 

マーケッティングや戦略における、事業ドメイン(事業の存在領域)とか、ポジショニングといわれるものと似ている。

 

扱っているもので商売が決まるのではない。

 

100円ショップは、雑貨を売っているのではない。500円で30分間、買い物を楽しむことを売っている。

 

100円雑貨もエンターテェーメント事業として位置付けている。

 

ドンキホーテも似ている。

 

マクドナルドはハンバーガーを売っているのではない。手軽に食べられるのが売りである。

 

マクドナルドより、美味しいハンバーガーを作れる人は世界にたくさんいる。

 

しかし、マクドナルドがここまで大きくなった理由は、ハンバーガーを売ったからではない。

 

早く手軽に簡単に気安く食べられるということを売ったのだ。

 

時間がないせっかちな時代に、時間を売ったのだ。

 

家の内装工事店で伸びているところは「新築そっくりさん」なんて名前で「内装工事することで今より使いやすくなります」ではなくて「新築したときと同じように綺麗になります」と表現を変え、ポジションを変え、ターゲットを新築したがっている層に切り替えている。

 

薬を売っているから、薬局といえるが、地域密着ではお客さん一人ひとりの健康状態まで把握する「健康管理の相談役」として事業ドメイン=自社の生存領域を決め、ポジショニングしているところと、マツモトキヨシのように若い女性にターゲットを絞り、化粧品の比率を高め、手軽に安価に、人通りの多いところに出店していく「化粧品と薬のコンビニ」とポジショニングするかで、戦略的にはまったく違う。

 

先ほどの「穴あき包丁」も、なぜか電気コードを切っている。

 

そのパフォーマンスが、切れ味のいい包丁だなという印象を与えているわけだが、自宅で使っている包丁で電気コードを切ったことがある人がいないので、家の包丁でも切れるのかもしれない。

 

もちろん、ホームセンターの棚にある穴あき包丁は、まったく印象に残らない。

 

なにも、自社の商品・サービスをどのように表現するか、どのように伝えるか、頭を使って考えることが大切だということである。

 

その対極にあるのが商品をカタログ調にホームページに並べるだけという、商品置きっぱなし方式だ。

 

スーパーに買い物に行ったとしよう。

 

野菜売り場を見るとキュウリやキャベツなどの誰でもわかる野菜だけでなく、見たこともない名前もわからない野菜が沢山ある。

 

あなたは買うだろうか?

 

基本的に人は、なにに使えばいいのかわからない。

 

使っている姿を自分が想像しにくい、買うことによってどんないいことがあるのかわからないものは、どんなに安くても買わない。

 

野菜売り場の前に、よく知らない野菜を使ったサラダが、実際にあればそこで初めて、この野菜を買うとこんなことができるのかとイメージを膨らますことができる。

 

何も商品を売っている業種だけで有効なのではない。

 

特殊技術を売っている対法人取引の会社でも、その技術自体がどうかばかりでなく、最終的ユーザーにはどんないいことがあるのかをまずしっかり見せる。

 

理解してもらうことにより、購入意思決定は近いものとなる。

 

インターネットの世界では、商品・サービスの画像を貼っただけで、後は見た人が勝手にイメージしてくれと不親切な作りをしているのがほとんどだ。

 

一部の商品購入を目的とした、ユーザー以外のホームページをちょっとのぞきにきた人にとっては、本来のニーズ(購入したり、使用することによって得られるいいこと=便益・ベネフィット)を充たすことができるかどうかが一番知りたいことで、購入後のいいことをイメージできる作りになっていれば結果として購入してくれる。

 

くどくど商品の説明ばかり

 

もうひとつ大切なことに、くどくどした商品説明をメインにしないことがある。

 

これは前の薬局の話しと同じこと、「この薬は非ピリン系で、パッケージは 大 中 小 の3種類。内用成分は・・・、値段は・・・。」といきなり説明されても困ってしまう。

 

細かな説明は、お客さんが多少でも興味を持った後で、行ったほうが効果的だ。興味やイメージを持ってもらうには工夫が必要です。

 

本当にいい商品が売れるわけではない

 

「ファイト一発!」のリポビタンDは、お客さんにファイト一発になれるイメージを打っているのだ。

 

いい商品が必ず売れるとは限らないのはその為で、私も栄養ドリンクでリポビタンDとリゲインとユンケルのどれが成分的に優れていて、効き目があるのか裏の成分表を見くらべたり、飲み比べたことはない。

 

お客さんは商品を純粋に比較して購入しているわけではないのである。

 

いい商品だから売れるというのは幻想である。

 

イメージをしやすくする商品名から、購買力を高めている会社は沢山ある。

 

どんないいことがあるのか、すぐ分かる好例だ。

 

自社商品でない場合は、商品名を変えることはできないが、お店(ホームページ)の中で工夫できることはまだまだある。

 

結果として得られるベネフィット(便益)を出す

 

痛みに効く湿布であれば、「ひざの痛かったおばあちゃんが、湿布を貼ってひざを曲げて笑って座っている写真」。

 

食品であれば、「その食品を使って盛り付けた料理とそれを囲む家族団欒の写真」。

 

ゴルフクラブであれば、「ピンのそばで、最新クラブをもって持ってガッツポーズをしている写真」。

 

購入後、得られるいいことを入れることで、実際に売上は2倍3倍になる。

 

雑誌広告などで、「幸運になる石」や「幸せになるネックレス」の広告を見たことはないだろうか。

 

あの広告は、幸運になる石やネックレス・ブレスレッドなどのものを身に付けた後、自分の身にどのようなことが、起こるかだけを大きく掲載している。

 

過剰な表現ではあるが、札束がぎっしり入った浴槽で両側にかわいい女性がいる。

 

下には「僕がこのネックレスを手にしてから、モテモテで・・・」とか、札束を両手で握っている写真に「この石を身に付けてから、競馬で万馬券が面白いように当たるようになって・・・」と書いてある。

 

関心の商品は、広告の端に小さく載っているだけである。効果があるかないかは、別として売れているそうである。

 

あの商品を買う人は、商品に引かれているのではない。

 

写真に自分を当てはめ、商品を購入することによって、今後、自分の身に起こりえる可能性を購入している。

 

この手法は、何も特別なことではなく、実際の商売ではよく使われているものだ。購入後、得られるベネフィット・いい事を明確にイメージすることによって、人は購入を決意するのである。

 

例えば「あの洋服が欲しいな」と思ったとき、頭の中ではその洋服を着ている自分を想像している。

 

その段階では、イメージはおぼろげなもので、購入の意思決定はしていない。

 

店員に即されて、「サイズありますから試着してみますか?」と試着することによって、購入後の自分のイメージが明確になり、購入の意思決定をするのである。

 

では、インターネット上でどのように購入後のベネフィットを伝えたらよいか。

 

ひとつが、使用前、使用後の写真である。

 

雑誌の広告ではよく使われる技法だが、ホームページは作成者がマーケッティングの勉強をしていないことが多く、まだほとんど使われていない。

 

二つ目が、商品にまつわるエピソードを書くことである。

 

三つ目が、利用者からの体験談を載せる。

 

四つ目に、無料サンプル、無料体験などの方法もあるが、無料の試供送付時に購入につながるレターを入れるなどの施策を忘れてはならない。

 

初めて購入する人には、パソコンを売りたければ、業務が簡単になることをイメージさせ、車を売りたければドライブの楽しさ、行動範囲が広くなるとどんな世界が開けるのかをイメージさせ、最終最後に「そのいい事を実現するためにはこの商品です」と紹介し、購入しやすくする。