風が吹いた日、うわの空
夕暮れの高圧電線にカラスの大群。
鉄塔に吹きつける風が辺りに轟音を響かせる。
いつの間にこんなに寒くなったのか、
木々もずいぶんと葉を落としている。
人生のうちにたった一度しか経験しないこと、
たった一度必ず経験しなければいけないこと。
経験しない人も時にはいるのかもしれない。
それは準備して迎えるときもあれば、
青天の霹靂のようにふいに訪れることもある。
ふいにそれがやってきたとき、それはどういう気持ちだろう。
にわかに信じられない、現実味がない、まだそこにあるような、
そんなところなのか。
でもいずれ、とてもとても苦しい時期が訪れるのだろう。
なんとか踏ん張って歩めるだろうか。
少し考える。
たとえふいでないにしても、それは来る。
その時、ぼくは何ができるだろう。
風が強く吹いた日、
同情も共感もできないぼくは、
そんなことを考えた。
そして自分の中にある驕りがまじまじと見えてきて
少し疲れてしまった。