加齢なる一族、秀山祭九月大歌舞伎夜の部に行く〜の続きです。
ニ、連獅子
文殊菩薩が住むという霊地清涼山。
その麓の石橋に、狂言師の右近(尾上菊之助)と左近(尾上丑之助)が手獅子を携えて現れ、石橋の由来や、文殊菩薩の使いである霊獣の獅子は仔獅子を谷底へと蹴落とし、自力で這い上がってきた子だけを育てるという故事を踊って見せます。
やがて満開の牡丹の花に戯れ遊び、親獅子の精と仔獅子の精が現れると…。
大変有名な舞踊、連獅子は、歌舞伎を観たことがなくても、写真や映像で見たことがあるかもしれませんね。
私も、色々な方々の連獅子を観てきましたが、本当に丁寧で、品のある連獅子でした。
菊之助さんの息子を見る目が優しくて、
父の教えを忠実に再現しようとする丑之助くんが、素晴らしく、親子の情愛を感じました。
指先、つま先まで神経が行き届き、動いた後も形が良いです。
この子は、お父さんを尊敬し、一生懸命、お稽古しているんだと伝わります。
毛振りになると、先日観た松緑さん左近くんの連獅子の迫力、親子の真剣勝負とは異なりますけど、御曹司のDNAを受け継いだ美しい毛振りで、丑之助くんは、お顔が吉右衛門さんによく似ていて、吉右衛門さんも舞台袖で観たかったでしょうと思うと泣けて( ノД`)シクシク…
マスクをしていると涙がたくさん出ても、マスクが涙をせき止めてくれて、助かりました。
丑之助くん、よく、頑張りましたね~、ここまで導いた菊之助さんも立派です。
私は、菊之助さんの品の良い美しい歌舞伎を観続けたいです。
丑之助くんにこの大きな拍手が励みとなって、彼の更なる努力、飛躍に通じると思い、夢中で拍手しました。
三、一本刀土俵入り
相撲取りの駒形茂兵衛(松本幸四郎)は、旅籠の前での喧嘩を収めます。
その様子を宿の2階から見ていたのは酌婦のお蔦。
お蔦(中村雀右衛門)は一文無しの茂兵衛に櫛、かんざしに有り金すべてを与え、立派な横綱になるよう励まします。
茂兵衛はお蔦に何度も礼を言いながら立ち去ります。
それから10年後――。娘と侘しく暮らすお蔦のもとに現れた茂兵衛は今は渡世人となっていて…。
序盤、幸四郎さんが、純朴でおっとりした茂兵衛を好演。
渡世人になってからが、見せ場です。
精一杯演じているのはわかりますが、こういう渡世人のような道を外れた影ある役は、幸四郎さんのお役ではない感じがしました・・・。
あくまでも、私の好みの問題ですけど。
でも、申し訳ないけど、吉右衛門さんがちらつくんです。
越えるハードルが高すぎますよね・・・。
吉右衛門さんという人は、本当に役の幅が広くて、何を演じても深くて、魅力的だったと思います。
お蔦は、雀右衛門さん。酌婦にしては、色気や蓮っ葉な感じもなく、それほど酔った感じもなく、あれ?やっぱり雀右衛門さんは、お蔦ではないかな~と思って見ていたのですが、雀右衛門さんのお蔦には、優しさがありました。
私のお蔦の印象が間違っていたのです。
十年後、子を愛しみ、夫を心配するお蔦を見て、こんな人だからこそ、茂兵衛を応援してくれたんだわと納得したのです。
私は酔った酌婦が、ちょっとした気まぐれで助けたのかと、ずっと思っていたのですが、雀右衛門さんのお蔦を観て、お蔦の印象が、がらりと変わりました。
いかさま博打をしたお蔦の夫、辰三郎は、松緑さん。いかにもという感じでとても良かったです。
子守りの芝のぶちゃん、船大工の錦吾さん、船頭の東蔵さんも印象に残りました。
親分の錦之助さん、チンピラの染五郎さん、それぞれいつも演じている役とは、随分違いますが、意外に良いわ~と思わせてくれました。
この特別ポスター、素敵です♡
三回忌追善で上演される演目の主人公を吉右衛門さんが演じた時の写真です。
どれも、素敵よね。あの良い声が聴こえてきそうです。
これ↑吉右衛門さんの駒形茂兵衛(左隅の緑の縞の着物姿)
渋くて、影があって、カッコイイ!
年齢的なこと、経験値など、叔父と甥には、差があるのは、当たり前です。
吉右衛門さんは、人間国宝でしたもの。
もっと、長く吉右衛門さんの歌舞伎を観たかった…。