(前回記事)
ピーター・ドラッカー(26) 日経

2012-12-08
初来日で"中毒"
「経済大国になる」確信 出会った経営者は友人に

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12714442263.html


(今回記事)
ピーター・ドラッカー(27) 日経
「引退」なし
NPOの支援に傾注 日本企業は強さ忘れるな

1世紀近くを振り返り、恵まれた人生を送ってきたものだと思う。4人の子供たちはみんな元気だ。

 



幸いにもだれもマネジメントに興味を示さなかったし、今もしょっちゅう訪ねて来てくれる。

1970年代以降は何をやってきたか。以前と同様に大学で教え、2年に1冊は本を出し、コンサルタントをやってきた。

例えば、ゼネラル・エレクトリック(GE)の最高経営責任者(CEO)を20年間続けたジャック・ウェルチ。最初の5年ほどは「ウェルチ革命」を指南した。

関係が終わったのは、彼が「ピーター・ドラッカーはチームの一員」と公言したからだ。コンサルタントが組織の一部になったら有害でしかない。

日本の友人とは引き続き関係が深い。2003年には、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊名誉会長がクレアモント大学に2000万ドルを寄付してくれた。同大学の経営大学院の名称には、今は私の名前だけでなく伊藤さんの名前も加わる。

そんな友人たちに1つ言っておきたい。日本の強さを忘れないでほしい、ということを。

欧米人と日本人を交ぜてパーティーを開くとしよう。何をしているかと聞かれれば、欧米人は「会計士」、日本人は「トヨタ自動車」などと答えるだろう。

自分の職業ではなく自分の組織を語るということは、組織の構成員が家族意識を持っている証拠だ。ここに日本最大の強さがある。

実は、コンサルタントとして時間の半分はプロボノ(無報酬の公益サービス)で、大学や病院、教会など非営利組織(NPO)へ振り向けてきた。昔からずっとである。

今は企業から新規に仕事を引き受けておらず、過去3年ではNPOの割合は8割になっていると思う。かねて指摘してきたように、マネジメントは企業の専売特許ではない。

現在力を入れているプロジェクトの1つは、米中西部地域にある多数の小規模大学が共同で記録管理を行えるようにすること。全部で600大学あり、このうち180大学はカトリック系の女子大で特に規模が小さい。学生数が80人のところもある。

こんな大学が法律で義務づけられる記録管理をきちんとやろうとしたらたちまちパンクする。

入学試験で志願者を落とす場合、人種差別などをしていないと証明する記録を残さなければならない。これは大変な作業なのだ。大学の担当者とは毎月数日間は打ち合わせをしており、これだけで結構忙しい。

1950年の正月、父と一緒に、ハーバード大学の教授職を引退しようとしていたヨーゼフ・シュンペーターを訪ねた。2人は第1次世界大戦前のウィーン時代の話に花を咲かせ、私は退屈し切っていた。

だが、ふと思った。偉大な経済学者になったシュンペーターはこれから一体何ができるものなのか、と。彼は1週間後に息を引き取った。

分権化、目標管理、知識労働者、民営化――。みんな私の造語で、これからも使われ続けるかもしれない。

米国大統領から民間人へ贈られる最高の勲章「自由のメダル」ももらった。

しかし、有名になることだけが人生を測る物差しではない。これからもこのことを忘れないでいたい。最初に書いたように私には「引退」という言葉はない。

つづく

 

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