物悲しいのは | 雨のあとのにおい

物悲しいのは

空気がひんやりとして、秋の風が吹いてくる。

空は高く、木々の葉も少しずつ色が変わっている。

夕方の光が柔らかくなって、またたくまに夜になる。

ぼくは、なんとなく何もする気が起きず、ソファに横になって

本をぱらぱらとめくっている。

体の横にぴったりとくっついて眠っているユキの体があたたかい。


ぼくは1ヶ月前北海道に帰って、秋をすこし先取りしてきたみたいだ。

しかも、とても強烈に。

まだこっちが暑い時期だったから、そのコントラストが大きかったのかもしれない。

それとも生まれ育った場所の秋の匂いは、つよく身体にしみこんでいるのだろうか。

なつかしさと同時に、色んな感情が溢れてきたのを覚えている。

久しぶりの感覚が心地よく、秋の物悲しさにどっぷりと浸かった。


でも、こっちに戻ってきたら、まだまだ秋は遠くて、こころと身体が追いつけなかった。

実際、2日間くらい食欲がなくて、軽い夏バテをしてしまった。

でも、このところ空気も冷えて、金木犀の匂いも辺りを漂いはじめ、秋が来ていることを知る。

でもその足取りは遅く、すでに秋を過ごしてきたこころと身体はくすぐったいような気分だ。

今年の秋を純粋に楽しめるだろうか。すこし心配になる。

北に行けないのなら、高さを目指して山にでも登ろうか。

すこし本気で考えてみる。