あらすじ


幼馴染みカップルのキズキ直子、二人の高校の同級生であるワタナベは仲良し3人組だった。


ところがキズキが17歳で自殺してしまう。


直子にとっても、ワタナベにとっても、キズキは唯一の存在だった。


当然二人は心にぽっかり穴があいてしまう。


それぞれ大学に進学し生活も慣れてきた頃、ワタナベと直子は偶然電車で再会。


それまで二人きりで話すほど距離が近い関係でもなかったが、直子は無言のままワタナベを連れてひたすら都内を歩く。


彼女は自分の思いを表す言葉を見つけるのが苦手なようだった。


そんな直子にワタナベは好意を持ち始める。


都内の散歩が毎週の習慣になった頃、直子は精神を病み、山奥で療養することに。


手紙を何通かやり取りし、お互いがお互いをもっと理解する必要があることを確認し合う。


直子がある程度落ち着いたところで、ワタナベはその療養所を訪れた。


そこで直子と同室のレイコさんに出会う。


二人と比べてだいぶお姉さんのレイコさんの気遣いで、二人切りで気持ちを語り合う時間も取ることができた。


ワタナベは明らかに直子に恋をしているが、直子の気持ちは、、、?


今は、直子がキズキと寝たときには全く濡れずに失敗に終わり、ワタナベとのときには何も問題なかったという事実があるだけだ。


フレーズ3選


 この施設の問題点は一度ここに入ると外に出るのが億劫になる、あるいは怖くなるということですね。p161


これは精神科デイケアに通っていてとても実感している。


社会には様々な性格の人がいるけれど、デイケアでは大人しい人ばかりで人間関係のゴタゴタは起きない。


自分のペースでやりたいことをやれるし。


デイケアの居心地がいいと思って上手くやれていると思っても、そこが平和なだけで、カオスな社会に適応できるわけではないのではないか。


今後はB型やA型の作業所に通うのが目標だが、上手くやっていけるのだろうか。


 あなたの人生の邪魔をしたくないの。誰の人生の邪魔もしたくないの。p265


自分に寄り添ってくれるワタナベに対して直子が伝えた言葉。


とても共感した。


私もうつ病が酷いときにはこういう思考になって、一生一人で生きていこうと思っていた。


他人の人生の責任は取れないと思った。


 ねえ、私たちの病気にとっていちばん大事なのはこの信頼感なのよ。p218


療養所で直子と同室のレイコさんがワタナベに言った言葉。


信頼関係がある人と一緒にいれば精神的な病気はよくなるということ。


自分が不安定な状態になってもこの人ならどうにか助けてくれて、なおしてくれるという信頼がある人と一緒に暮せば問題なく生活できる。


足手まといになんかならない。


だから直子もワタナベの人生を邪魔することになんかならない。


精神疾患があっても結局は相性次第で上手くやれるということだ。


私も今、精神科で働いていた人と付き合っていて、人生で一番しっくりきている。


精神疾患が重い人は、どうしても理解ある人ではないと対応が難しいんだろう。


今まではうつ病のことをあまりオープンにしてこなかったが、やはり自分の欠点を開示して、それでも大丈夫だと思ってくれた人と付き合うべきだったし、自分自身ももっと病気を受け入れて障害者雇用で働く方向で進めるべきだった。



感想


まず、ワタナベはすぐ友達を抱きすぎ。


感傷的な雰囲気になったらすぐ抱く。


感情と性欲がごっちゃになってる。


でもそれが大学生のリアルっぽくていい。


直子のことはちゃんと好きだし。


直子もワタナベのことは大切に思っているみたいだけど、すぐ付き合いましょうとはならないのはなぜだろう。


何だかんだ、自分の弱さや不完全さを理由にしているが、それ以上に失ったキズキのことや姉の自殺が頭にこびりついて人生を前に進めることに臆病になっているのではないか。


どういうつもりでワタナベと仲を深めようとしているのか分からないし、再会したときになぜ長い時間を過ごしたのか。


もしかしたら直子自身も分かっていないけど、心に従っただけなのだろうか。


ワタナベと直子の関係がどうなるのか、どうしてワタナベは直子を失ったのか。


下巻が楽しみだ。