君の声
いつもより,ちょっと意識して声に耳を傾けてみる.
声は言葉の内容よりもなにかをはっきりと伝えるときがある.
同じ顔が2つないように,同じ声も2つない.
自分にとって耳障りの良い声,耳障りの悪い声.
その境界はあいまいでも,耳の感度に応じてそれははっきりと分けられる.
身の内から空中に響き漂う声,美しい響きの美しい言葉を求めるのは
この耳のせい.
ある人がいて,その人の声がしっかりとその人と結びついているとき,それは信頼できる.
はかない,ガラスのように透きとおった声,
こわれやすくて光に揺らいでいるその声.
声はその人のそのときの歩みに寄り添って変わっていく.
では求める声は変わっていくか.
この耳は際限なく要求する.
耳に入ったとたん,滑らかに溶けていくその柔らかな声を.
その声で静かな悲しみを歌ってほしい.