なにかが蠢いている | 雨のあとのにおい

なにかが蠢いている

春が近づいてきて,花が咲き出している.

いろんな花がそこいらじゅうに.

今日は風が冷たかったけど,春の匂いがずいぶんと混じってきた.

なんとも言えない季節だ.


あちらこちらで虫たちが蠢きだしたように,

春は感傷的で,こころも落ち着かない.

ふとした瞬間にどうにもならない気持ちに支配されてしまう.

それがいつの間にか消えるとわかっていても,慣れることがない.



このところ,ひとりの時間を意識して持つようにしている.

じっくりと本を読んで考えに耽ったり,しっかりと音楽を聴いてみたり,

テレビを見たり,ごはんを作って食べたり.


そうしてみると,今までないがしろにしてきたいろんなことに気づかされる.

時間は思うほど早くは過ぎていかない.


静かなまなざしをこころのうちにたしかに持つことができたら,なんて思ってみたり.

夜は気が付いたらいつの間にか更けている.


このままでいいなんて思っていたとき,振り返ればそれは砂上の楼閣で夢を見ていただけだった.

砂は風に飛んで消えた.楼閣は簡単に崩れて夢だけが記憶の中でしぶとく生き永らえている.


夢の中で生きる幸せもあるのだと誰かが言う.

しかし夢は移り気で不確かだ.とても信頼が置けない.


春の夜,空に浮かぶ月は埃っぽい空気に霞んでいて,朧げな輪郭が静かに揺れている.

つまらない人生は過ごしたくない.