少しずつ | 雨のあとのにおい

少しずつ

1ヶ月ほど前、ユキがうちに来た頃の写真を見てみた。

ユキはずいぶん大きくなっていた。

あんなに小さかったなんて。

毎日見ていると、なんとなくしかわからなかったが、

見比べてみるとよくわかる。


そして、犬と暮らし始める嬉しさと、

果たして大丈夫だろうかという不安、

戸惑いの日々も思い出した。

今でも、まだまだ自分が犬を飼っていることが

信じられないような気もするが、

家に帰ったときに、

それはもの凄い勢いでじゃれ付いてくるユキを見ると、

少しずつだけど、愛しいという感情が沸いてくるのを感じる。

こいつのために、何がしてやれるだろう。そんなことも思う。


職場の人の飼っている犬が、何の前触れもなく、突然難病にかかってしまったという。

状態が悪ければ死んでしまうかもしれないと、獣医さんは話したそう。

とにかく、すぐに入院になって、この先どうなるかはわからないらしい。

その人はとても落ち込んでいた。

気丈に話してはいたけれど。

それを聞いていたある人は、お金がかかるから大変だねって言った。

でも、その人はお金なんか関係ないって言った。

そういう問題じゃないって。


ぼくは、町田康の「猫にかまけて」のヘッケやココアを思い出したり、

ユキが病気になって死んでしまうことを想像して、なんだかとても悲しくなった。

そして、その人の犬がどうにか元気になればいいなと思うのと、

家に帰ってユキを抱きしめてやりたいと思った。


仕事が終わって家に帰ったぼくを、ユキはいつものように大歓迎で出迎え、

ぼくの顔を、生あたたかい舌でペロペロ舐めた。

「どうしてそんな顔してるの。おばかさんだね。」って、

そう言われたような気がした。