はじめに

こんにちは。私は新人研修の講師として17年以上にわたり、多くの新入社員の皆さんと向き合ってきました。その中で、皆さんが仕事を効果的に進める上で非常に重要だと常々お伝えしていることの一つが、ノートの取り方、いわゆる「ノート術」です。

ノートの取り方については、多くの方が様々な悩みをお持ちではないでしょうか。私自身はマインドマップを長年教えてきましたので、ノート術の一つの解としてマインドマップを捉えていますが、今回はより日常的に、どなたでもすぐに使えるノートの取り方に焦点を当ててご紹介します。

ここでご紹介するノート術は、皆さんがこれから仕事で出会うであろう様々な情報、例えば上司からの指示やお客様との会話、研修内容などを効果的に記録し、後で活用するための基本となります。それは、考えていることや指示された内容を「見える化」し、それらを「整理して考える」ための大切な技術なのです。

よくある困りごと:指示が聞き取れない、メモが活かせない

まず、具体的な場面を想像してみてください。上司から指示を受ける時です。多くの場合、上司は忙しく、短い時間で多くの情報を新入社員の皆さんへ伝えようとします。「これとこれとこれ、やっておいてくれる?わかった?お願いね、じゃあよろしく!」といった具合です。これは、上司に悪気があるわけではなく、多忙な業務の中で効率的に指示を出そうとした結果であることがほとんどです。

指示を受けた新入社員の方は、「分かりました」と元気に返事をして席に戻ります。しかし、いざ自分のメモを見返してみると、「あれ、何を指示されたんだっけ?」「どれが一番重要だったかな?」と、内容や優先順位が分からなくなってしまうことがあります。

困った結果、先輩に「すみません、先ほどの指示なのですが、どうしたらいいでしょうか?」と聞きに行くことになります。しかし、もし最初のメモがきちんと取られていなければ、先輩も「どんな指示だったの?」と尋ねるしかなく、的確なアドバイスをすることが難しくなってしまいます。このような経験は、多くの方に心当たりがあるのではないでしょうか。あるいは、これから経験するかもしれません。

メモで押さえるべき核心と3つの重要技術

こうした事態を避けるために、メモを取る際に抑えなければいけない核心は、「いかに効率よく省略するか」、「いかに大事な情報を逃さないか」、そして「後で見返した時に内容をきちんと理解できるようにするか」という3点です。

これを実現するために意識すべきメモの技術が、冒頭でも触れた3つの要素です。それは、「スピード」、「省略(要約)の仕方」、そして「後でまとめ直すこと」です。素早く要点を捉え、分かりやすく記録し、後で確実に理解できるように整理する。このサイクルが重要になります。

日常で実践できるノート術:3つの簡単な工夫

では、具体的にどのようにメモを取れば良いのでしょうか。もちろん、私としてはマインドマップの活用を一番おすすめしたいところではありますが、今回はより単純で、誰でもすぐに試せるメモの取り方の工夫を3つご紹介します。

  1. 「単語」で捉える: まず、メモを取る際には「単語」を意識して使うことをおすすめします。文章で全てを書き留めようとするのではなく、話の中核となるキーワードや具体的な指示内容を示す単語を捉えて書き出すのです。

  2. 「記号やマーク」で意味付け: 次に、メモを取り終わった後、あるいは少し時間が経ってから、そのメモに対して自分なりの「記号やマーク」を追記することです。「ToDo(やるべきこと)」や「重要」といったマーク、あるいは疑問点を示す「?」マークなど、自分でルールを決めてマークを入れることで、情報の整理が進み、後で見返したときに内容を瞬時に把握しやすくなります。

  3. 「線でつなぐ」で関係性を見える化: さらに、書き留めた単語同士を「線でつなぐ」という工夫も有効です。関連性の強い単語や、話の流れを示す単語同士を線で結びつけることで、指示の構造や話の全体像が視覚的に捉えやすくなります。

メモを「育てる」:書き直しと整理で理解を深める

ここまでの工夫に加えて、もし時間に余裕がある場合には、ぜひ行っていただきたいのが「メモの書き直し」です。最初の指示を受ける場面では、おそらく小さなメモ帳などに急いで書き留めていることでしょう。その走り書きのメモを、後で少し大きめのノートに、改めて丁寧に書き直してみるのです。

この「書き直す」という作業は、単にメモを綺麗にするためだけではありません。書き直すプロセスを通じて、改めて指示の内容を反芻し、一つの指示内容について、「自分がどこまで理解できたのか」「何が分からなかったのか」「誰に何を確認しなければならないのか」といった点が、より明確に見えてきます。ただメモを取って終わりにするのではなく、このように整理し直すプロセスこそが、内容の理解を深め、次の行動を確実にするための鍵となります。

3ヶ月で築く、あなただけの「仕事のノウハウ集」

そして、このようにして整理されたノートは、皆さんにとって単なるメモ書き以上の価値を持ち始めます。それは、あなたにとって大切な**「仕事のノウハウ集」**の記念すべき1ページ目となるのです。

入社してから最初の3ヶ月間、ぜひこのノートの取り方を意識して続けてみてください。毎日とは言わずとも、重要な指示や学んだことについて、この方法でメモを取り、整理する習慣をつけるのです。そうすることで、日々の業務を通じて得た知識や手順、注意点などが、皆さん自身の言葉で整理された貴重な財産として蓄積されていきます。

自分だけの「仕事のノウハウ集」を育てていくこと。これは、今後のキャリアにおいて必ず役に立つ、非常に価値のある投資です。ぜひ、今日から実践してみてください。