(前回記事)

心の履歴(308)
逆転のシナリオは描けず(函館戦争④)
2021-12-28 (2010/08/16 著)

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12717857084.html

 

(今回記事)

心の履歴(309)

固定費を拡大させる戦略(函館戦争⑤)
2010/08/18

山田君の函館着任が1988年3月。

彼と打つ手が見当たらない函館・道南エリアをどうするかで、あれやこれやと戦略を練ったのが昼夜二日間。

 

我らが打ち出した戦略は、道南エリアで徹底敗北・敗走。

彼らを江差(えさし)から日本海沿いを北上させ、道南北部の瀬棚(せたな)まで侵攻させ、冬季、メンテナンス員をここに釘付けし、函館市内でのメンテナンスを不能にする。

 

無論、メンテナンス不能は食品機器だけではない。当然、事務機器にも及ぶはず。拠ってこのエリアでの最大の市場である函館旧市内での不評へと導く。

 

これは私が札幌に着任した1月中旬、大雪の国道5号線路上で当時函館出張所の佐東君と出合い、「冬季は函館から瀬棚まで片道6時間の往復12時間。更に、豪雪の時は帰還できず、二日間瀬棚の旅館に泊まったことがある」との彼の嘆きに基づく。

 

他方、我らの戦線離脱により、第百事務機が勝ちに乗じ、事業規模拡大の為の人員増と固定費を増やさす。

 

更に函館通信機の山田店主から新たな情報によると、第百事務機は賃貸から自己所有の事務所を望み、土地を物色したが、どうやら函館の郊外に的を絞ったとのこと。当(まさ)におあつらえ向き。
 .
当時、LL社函館営業所は郊外の物流倉庫に新築事務所を建て移転。この倉庫は函館市街から北10kmの場所で敷地25,000坪。
 
的を絞った土地とはLL社の物流倉庫正門横の三角形の更地。
広い道路に面した300~500坪でしょうか。
LL社との関係をより深めることも出来る一石二鳥の場所でした。
  
[仮説]
第百事務機に銀行の融資が下りるのは、1987年度の決算書が出来てから。故に、この土地を買うのは、1988年6月か7月。
 
新社屋を建てるのは着工8月で竣工は遅くても翌年1989年の2月。建築業者への全支払いが終るのがその2月。もしくは3月。

 

【グラフ①】3年前まで本業の事務機器の販売での第百事務機の収支はトントン。(a)-(b)。処が、食品機器の扱いで増収増益(c)。拠って1987年決算は黒字(f)。

 



食品機器収益(c)を今断ち切ったとしても第百事務機は潰れない。第百事務機が潰れるためには、土地購入と社屋新築のために大きな借金と人員増をしてもらわなければならない。
 
黒字決算が三期(三年)連続で、帝国データバンク(興信所)の言う通り、更に増収増益が見込めるなら、銀行が不動産費用と運転資金をスムーズに融資するだろう。
 
融資を受けた場合、その全額を使い切ってもらわなければならない。拠って、調子に乗って全額を使い切るだろう翌年1989年3月まで、彼等の活動を妨害してはならない。
 
つまり、我等はこの一年間、この道南エリアの商店には一切機器を販売せず。勝ち誇った第百事務機に土地を買わせ、事務所を新築させ、借金を負わせ、増員させ、固定費増をさせるることが戦略となる。

 

諸葛孔明に言わせれば、わざと敗走し、追走してくる敵を山岳などの狭い道、隘路(あいろ)に導く。


 
 [壊滅戦略]
【グラフ②】 恐らく、調子に乗った彼等の1989年度計画では、この年の収益は増え(c’)、その分を借入金の返済分(e’)に回す。
 
だが我等は、1989年4月から彼等の食品機器の収益を一気に根こそぎ奪う。つまり、会社全体の粗利益額を半分にする。
 
拠って、1989年度の決算【グラフ③】を赤字に陥(おとしい)れる。単なる生き残れる赤字ではない。現金が回らなくなり手形を落とせなくなる程の超赤字で何れ倒産の事態へ。
 
簡単に言えば次のようになる。
 
旦那は函館で営業職のサラリーマン。

そこそこの一定収入がありました。
でも、毎月の家計簿は収支トントン。
 
奥方が働きに出ました。

奥方の洋服代や化粧品代はかかりましたが大した額ではない。
 
奥方の収入分を返済にあてることにし、新築のマイホームを購入。30年銀行ローンを組みました。

処が奥方は病気で長期入院。奥方の収入はゼロのみならず、これまでに無かった出費増。結果、住宅ローンを払えなくなり、マイホームは競売にかけられたが、変形土地故に評価は低く、安値で落札される。

 

残ったのは、マイホーム購入金額と競売金額との差額の借金。この借金を払う原資はない。そこで高利の街金(まちきん)に手を出す。然し、払えないから街金に追い立てられ悪評で旦那の函館市内での信用度はゼロ。残る途は夜逃げ。

 

これが描いたシナリオでした。

つづく

心の履歴(310) 
飛んで火に入る冬の虫! (函館戦争⑥) 
2021-12-29 (2010/08/22 著)

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12718180194.html

 

 

『心の履歴』40代北海道編1⃣ 目次
(自) No.241 1987年1月~

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12712060251.html