俯瞰風景 -2ページ目

俯瞰風景

   好きな本の素敵なことばを載せるだけの場所です。

顔をあげてみた。月が出ている。たじろぐほどに大きく、ぞくりとするような妖しい光を放っている。満月のようだ。
背中に何か寒いものが走った。あ、嫌だ、と思ったのも束の間。次の瞬間には、体中を駆け巡った。足を止める。叫び声を上げてしまいそうになる。嫌だ、怖いと思うのに、満月から目が放せない。意識が遠退くような感覚に襲われる。あの月に、あの光に、吸い込まれてしまいそうだ。嫌だ、嫌だ。怖い。
だから、植物が人間を死なせることはある。
けれど、そこに殺意があると見るのは、いささか被害妄想が過ぎるってもんだ。人類は勝手に森林を破壊して、地球を生きにくい場所にしちまっただけで、必ずしも大自然から報復的制裁を受けているわけじゃあないんだ。
そういうのを、自業自得という。あるいは自殺という。
アメリカ旅行に行った日本人が、現地で提供されるカリフォルニアロールを食べて、この料理はお寿司じゃないと得意気に語るのは、いまやグルメ番組の定番の風景だが、そう語る日本人に限って、案外、インド人がカレーパンをどう考えているのかについて、思いを馳せることはない。
人の振り見て我が振り直せ、自分がされて嫌なことを人にするな…とは言うにしても、人と自分を同じように見ることはなかなかどうして難しいし、自分がされて嫌なことは、むしろ人にしたいことだったりもする。