ワンダーフォーゲル
秋の初め、夜の空に渡り鳥を見た。
隊列を組んで南に向かっていた。
白鳥だった。
以前にもこんな光景を見たことがある。
大学卒業を控えた3月の寒い薄墨色の夜の空に何度も。
白鳥は北を目指して飛んでいた。
4年間暮らした土地や、
親しい友人との惜別の時が近いことを日に日に感じていた頃で、
卒業後の進路もはっきり決まっていない不安もあってか、
北を目指す白鳥の姿にいろいろなものを重ねて見ていた。
そして現在の土地に来て1年が経つ。
今見る渡り鳥は、その時とはまた違った感慨を抱かせる。
それは自分の経てきたここ何年かの道のりをありありと実感させる。
しかし、変わらぬ感慨もある。
自らが過ごすのに適当な場所を目指して旅を続ける、
彼ら渡り鳥に対するどうしようもない憧れだ。
僕がいずれこの土地を離れるときが来るだろう。
その時自分のあるべき場所にあるべき姿で辿りついていることができるだろうか。
散歩音楽 * くるり 「ワンダーフォーゲル」