温音所~onesyo~ -2ページ目

四の宝箱の生涯。

大切な場所がありました。









2012年9月1日。
1つの命を産み落としました。
望まれた命ではありません。

その命は誕生日に国に余命を告げられ産まれてきました。
五体不満足で産まれました。

余命は告げられています。
どんな手術をしても助かる事はありません。








シンデイクキミニハ、クスリシカアゲラレナインダ。
デモ、キミハ、シンダラ、マタ、ウマレカワレルンダヨ。






産み落とした命を、好きになって欲しかった。
産まれ持った障害を、個性だと言って欲しかった。
どうしたら、あのコは愛してもらえますか?
どうしたら、あのコが生きやすい世界になりますか?






そう思いながらも
キミの個性を隠す事ばかり考えて、
キミの治療費に頭を悩ませる日々。







キミハガイケンデ、ヒトヲスキニナル?





2歳の誕生日を迎える頃
気付けば、兄弟ができていました。
キミがケガをしたら真っ先に助けてくてる兄弟。
キミが汚れたら飛んできて綺麗にしてくれる兄弟。
キミが褒められたらキミより喜んでくれる兄弟。
そんな20人ほどの兄弟と一緒に育ちました。




気付けば、沢山のトモダチが出来ていました。
トモダチなど知らずに死んでいくんだと思ったのに。
トモダチはいつも遊びに来てくれて
歌を歌ってキミを楽しませてくれました。





兄弟とトモダチが家族のように集まれる場所。
それがキミのアル場所でした。
キミの元で兄弟や友達は
泣いたり笑ったりして歩みました。
キミの障害なんてもう
気にもしていなかったんだよ。














2歳半を迎えたある日、
天からお手紙が届きました。
「キミノ、ブンシンヲ、ツクリマセンカ?」
キミよりも2回りくらい小さな分身です。
ちょうどキミの双子のコと同じサイズ。
キミと違って、
キミの分身は望まれた命でした。

「ブンシンヲ、イマ、ツクッタラ、
 キミハ、ウマレカワラナクテモイイ。」
障害もありません。
有能なコなので育てるのにお金もかからない。
沢山の人がキミの分身が生まれる事を望んでいました。









「キミノブンシンヲ、ツクリタイッテ。
 キョウダイモ、イッショニイレル。
 デモ、チイサイカラ、キミノトモダチハ、
 ソコニハ、コレナインダ。」

「ソシテ、キミモ、ウマレカワレナイ。」





私は天を無視しました。
3人の子供は守る自信がありませんでした。
2人で精一杯。
このコをちゃんと守って、ちゃんと殺してあげたい。
そして、このコをこのコとして産まれ変わらせて
ずっと2人を守ってあげたい。



それが
キミとキミの兄弟とキミの友達、
そしてキミの双子、
その全部を守ってあげられる私の唯一の方法。










天を無視した天罰が下りました。





ある日医者に呼ばれました。
余命が縮まるかもしれないと。

ある日医者に呼ばれました。
余命が伸びるかもしれないと。

ある日医者に呼ばれました。
やはり余命が縮まるかもしれないと。

何度も何度も医者に呼ばれ
何度も何度も覚悟を決めさせられました。

最後に医者に呼ばれた日。
「ヨメイハ、アナタガ、ハンダンシテクダサイ。
 寿命を全うしたらコノ日まで生きられますが、
 最後は同じ姿で居られるとは限りません。」

先に目が見えなくなります。
そして耳が聞こえなくなります。
それでも生きられますが、生かしますか?殺しますか?








ダレニモイエナイ、キメルノハワタシ








キミと少しでも長く一緒に居たいけれど。
キレイなのキミのまま
たくさんのトモダチに囲まれて殺してあげたかった。
兄弟はね、きっとずっとキミがスキだけど、
ドモダチはね、そうじゃないかもしれないから。






キミヲコロスヒヲ、キメタノハ、ワタシ。






早く決めてあげないと
キミの兄弟や友達が生きていけなくなってしまうの。
私にはキミと同じくらいキミの兄弟と友達が大切なの。
ゴメンネ。















3歳の誕生日を迎えるころ、気付けたコト。
コノコハ、ホントウニ、アイサレテイル。
コノコの生まれ変わりへのカウントダウンが始まりました。
未来へのカウントダウン。





愛されて死んで行ける事を嬉しく思っていた
余命残り3ヶ月。
天からのお手紙。
「このコはやはり産まれ変われません。
 次の身体には今より大きな障害があります。
 産まれ変わっても生きられるかどうか分かりません。」







ウマレカワレナイ?キョウダイハ?トモダチハ?







産まれ変わる事だけを信じて必死に生きてきた3年間。
キミをなくしてしまわぬように
産まれ変わる身体を必死に探す日々。



キミノ、ウマレカワルカラダガ、ナクナッタヨ



誰にも言えない。






兄弟やトモダチは期待して聞いてくれます。
「ツギノカラダハ?」

「キマッテナイケド、ダイジョウブダヨ」
そうやって、会話を終わらせる。













余命をあと2ヶ月とした時、
死んでいくこのコと離れられなくなりました。
死んでいくこのコが羨ましくなりました。






ワタシガシヌヒ、ワタシハ、コンナニ、アイサレテルカナ?






そして必死に次の身体を探している横で
ひたすら愛されてばかりいるキミが憎かったよ。












余命一カ月。
キミが居なくなる実感が全くなくなりました。
でもキミは3年間も一緒にすごしたお隣さんが先に寿命を全うしていき、
とても寂しそうでした。




身体の候補が出てきました。
天からの手紙にはこう書かれていました。

「この身体はキミが望むような身体ではありません。
 キミの望む身体と 
 性別が違います。年齢が違います。国籍が違います。
 それでも産まれ変わりますか?
 産まれ変わらないならば、
 キミは2~3年後に別の命としてまた誕生できるでしょう。」










余命3週間。
悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて。
キミとキミの兄弟と友達が愛しくて愛しくて愛しくて。







キミに最後の挨拶をする沢山のトモダチ達に、
もう会えないかもしれない。






ホントウハ、ツギノカラダガ、ナインダモノ。






ツギノカラダガ、2~3ネンゴマデ、ミツカラナイノナラ、
ワタシニハ、ナニモ、マモレナイ。
ココニイルイミガナイ。
ワタシイナクナルネ。








キミを産むとき
ただ1人だけ一緒に望んでくれた先生。
一番キミと一緒にいた友達。

心配も同情もされたくないから、
誰にも言わないつもりだった。

翌年の話。
イナイかもしれない時期の話。

言わない訳にはいかなくなって告げた。












2人共、同じように、笑い飛ばしたんだ。












余命2週間。
キミが産まれ変わる事は、
1本の10分程度の電話で決まった。


目の前で行われているキミがなくなる事を惜しむ会。
意外にも頭はスッキリしていた。


性別も年齢も国籍も違っても
キミの最後にキミのツギを見せてあげる事。
それが
どんだけ悩んでも考えても最良だった。










サイリョウ?
ホントウニ?
トモダチニ、ウソツキッテ
イワレタクナイ、ダケデショ?














余命まで数日。
キミという名の宝箱は
世界中の何よりも輝く宝箱だった。
沢山のトモダチという宝石がエンドロールを鳴らしてくれた。
monoクロくんというキミの名は
数日間だけ七色になり、
今はセピアになった。







キミに
「ありがとうございました」って言って
キミの蓋を閉じ
キミの生涯を終わらせた。









ワタシハ、キミニ、チャント、カンシャヲシタコト、
イママデ、アッタカイ?










短い短い生涯で
沢山の事を私に教えてくれた場所。
沢山の大切なモノをくれた場所。












キミが産まれ変わる時、
いろんな事が変わっていると思う。


あの日のあのコのあの言葉が
全部真実になるなんて思っちゃいない。
そのまま、なんて、
世界で一番難しい事。
そんなキセキ、あるんだろうか。


でも
あの日あのコがキミの場所で言った言葉は
あの時のあのコにとって嘘がない言葉だったという事。
それは、ちゃんと分かってる。










そのまま。
世界で一番難しい出来事だけど。
キミが産まれ変わる日には、
キミの兄弟たちとそのままの笑顔でキミを待っているね。
それだけは約束するよ。
兄弟達が集う場所は必ず用意する。

トモダチがまた、会いに来てくれたらいいね。
また、愛してもらえたらいいね。

そっからは、その時考える。
嘘つきにはならなかった、私が、
次になれるものって、あるのかな。


その時になってみなきゃ、わかんない。


とにかく、ちょっとの間、バイバイね。








ありがとう。
四谷LiveHouse mono。














2016年1月17日 
高田馬場Live Cafe mono
四谷LiveHouse mono(移転閉店)
池袋LiveHouse mono(2016初夏OPEN)
店長 湊 恵美