いつ実る林檎、狂気の如く甘く美しくあれ
「金比羅宮 書院の美 応挙・若冲・岸岱から田窪まで」という展覧会が
4月末から始まったばかり。
こんぴらさんに収められた障壁画などが運ばれて展示されるという画期的なもので、
どれもこれも素晴らしいものばかりだった。
そのうちのひとつ、椿書院襖絵を現在も制作中である、田窪恭治氏。
私は田窪氏がフランスの礼拝堂の再生に取り組んでいる様子を
10年ほど前にNHK「新日曜美術館」で見て以来、その名をずっと覚えていた。
時間とともに朽ちていた古い礼拝堂を、その美しさを引き出すかのように、
ガラスの瓦を葺き、壁面には幾重も重ねた絵の具から林檎を削りだしていく。
その真剣なまなざし、その行為と礼拝堂の影は、いつまでも自分のこころのどこかに残って
澱のようになっていた。その番組も、ビデオにとってまだ部屋のどこかに残っているはず。
そしてそんな中、思いがけず田窪氏にお会いすること叶った。
昨日は公開制作の前半の最終日であり、実際に見たいと思っていたものの、
その時間には間に合わず、制作の様子を見ることはできなかった。
しかし、観覧後にグッズ販売を見ていたら、関係者の方が、
書籍購入の方はサインを書いてもらえるということを言われ、即購入。
そのままの流れで田窪氏のおられる部屋まで連れて行ってくださり、
著書にサインしていただいた。
突発的な出来事に、大して話せなかったが、
最後に握手していただいた手がパステルで深緑色をしていたのを覚えている。
いまだ制作中の椿書院襖絵、その圧倒的な力強さと美しい様子を
今度はこんぴらさんに見に行ってみたい。
そして、フランスにある美しい林檎の礼拝堂にも。
