山梨にて | 雨のあとのにおい

山梨にて

迂闊にも、前回書き漏らしてしまったパン屋さんがある。

山梨へ実習に行っていた時、足しげく通った店だ。

joichi というパン屋さんで、八ヶ岳の麓、甲斐小泉駅のすぐ近く、

針葉樹の林に囲まれた静かな場所にその店はある。

住んでいたところから近かったので、散歩がてらよく行った。

その道のりでは、天気がよいと富士山も見ることができ、

日高山脈を見て育った僕はいつも、感激した。


僕はjoichiで紫花豆のパンを毎回買って食べた。

時には売れてしまっていることもあり、後のほうでは予約してまで食べた。

これも前回書き忘れたけど、ぼくのほんとうのパン原体験は豆パンだ。

イズヤの4個入りのものや、ますやの豆パン。

十勝は小豆で知られているとおり、豆の名産地で、金時豆もよくとれる。

その甘納豆がパンのなかに練りこまれていて、僕はそれをとても好んで食べた。

そして、joichiの紫花豆のパンは、僕がかつて食べた豆パンのなかで、最も愛すべきものだ。

胴長の大きすぎないサイズで、やさしい甘さに煮た紫花豆がリズムよく並んでいる。

パンの生地もほどよいしっとり感と、素材の良さが感じられ、すべてのバランスがパーフェクトなのだ。

他にも、ブリオッシュなど、美味しいパンもたくさんあったが、この豆パンは、

山梨に滞在している間の、こころの糧になっていた。

身体だけじゃなく、僕はパンにこころも満たしてもらっているようだ。