僕のシャツは君の涙と鼻水で色が変わってしまった。
久しぶりに豚キムチチャーハンを作った。
僕の作るそれはいたってシンプルだ。
ごま油でネギを炒め、続いて豚肉、キムチを入れる。
頃合を見てご飯を入れて、パリッと炒めたらそれで完成だ。
コツは、豚肉もキムチもけちらずにたくさん入れることと
美味しいキムチを使うこと、だ。
この作り方は、学生時代に一人暮らしをしていた頃から
ずっと変わらない。
そしてこの料理にはひとつの思い出がある。
学生時代、吹く風が少しずつ冷たくなってきた秋ごろ、
僕らは親しい人とお別れをしなければならなかった。
僕は、先輩と一緒に見送りに行くことに決め、
いろいろと荷物を準備していた。
出発の時間が迫っていたが、僕はとてもお腹がすいていて、
時間がないにもかかわらず、お弁当を作ることにした。
冷蔵庫に、少しの豚肉と、ネギ、キムチを見つけ、
瞬時に、豚キムチチャーハンを作ろうと思った。
弁当箱にも詰めやすそうだという気もした。
作っている間、先輩から電話がかかる。
もうちょっと待ってくださいとお願いして、
急いで仕上げて弁当箱に詰める。
いろいろな荷物とアツアツの弁当箱を持って、
僕はふたりの先輩と、水色の軽自動車で出発した。
僕はすぐにでも食べたかったが、ひとりでモグモグしてるのも悪いなと思って、
そのままにしておいた。
しかし、すぐに、何か匂わないか?ということになり、
豚キムチチャーハンの存在が明らかになった。
狭い車内に豚キムチチャーハンの匂いが充満し、
先輩にはおまえ何考えてんだよとさんざん怒られる。
僕は、においの元を胃袋にしまえばいいんでしょと思って、
後部座席でひとりバクついていた。
少し冷めた、豚キムチチャーハン。
キムチの味が豚肉にもご飯にもしっかり滲みていた。
少し焦げたキムチの匂い。
やや酸味のあるキムチの味。
空の胃袋にとてもおいしかった。
まったくおめーはよー、とか言われながらも、
僕はバクバク食べた。
すごくおいしいのにな。
でもちょっと、選択を間違えたかな。なんて思いながら、
ガヤガヤと僕らの旅が始まっていた。
脆く、崩れそうだった僕の気持ちを、
豚キムチチャーハンが、そっと暖めてくれた。
静かな車内をそっとあかるくしてくれた。ちょっと強烈な匂い付きだけど。
僕はあの日の豚キムチチャーハンを決して忘れることはないだろう。
そして、これからも、豚キムチチャーハンを作るたびに、
僕は、あの日のことを、あの頃のことを思い出し続ける。