太陽の坐る場所 辻村深月
2008年12月15日発行
 
高校卒業から10年。
クラス会で再会した仲間たちの話題は、人気女優となったクラスメートの「キョウコ」のこと。
彼女を次のクラス会に呼び出そうと目論む常連メンバーだが、彼女に近づこうと画策することで思春期の幼く残酷だった“教室の悪意”が、まるでかさぶたを剥がすようにじわじわと甦り、次第に一人また一人と計画の舞台を降りてゆく……。
28歳、大人になった男女5人の切迫した心情をそれぞれの視点から描き、深い共感を呼び起こす。
 

 

毎年恒例のクラス会。
その年は初めて地元ではなく、東京で行われた。
地元在住者の参加が少ない中、上京してきたメンバーが顔を合わせる。
 
そんな中、話題は自然と一人の女性に集まる。
それは今では人気女優として活躍するキョウコだった。
 
キョウコをクラス会に呼ぼうという計画を軸として物語が動き出す。
それぞれが心の中に抱えるコンプレックス。
昔夢見た通りに歩くことが出来ていないもどかしさ、そんな自分の心と向き合いながら、大人になった今と高校生の頃の過去が語られます。
 
キョウコに会いに出かけた聡美からリレー形式で話が進みます。
劇団に所属しながら事務員として働く聡美。
どうして自分ではなくキョウコがそこにいるのか激しい嫉妬に苦しむ。
 
真面目な紗江子はかつて親友が付き合っていた真崎と付き合っている。
けど、真崎には家庭があって。
 
由希はキョウコと親友であると、周りには嘘を付いている。
そして同級生たちにはデザイナーと言っているが実は、契約社員の事務員だった。
 
順番にキョウコにコンタクトを取っていきます。
が、キョウコにあった人間は連絡が途絶えることになる。
 
順番に高校生だった過去を語っていきます。
その中で思い出させるのは、クラスに存在した恭子という女王の姿。
 
キョウコ、リンちゃん。
なぜこの二人だけカタカナでの表記だったか、さらに倫子の読み方。
この理由がわかった時、話がひっくり返ります。
 
学生の頃って、その狭い世界が全てだった。
でも外に出れば、実際は世界は広い。
そんな事は子供はいずれ学んで自分を取り巻く環境に適応していく。
 
過去に囚われ、足を止めることなく進んでいくために。
 
話自体がザラリとした感覚があるお話です。
クラス内に存在するカーストだったり、高校生の内面が怖いくらい打算的でぞっとします。
 
 

別冊図書館戦争Ⅱ 有川浩

2008年8月9日発行

 

“タイムマシンがあったらいつに戻りたい?”という話題で盛り上がる休憩中の堂上班。

黙々と仕事をしている副隊長の緒形に、郁が無邪気に訊くと、緒形は手を休め、遠くを見つめるように静かに答えた―「…大学の頃、かな」。

未来が真っ白だった無垢な時代。

年をとるごとに鮮やかさを増す、愛しき日々。

平凡な大学生であった緒形は、なぜ本を守る図書隊員となったのか!?

過去と未来の恋を鮮やかに描く、シリーズ番外編第2弾。

 

 
緒形の不器用な恋愛が描かれています。
元良化隊隊員という経歴を持った副隊長の悲しい恋の行方は……。
 
本を狩る者と、本を生み出す者。
直接的に恋人の書いたものが有害図書として狩られたわけではなかったにしても、これはない。
若いからといって何も考えなかったからこその結末。
が、そこで微かに救いを感じさせるラスト。
いつか二人の道がまた交わることを期待したい話でした。
 
堂上の口から昔の話が語られます。
初めから何でも有能にこなす上司のイメージがありますが、若い頃は色々とやらかしておりました。
二人が結婚して夫婦という関係になったからこそ、知り得ることができた話です。
 
そして、帯にもあるとおり「あの人たちは?」と気になる二人。
手塚と柴崎の関係。
柴崎がストーカー被害にあいます。
解決したと思ったら、さらに被害が……。
 
不器用でお互い気持ちに気づけずにいた二人が……。
 
きっちりラストでまとめて来た、って感じでスッキリ終わりました。
 
 
 
 

 

別冊図書館戦争Ⅰ 有川浩

2008年4月10日発行

 

晴れて彼氏彼女の関係となった堂上と郁。

しかし、その不器用さと経験値の低さが邪魔をして、キスから先になかなか進めない。

純粋培養純情乙女・茨城県産26歳、

笠原郁の悩める恋はどこへ行く!? 番外編第1弾。

 

 

図書館戦争シリーズのスピンオフ作品です。

本編終了後の話が描かれています。

 

前作までで無事恋人になった二人。

しかし、恋愛経験なしの純粋娘はやはり空回りをしつづける。

 

読んでると笑いがこみ上げてきます。

 

同時進行で図書隊の仕事の様子が描かれています。

本編のような大きな事件ではありませんが、いくつかの事件を解決していきます。

 

時々空回りして、喧嘩などもありましたが二人は無事に……。

しかし、甘い雰囲気になるべきシーンがまるで業務連絡のようになってしまうのはこの二人ならではなのでしょうね笑

 

主役二人の影で、手塚と柴崎のペアもいい雰囲気です。

 

 

 

 
 

 

 

 

図書館革命 有川浩

2007年11月30日発行

 

原発テロが発生した。

それを受け、著作の内容がテロに酷似しているとされた人気作家・当麻蔵人に、身柄確保をもくろむ良化隊の影が迫る。

当麻を護るため、様々な策が講じられるが状況は悪化。

郁たち図書隊は一発逆転の秘策を打つことに。

しかし、その最中に堂上は重傷を負ってしまう。

動揺する郁。そんな彼女に、堂上は任務の遂行を託すのだった――「お前はやれる」。

表現の自由、そして恋の結末は!?

 

 

図書館戦争シリーズの4冊目で、本編の最終巻です。

 

カミツレのハーブティを飲みに行く約束をした郁と堂上。

完全なデートですね。

お互いを意識しているのが感じられます。

そこはやはり、年上の余裕なのか慣れない郁のほうがアタフタしてて可愛いです。

 

そんな中、緊急の呼び出しがかかる。

 

原爆のテロ攻撃事件。

それは当麻蔵人の作品とよく似ていた。

問題視される当麻を特務部隊が警護することになります。

 

良化法と憲法の矛盾。

表現の自由を勝ち取るための裁判。

今回はこの図書館シリーズの世界に奥深く根付いている問題点を追求していくようなお話です。

 

重症を負った堂上。

一人、当麻を連れ自由を得るために大阪の領事館を目指します。

 

最終巻にふさわしいラストでした。

もう後半は自然とニヤニヤしてしまいます。

 

 

 

 

 

 

図書館危機 有川浩

2007年3月5日発行

 

思いもよらぬ形で憧れの"王子様"の正体を知ってしまった郁は完全にぎこちない態度。

そんな中、ある人気俳優のインタビューが、図書隊そして世間を巻き込む大問題に発展してしまう!?

 

 

図書館戦争シリーズ第3弾。

前作にて手塚兄の手紙によって、憧れの王子様の正体を知ってしまいました。
堂上に対して不自然に狼狽えてしまう郁。
 
6年前から立ち止まっていたのは本当に郁のほうだけ?
今回は段々と二人の関係が変化をしてく境目的な時期のように思います。
 
そんな中で図書館で毬江が痴漢被害にあいます。
堂上班+柴崎は急遽、おとり捜査を行うことに。
痴漢からのおとり捜査、お決まりの王道パターンに突入。
そして、期待を裏切らないラブコメ要素ニコニコ
 
郁、手塚、柴崎の昇進試験。
実技がいかにも図書館、って感じで面白かったです。
子供が苦手な手塚の慌てる様も新鮮でした。
彼は今回、色々と違った一面を見せてくれましたね。
 
人気俳優・香坂の特集本の出版のため、インタビューをする折口。
生き生きと自分の生い立ちを語ってくれた香坂に、良い本を作りたいと意気込む。
が、ある一つの単語がメディア良化委員会の違反語だった。
相談された玄田が解決策を提案するが。
 
茨木県展の応援で地元へ向かう事になる郁。
そこは業務部が権力を握る女世界で陰湿な女子のイジメの対象に。
母親に戦闘職種についているとバラされてしまいとうとう修羅場にガーン
 
戦闘の末、傷つく隊員たち。
その結果……。
 
一気読み必須です。
次も楽しみ爆笑