獣医師の動物病院裏ブログ。犬猫さんがモノじゃなくなることを夢みて。

獣医師の動物病院裏ブログ。犬猫さんがモノじゃなくなることを夢みて。

こんにちは。
36歳、2014年卒、開業8年目の獣医です。
日々の徒然を無責任に綴ります。
あくまでも一つの意見としてお受け取りください。

 

今日は箸休め記事にしましょうね。

 

6月21日日曜日 休診 です。

 

7月は望月が不在にすることが多いです。

 

今シーズンの清水エスパルスは世の中の摂理を色々と反映してた気がします。

 

実力と人気は違う。

(J1では中堅から下位クラブだけどJ屈指の人気があるクラブ)

 

個のスキルが活かせるか活かせないかは環境次第。

(高橋が0点。マテウスがブスケツみたいに持つメリットとロストするデメリットが釣り合わない。etc)

 

地獄の沙汰も金次第。

(ここは上手く使えてなかっただけの部分もあるのでなんとも言えませんが、浦和神戸町田みたいな補強ができたらまた違うかと)

 

この辺りは、エスパルスを見ていてしみじみ思いました。

 

これはもちろん動物病院業にもそのまま当てはまりますね。

 

ただし、一つ言えるのは、動物病院にはサッカーのように第三者から透明性をもって評価できる絶対的な指標がないので

(サッカーなら順位、得点をはじめとしたスタッツ、入場者数、グッズ売り上げまで全部第三者が評価できる)

 

人気があるところを選択するのが無難な面は否めないです。

 

唐突ですが、僕はエスパルスの試合をみるのが至上の楽しみにもなってます。

 

6月の19日には新潟で大好きな銀杏BOYZのライブに行きます。

 

でもシーズン中は、そういう楽しみが毎週やってくるというチート状態です。

 

なんならW杯なんかも昔ほど楽しみじゃないです。

 

寝ずにみるなんてとんでもない。

 

日本代表の試合すらDAZNのハイライトでみたらいいかなと思ってるくらいです。

 

代表と比べると弱っちいエスパルスの試合の方が全然面白いと思うようになりました。

 

不思議です。

 

こういう深層心理を考察して、的確な言葉選びで表現したいんですが難しいですね。

 

例えば、弱いから好きみたいな一般論に当てはめた瞬間に

 

じゃあマリノスに3点決められてめちゃくちゃムカつくのはなぜかという

 

論破できない反証を抱えてしまうので

 

自己矛盾の権化なわけです。

 

でも一つ言えるのは、共感ですね。

 

自分のことのように思えるわけです。

 

僕は自分の運営する動物病院にはこういう感覚を可能な限り意図的に表現できるようにしたいなと考えてるわけです。

 

「循環器診療が得意です」「整形外科が得意です」という自己表現には全然惹かれません。

 

何度も言うように「半人前でもよかったら、きてください。雨を止ますことはできないですが、傘持ちくらいならできますよ。」

 

というスタンスを推していきたいわけです。

 

はじめに言っときますが、うちは出来ないことだらけですよ。

 

僕に至っては医療行為自体が好きじゃないです。

 

今まで幾度となく、このような表現をしてきていますが

 

これは多分世の中の「〜が得意です」系の獣医さんから言わせれば、愚の骨頂でしょう。

 

少し話を逸らします。

 

もう元気なので書きますが、余命10日ほど、手術しないと死ぬ。

 

でもうちは手術ができないと言うワンちゃんを1ヶ月ほど前に手術しました。

 

飛び込みで来られましたが、切実に依頼されたので、お受けしました。

 

数週間食欲不振、誤食を疑い、その2日前に開腹し、腸自体が腫瘍化して腸閉塞を起こしていることを発見。

 

これ以上はご自身の実力では無理とされて、組織生検をして閉腹。

 

僕はね、ここまでは何もおかしいことされてないと思うわけです。

 

僕は外科が好きなので、これは自信を持って言えるのですが

 

外科医に必要な素質の一つは無理をしすぎない判断力です。

 

僕がこの先生に対してよくないなと思うことは

 

無理なら無理で最後まで全力で並走しなかったことです。

 

普通に考えたら、飼い主さんは絶望すると思いますよ。

 

無理なら無理で、何とかするという気概について僕は言ってるわけです。

 

少し掘り下げますが、

 

僕は外科は好きですが、得意とはアピールしないですね。

 

むしろ不器用だと本当のことを言います。

 

「得意」ほど抽象度の高い言葉はなく、相対性を伴ってはじめて輪郭がわかる言葉だと思います。

 

1次元で得意だと言うのは大概嘘になります。

 

医療の世界では相対性を伴う医学的な表現は違法になる場合が多いですので、

 

得意という言葉は意味を為さない場合が多いと考えてます。

 

灘中でビリの子とそこら辺の公立中学で1番の子だと

 

多分灘でビリの子の方が圧倒的に賢いわけですが

 

前提を抜いて表現してしまうので、第三者には本当の実力は理解できません。

 

少し話を飛躍させて、認定医という制度もそうだと思います。

 

認定医というのは、その人が臨床的にすごいことを保証する制度ではありません。

 

臨床に対する態度を評価するためにあるものだと思います。

 

持ってない人より持ってる人の方が、1次元で捉えると優秀のはずです。

 

しかしながら、実臨床で全く同じ条件に相対した時に

 

飼い主さんにとってひいては患者さんにとっていいか悪いかは全く別の話になると言及してるわけです。

 

うちの院長がすごいのは、多分その理解が無意識にあるところです。

 

大切なのは飼い主さん患者さんにとっての課題を解決することで

 

病気を治すということ自体はその通過点でしかないのです。

 

そして、通過点にあるんだからそこは可能な限り伸ばしていこうという理解です。

 

稼げている経営者というのは課題解決能力に優れた方が多いと感じます。

 

偏差値の高いはずの医者や獣医が(そんな高くないという人もいるだろうけど)

 

稼げない理由はそういう点にあるのだと思ってます。

 

いやいや、医療は慈愛の精神のみでやって欲しいという老害は相手にしません。

 

良き医療の源泉の大半は利益にあります。

 

エスパルス見てたらわかるでしょう?

 

もしFWがケインで

 

MFがパブロビッチやルイスデイアスやむしあらやキミッヒなら

 

DFがスタニシッチや伊藤でGKがノイアーだったら。

 

もしかしたらJ1優勝できるかもしれませんもんね。

 

動物医療でのというか、医療での人的資源の差や

 

医療設備の差はサッカー以上に結果に直結しますよお。

 

何だか大風呂敷を広げすぎましたね。

 

思考を展開していくと、哲学を学びたいななんて思い始めて

 

最近はそういう本を積読乱読しています。

 

そうすると余計訳わからなくなってきて辛いですね。

 

では。

 

 

 

この連載ではここまででーす。

 

なぜ食事療法が重要なのか。

なぜ加水分解食や新奇タンパク食が効くのか。

なぜ低脂肪食がPLEやリンパ管拡張症で重要なのか。について書いてきたつもりです。

 

2026年のACVIMコンセンサスを読んで改めて感じたのは、

 

慢性炎症性腸症(CIE)の治療は薬もそうですが、栄養学の話になりつつありますね。

 

そして最終回では、その栄養学の中でも見落とされやすい話をしたいと思います。

 

コバラミン(ビタミンB12)、ビタミンDそして腸内細菌叢についてです。

 

血液検査で測定する項目については吟味されないことが多いです。

 

「何を」測定するかが大事なんですが、大抵の患者さんは血液検査は最近やりましたとおっしゃいます。

 

逆に何を測定してるかで、その先生の力量が大体わかってしまいます。

 

マグネシウムやコバラミン、ビタミンDなんかも気にする必要があるということです。

 

リパーゼアミラーゼ測るのに電解質みてないみたいな老害は駆逐すべきですね。

 

もう今回話したCIEなんて概念自体を知らないわけなので

 

知らなきゃ診断できるわけがないんです。

 

また話がそれました。

 

コバラミンについて話しましょう。

 

ビタミンB12のことですね。

 

小腸の回腸で吸収されます。

 

つまり回腸に慢性炎症が起きると吸収できなくなるわけです。

 

だから慢性腸症では低コバラミン血症が非常に多いです。

 

13〜61%の慢性腸症の子で低コバラミンがあるということです。

 

さらに重要なのは、低コバラミン血症が予後不良因子として報告されていることです。

 

つまり、病気の重症度を反映している可能性があるわけです。

 

HeilmannらやPérez-Merinoらの研究でも、低コバラミン血症と病態の関連が報告されています。

 

ACVIMコンセンサスでは経口補充量まで記載してくれてます。

 

体重10kg未満、250μg/日::体重10〜45kg、1000μg/日::体重45kg以上、2000μg/日

 

さらにコバラミンは皮下注射でも補充可能であるとしてます。

 

ありがたいですね。

 

ビタミンDも注目され始めてます。

 

免疫、炎症、腸管機能、生存率などなど色々関係してるみたいです。

 

ビタミンD欠乏もCIEの予後不良因子として紹介されています。

 

特にPLE症例では深刻で、最大35%の症例でビタミンD欠乏が認められています

 

さらにTitmarshら、Allenspachら、Gowらの研究では、

 

低ビタミンDと予後不良との関連が報告されています。

 

腸内細菌叢という新しい臓器については結構苦のブログでも書いてますね。

 

ACVIMコンセンサスでも、ディスバイオーシス(腸内細菌叢異常)が病態形成の中心の一つとして扱われています。

 

Guardら、Blakeら、Wangら、Minamotoらの研究では、

 

慢性腸症の犬で細菌叢構成、胆汁酸代謝、代謝産物が大きく変化することが示されています。

 

つまり炎症は結果であって、原因の一部は腸内環境にあるでしょうねという時代になってきたということです。

 

乳酸菌は効くのでしょうかね?

 

今回のACVIMコンセンサスは慎重に回答してます。

 

プロバイオティクス。

プレバイオティクス。

シンバイオティクス。

 

いずれにも言及している。

 

しかし位置付けは明確で、主役ではないということです。

 

あくまで補助療法である。

 

つまり、フードを変えずに乳酸菌だけ飲むという話ではないわけです。

 

まず食事で、その上で腸内環境改善を考えるということです。

 

家でビオフェルミン飲ませてますとか、そういう話はかったるいのでやめてください。

 

せめて犬用猫用のやつにしてください。

 

僕らはこういう報告されてるものしか、効くとか効かない可能性すら語ることが許されてません。

 

今回のACVIMコンセンサスを一言で表すなら、「慢性炎症性腸症は栄養学の病気である」という感じになるのでしょうか。

 

もちろん重症例では免疫抑制剤も必要になりますし

 

診断のために、内視鏡も生検も必要になることもあります。

 

しかしその土台にあるのは食事であり、栄養だと明確にされてます。

 

少しばかり診察の仕方も変化するのかもしれません。

 

では。

 

 

 

 

 

 

 

 

慢性下痢の子でしんどいなあと思う症例は何例もあります。

 

薬を使っても反応が悪いですし、一度は改善しても減量すると再発します。

 

そもそも食欲不振を伴う子でごはんの変更自体が難しいこともありますしね。

 

アルブミンが下がるわ、体重が減るわ、腹水が貯まるわでね。

 

こうした症例を見ると、僕らはつい薬を追加したり用量をあげたりしたくなりますね。

 

プレドニゾロンを増量したり、シクロスポリンやクロラムブシルを使うなりね。

 

もちろん必要な場面はありますが。

 

まあ今回はご飯の話なので、こうもってきましょう。

 

「その子、本当に薬が足りないのだろうか?」という視点だ。

 

もしかすると足りないのは薬ではなく、フードの変更なのかもしれないですね。

 

慢性腸症の中には、蛋白漏出性腸症(PLE:Protein-Losing Enteropathy)という病態が存在します。

 

文字通り、腸からタンパク質が漏れてしまう病気ですね。

 

血液中のアルブミンが下がり、浮腫が起こります。

 

腹水が貯まったり、体重が落ちてしまいます。

 

重症化すると血栓症のリスクまで上がるわけです。

 

そしてPLEの背景疾患として非常に重要なのが、リンパ管拡張症ってやつです。

 

正常な腸には無数のリンパ管が存在します。

 

食事中の脂肪は小腸で吸収され、リンパ管を通って全身へ運ばれます。

 

ところがリンパ管拡張症では、このリンパ管が異常に拡張してしまうわけです。

 

ホースで例えるなら、排水能力を超えた水が流れ続けている状態です。

 

リンパ管内圧は上昇し、最終的には破綻します。

 

そしてリンパ液が腸管内へ漏れ出すわけですね。

 

問題はリンパ液の中身です。

 

リンパ液には、アルブミン、リンパ球、脂溶性ビタミン、免疫関連物質などが大量に含まれています。

 

全部必要なものですね。

 

ここで重要になるのが脂肪です。

 

脂肪を摂取するとリンパ管の仕事量は増えるんですが、それはご自身で調べてください。

 

脂肪はリンパ管を使って運ばれるからだと簡単に理解してくだされば大丈夫です。

 

つまりリンパ管拡張症の犬に高脂肪食を与えることは、

 

今日みたいな台風の日に排水管にさらに大量の水を流し込むようなものです。

 

だから低脂肪食が重要になるわけです。

 

Rudinskyらは下記のように報告しました。

 

プレドニゾロンに反応しない、

 

あるいは減量すると再発するリンパ管拡張症の犬に対して低脂肪食を導入したところ、24頭中19頭(79%)で有効性が認められた

 

「PLEだから免疫抑制」ではなく、「PLEだからまず食事を見直す」という考え方は大事です。

 

そもそもね、典型的なセカオピなんですよ。

 

下痢が続いている。アルブミンが低い。超音波で腸粘膜が変。

 

炎症性腸疾患だ!!と診断されても、全然症状が良くならないのできました。

 

もちろん炎症はあることは前提です。

 

脂肪摂取量つまりはフードの脂質は何%だろう。

 

実はそちらの方が重要なことがあるわけですね。

 

加水分解食や低脂肪食の話ばかりですが、実は高消化性食も無視できない存在です。

 

高消化性食がCIEの症状改善に役立つ研究を最近なんかで見ました。

 

高消化性食の考え方はシンプルです。

 

腸に負担をかけない。できるだけ消化吸収しやすくする。

 

健康な腸なら問題なく消化できるものでも、病気の腸には負担になります。

 

だから高消化性食には意味があります。

 

ただし、加水分解食と比較すると寛解維持率はやや低い可能性も指摘されています。

 

ちなみに手作り食はどうなんでしょうね。

 

Vecchiatoらの研究では、ココナッツオイルを添加した手作り食を与えた18頭のCIE犬が全頭改善した

 

と報告されています。

 

もちろん症例数は少ないですし、エビデンスレベルとしては限定的です。

 

でも面白いすよね。

 

食事療法の可能性を考える上では非常に興味深い報告だと思いますし、

 

僕は「その人のこだわり」を無視した医療ってのが好きじゃないです。

 

なんつーか楽しみがないくらいならさっさと死んだ方がいいと思ってるので。

 

これは僕の死生観なのであれですが、できれば相手の意図に寄り添う医療がしたいです。

 

話がそれましたが、次回で最後にします。

 

 

↑ 静岡清水区の動物病院 みなとまちアニマルクリニックです。