2024年になってしまいましたが…。
加齢なる一族、十二月大歌舞伎第三部の感想。
一、猩々
中国・揚子江のほとり。
猩々(尾上松緑・中村勘九郎)は酒売りに勧められるままに大好きな酒を飲むと、酒の徳を謳いながら、上機嫌に舞って見せます。
やがて、酒売りに酒壺を与えて猩々は打ち寄せる波間に姿を消します。その酒壺は…。
猩々は古くから中国に伝わる水中に棲む霊獣で、酒を好み、無邪気に舞い戯れる妖精のような存在です。
勘九郎さんの踊りは、伸びやかであり、それでいて切れが良く、身体能力の高さが分かります。観ていて気持が良い。
松緑さんの踊りは、愛嬌と柔らかさがあり、勘九郎さんとお互いに気を合わせていながらも、それぞれ競う合っている感じもあり、目が離せませんでした。
集中して観たからか?あっという間に終わってしまいました。
一、天守物語
播磨国姫路にある白鷺城。この天守閣の最上階は、人間たちが近づくことのない、美しい異形の者たちが暮らす別世界。
この世界の主こそ、美しく気高い富姫(中村七之助)です。
そこへ富姫を姉と慕う亀姫(坂東玉三郎)が訪れると、久しぶりの再会を喜ぶ富姫は、亀姫に土産として白い鷹を与えます。
その夜、行方知れずとなった城主播磨守の白鷹を探しに、播磨守に仕える姫川図書之助(中村虎之介)が天守閣へとやって来ます。
天守閣で出逢った富姫と図書之助。
図書之助に恋心を抱き始めた富姫は自分に逢った証として、城主秘蔵の兜を渡しますが…。
2009年に観た玉三郎さんの天守物語で、歌舞伎の沼に落ちました・・・。
それまでも、歌舞伎は母に連れられて行ったり、歌舞伎好きの友人と観たりしていましたが、この天守物語で完全に沼落ち!
それ程、玉三郎さんの富姫は、素晴らしかったのです。舞台から10センチは、浮いていて、滑る様に歩む、そんな風に感じました。
まさに、美しく妖しい者でした。それ以降、2回玉三郎さんの天守物語を観ましたが、その度、感動しました。
そして今回は、昭和52年以来、ずーっと玉三郎さんが演じてきた富姫を七之助さんが演じるという大抜擢で、更に、亀姫という妹を玉三郎さんが演じるのですから、これは見逃すわけにはいきません!
天守閣の最上では、赤い着物の禿たちや秋草を釣る侍女たち、その優雅で独特の雰囲気の中、現れたのは、七之助さん演じる富姫。
美しさと気品は、間違いなし。
台詞は、玉三郎さんから、教わった通りのイントネーション。
出だしは好調。
それにしても、泉鏡花の台詞は、美しく丁寧。
日本語って、こんなに情緒があって、綺麗な言葉なんだと教わり、天守物語のあと、泉鏡花の本を読み漁りました。
捨ててないはず、また読みたくなりました。
亀姫登場。
玉三郎さん、赤い着物がよく似合って可愛い!少女だわ。
声も高くて、愛らしい。
ね〜と富姫と顔を寄せる場面では、確かに妹に見えます。
二人ともに素敵♡
さてさて、次は図書様。
虎之介くんです。
ずーっと團十郎さんが演じてきた、ザ二枚目のお役。
とにかく灯りを持って現れた瞬間から、素敵!と思わせないとね…。
そして、富姫様が、心惹かれるのだから、その点では團十郎さんには説得力がありましたよね。
虎之介くん、精一杯の頑張りが全身から湧き出ていて、台詞ひとつひとつがよく聞こえました。
團十郎さんの台詞は、聞き取りにくくて、そこがまたミステリアスな魅力なんでしょうけど…。
今回の天守物語では、図書様の気持ちがよくわかりました。今更?(笑)
そして、真面目で誠実な図書様を殺したくない富姫様の気持ちもよく伝わりました。
あれ?こんなに台詞劇だったかしら?
美しい台詞のやり取りから、改めて泉鏡花の書いた言葉の綺麗さを感じましたが、
ただ、富姫様と図書様の2人からあふれ出る恋しさ、妖しさは、まだまだ・・・。
富姫様がこの世の人ではない妖しい者ではなく、意志の強い女性にも観えました。
前半のこの世の人ではない、妖しい者から、後半は、人間に。
図書様との台詞のやり取り辺りから、人になってしまいました。
義姉は、七之助さんの台詞と玉三郎さんの台詞の違いは、玉三郎さんは、歌う様に台詞をいうと言ってました。
確かに、今回の天守物語、台詞が聞こえ、ストーリーもよくわかりました。
聞こえすぎると、妖しい世界から、人間の世界になってしまうのかしらね・・・。
玉三郎さんの富姫を恋しく思いながらも、玉三郎さんは、もう富姫を演じることはないでしょう…。
そして、七之助さんの富姫は、上演される度にブラッシュアップされていくでしょうから、天守物語の再演、楽しみにします〜。
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