(前回記事)

心の履歴(379)
1987-1991年のタイムカプセルを開ける
2020-10-22掲載 (2011/06/18 著)再掲載

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12632538305.html

 


(今回記事)
心の履歴(380) 

(世子とのドライブ ①/③)

クマザサの中が女性用トイレ

2020-10-23 (2011/06/23著)再掲載

 

1990年8月10日(金曜日)のこと。
子(よこ)が話しかけて来ました。


「所長、お盆はどうされますか?」
「そうだね、私は平常出勤。何かあったらいけないので留守番役ですよ。と言っても14日午後は旭川に日帰り出張だが」
 
「15日私に付き合ってくださらない?」
「あ~、いいよ。何処へ?」
 
「函館に行こうと思うのです」
「何でまた管轄外の函館へ」

「㈱北海道料飲コンサルタントが函館に造った健康センター『漢方・励明薬湯センター』がオープンしたので、その写真を撮ろうと思いまして」
「じゃあ、そうしようか」 
㈱北海道料飲コンサルタントは
子の大お得意さまでした。
 
そして、


15日午前十時に豊平区の札幌営業所を出発。
いつものように
子が運転で私は助手席。
 
土砂降りの中山峠を越えて噴火湾に出るも、長万部(おしゃまんべ)から国道5号線は冠水で通行止めです。
 
函館に行く迂回路として、一旦半島を横断し、日本海側の瀬棚・北桧山から南下し、江差から再度半島を横断のコースとなりました。
 
日本海側の雨は小降りになっていました。
 
平地を走っている時です。

子 「おしっこが出る」
 

子は木造平屋建ての一種のドライブインに車を停め、トイレに行きました。


暫らくして出てきました。
もう済んだものと思いましたが、そうではなかったのです。
 
「トイレが汚すぎて到底する気になれないわ」
そう言って車を走らせました。
 
やがてローカル国道は峠になりました。
その時は霧雨になっていました。
 
突然、
子「漏れるゥ!」
私 「この山の中じゃ何も無いから、何処かに停めて草の上にするしかないね」


本州と違って、何も無い道は幾ら走っても何も無いのが北海道。
それから20分は走ったでしょうか。


私 「早くその辺に停めなさい。対向車なんて一台も来ないじゃないか」
 
尚且つ、それから10分は走りました。
峠の下りにかかったとき、急に左折。
 
車幅ぎりぎりの山道を駆け上がりました。
200mほど進んでちょっと広めの所で停止。
笹薮の中にバックでザザッと車庫入れです。

 



そこで
子は薮を掻き分けドアを押し開け、笹竹の中に消えて行きました。処が、5分も経たないのに帰ってきてトントンと助手席のドアをノックします

もう済んだのかな? 
それとも何かあったのかな?
 
「所長、テッシュをとって!」
「何処?」
「後部座席に箱があるでしょう」
「あいよ」


子はテッシュ箱を抱えたまま、再び笹薮の中に消えました。
 
処が5分経とうが帰って来ない。
10分経っても
 
薮の向こうはシーンとした雑木林。
その奥は霧の中。
 
相当奥地まで行ったのか。
まさか、熊に襲われているのじゃないだろうな?
 
然し、心配だからと言って、25歳の女性の小水している現場確認に行く訳にはいきません。
 
はらはらしながら待ちました。
20分経過。
 
これは何かあった!
崖からでも落ちたかな?
 
山の中で誰かと出会って暴行を受けているかも!
心配しだしたら、悪いことばかり想像してしまいます。
 
これはいかん!

子を助けに行かなきゃ!
 
意を決し、ノブに手を掛け後方をみると、遠くの薮が微かに動いています。


やがて彼方の繁みの向こうで真っ赤な制服がチラリと見えほっとしました。
 
「お待ちどうさま」と言って世子は車をスタートさせ、山道から国道に戻りました。私、疲れがドッと出ました。
 
江差から函館に入り、「励明薬湯センター」の写真をバカチョンで撮った時はもう午後5時を過ぎていて暗くなっていました。

 

   ★

 

私は転勤の時、後任の所長塩見にこのことをうっかり話してしまいました。

 

その時の私は、どんな心境であったのか分かりません。

札幌から京都本社へ転勤後、大失敗したことに気が付きました。

 

あ~、これで世子に嫌われる!

恐らく塩見は自慢げにこのことを世子に話すだろうし、その時の世子の立腹の気持ちが手に取るように分かりました。

 

30年後の今でも残忍無念です。(2020年10月)

このバカな私!

 

 

つづく

心の履歴(381) 
世子を抱きしめていたかも
(世子とのドライブ ②/③)
2020-10-26 (2011/06/20 著)再掲載

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12632485412.html

 

 

『心の履歴』40代北海道編 目次(1)
(自) No.241 1987年1月
(至) No.323-2

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12712060251.html

『心の履歴』40代北海道編 目次(2)
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12720330612.html
(自) No.324~