秋のにおい
なかなか風邪が治らない。
声は元に戻ったけど、咳がしぶとく残っている。
咳は嫌だけど、なぜか低音域しか出なくなった声は、
結構渋くて気に入っていた。
ひとには、「今頃また声変わりしちゃったのー?」なんて、
からかわれていたけれど。
面白いことに、声が変わるとなんだか性格も違ってしまうように感じる。
声が低くなった僕は、なんとなく安定感を感じて、余裕があった。
結構楽しかったけど、すぐに戻ってしまったな。
まあ、そんなこんなで、くすぶった毎日を過ごしている間、
秋がやってきた。
それは、はっきりと挨拶するかのように、やってきた。
先週のある朝、外に一歩出たとき、
「秋がきたんだな。」と思った。
それはにおいでわかる。
夏のむっとした空気が去り、少しひんやりして肌触りのよい空気が取って代わっていた。
そして、それはほのかに甘い。
空も高く、濃くなっている。
そして、僕はなんだか切なくなった。
毎年、秋の訪れに際して感じるこの気持ちはなんなのだろう。
夏との別れが悲しいのだろうか。
よくわからないけれど、なんとなく物悲しいこの季節を僕はとても愛していて、
どこか別の場所へふらっと行ってみたくなる。