デットエンドの思い出 よしもとばなな

2003年7月30日発行

 

「幸せってどういう感じなの?」婚約者に手ひどく裏切られた私は、子供のころ虐待を受けたと騒がれ、今は「袋小路」という飲食店で雇われ店長をしている西山君に、ふと、尋ねた……(「デッドエンドの思い出」)。
つらくて、どれほど切なくても、幸せはふいに訪れる。

かけがえのない祝福の瞬間を鮮やかに描き、心の中の宝物を蘇らせてくれる珠玉の短篇集。
ほかに「幽霊の家」「おかあさーん! 」「あったかくなんかない」「ともちゃんの幸せ」の4篇収録。つらく切ないラブストーリー集。

 

 

かつて若い頃に読んだ吉本ばなな作品を思い出す文体。

読みやすく、すっと心の中に染み込むような作品です。

 

短編5編を収録。

 

岩倉のアパートは、かつて一酸化中毒で亡くなった老夫婦が彷徨っているという。

不思議と恐怖感はなく、時間が止まったかのような穏やかな空気が漂っている。

 

実家の洋食店での老夫婦の様子を母親から聞く。

そこには穏やかに寄り添そう二人の姿があった。

仲の良い二人のエピソードが可愛いです。

理想的な老後の姿。

 

まるで、それが未来の姿であるかのように主人公と岩倉は関係を進めていく。

二人の会話が心地よい。

別れを経験しても、再び結びつく。

 

それは亡くなってなお、寄り添いつづける老夫婦とどこか似ている。

 

他のお話も読みやすく、短編なので吉本ばななさんの作品が初めての方にもオススメです。

 

つらい事、悲しいこと。

マイナスな気持ちになるときも時間経過とともにいつか薄らぎ、立ち止まった時に幸せに気づく。

そんな作品たちでした。