加齢なる一族、錦秋十月大歌舞伎、昼の部に行きました~♬
一、天竺徳兵衛韓噺
時は室町時代。
異国を巡り天竺から帰国した船頭の徳兵衛(尾上松緑)が、吉岡宗観(中村又五郎)の家に呼ばれます。
将軍家の重臣・佐々木桂之介(坂東巳之助)が、何者かの企みにより将軍足利義政から預かる宝剣「浪切丸」を紛失、詮議の期日が迫るなか、桂之介の気晴らしのために招かれました。
徳兵衛は自らが巡った異国の話を面白おかしく物語り、桂之介に気に入られます。
そこへ桂之介と慕い合う銀杏の前(坂東新悟)が訪ねて来たので、宗観は二人を逃します・・・・。
二幕目が楽しい。
徳兵衛が、桂之介に、異国の話をするのですが、琉球の話が今の沖縄の話だったり、踊り比べで自分は藤間流だとか、先月は年老いた役で、今月は、若返ったとか色々と面白く語るのです。
屋台崩しや立ち廻り、大きな蛙に乗って大暴れ!
豪快で楽しい演目です。
二、文七元結物語
左官の長兵衛(中村獅童)は腕の立つ職人ですが、大の博打好きで貧乏暮らし、女房のお兼(寺島しのぶ)とは喧嘩が絶えません。
そんな家の苦境を見かねた娘のお久(中村玉太郎)は、吉原に身を売ることを決意。
この孝心に胸を打たれた角海老の女将お駒(片岡孝太郎)は、お久のためにも心を入れ替えるように諭し、長兵衛に50両の金を貸し与えます。
娘の思いとお駒の情けにすっかり目が覚めた長兵衛でしたが、その帰り道、身投げをしようとしている若者、文七(坂東新悟)と出会うと…。
山田洋二映画監督の脚本・演出で、寺島しのぶさんが出演という話題の演目。
先ずは、舞台美術、装置の美しさに感激です。
冒頭の角海老の門が開くと、角海老の屋敷が現れるのですが、屋根のない、深い赤色の柱と格子と床だけなのですが、暗めの舞台に映えて、とても素敵です。
これは、歌舞伎ではない、演劇だと思いました。
橋で文七に出会う場面でも、橋がグルっと回り、観客が橋を観る角度が変わり、新鮮でした。
長屋も屋根なしの柱で貧しい古い長屋を表現しています。
井戸があり、そこで近所の人が話を聞いている姿が、とても良い感じ。
舞台美術ばかり褒めていますが、ではお芝居について。
寺島しのぶさんが、お久~と大きな声を出して、お久を探しながら、花道を歩いてくるのですが、50年夢見た歌舞伎座の舞台に居るという気負いを感じさせず、ナチュラルなお芝居。
お久の玉太郎君は、とにかく身を縮め、うつむき、悲し気でいじらしい娘でした。
獅童さんの長兵衛は、文七と出会って、命より大切なものはないと、50両をあげてしまう計算高くない、明るく愛嬌ある人物。
ここの場面が、丁寧に描かれていて、長兵衛が単なる博打好きの駄目な男ではなく、情け深いことがわかりました。
文七役の新悟さんは、先程の演目で、お姫様を演じていたとは思えません。背が高いので、娘役では、いつも身を屈めて大変そうに見えて・・・。
立役は、スラっとしていて、似合いますね。
角海老のお駒は孝太郎さん。
低めの声が、気っ風の良い大店の女将さんらしくて、孝太郎さんは、こういうお役が似合います。
彌十郎さんが、文七のお店の主人で、彌十郎さんが出てくると、舞台が明るくなり、楽しいわ。
「文七元結物語」は、全体的に、歌舞伎と違って、抑えめなお芝居。
ですから、そこに女優の寺島しのぶさんが居ても不自然ではなかったです。
音羽屋〜という大向こうの声を聞いた時、しのぶさんは、どう感じたのかしらね?


