三月大歌舞伎昼の部の続き…
 
薄雪姫(片岡孝太郎)を預かる兵衛(片岡仁左衛門)は、姫の身を案じて館から落ち延びさせます。
その矢先、伊賀守(中村吉右衛門)の使者がやって来て、左衛門(松本幸四郎)は、自らの罪を認めたので、伊賀守が清水寺に奉納した件の刀でその首を打った旨を伝え、姫の首も同じ刀で打つように告げます。
間もなく、首桶を携えた伊賀守が来訪。
姫の首を打った兵衛も首桶を手に伊賀守を迎えます。
しかし、二人が首桶を開けると、その中にあったのは・・・。
 
 
吉右衛門さん演じる伊賀守と仁左衛門さん演じる兵衛は、子供の無実を信じ、それぞれ預かった子を逃がすのです。
そして、逃がした責任を取って二人の親は影腹しているというお話です。
 
でも、お互いに同じ気持ちだったこと、わが子は無事ということで、お腹を切った状態で笑いあうのです。
それが三人笑いです。
夫の兵衛に「お前も笑え」と言われた魁春さん演じる梅の方も入って、三人笑いです。
 
 
仁左衛門さんの笑い方と吉右衛門さんの笑い方は違います。
仁左衛門さんの方が痛々しく、苦しそうだけど、吉右衛門さんの方が、苦し気ではありますが豪快です。
 
しかし、何て素晴らしい配役なのでしょう。
舞台の右を観れば仁左衛門さん、左を観れば吉右衛門さん。
それだけでありがたいのに、渾身の演技。
気迫を振り絞り、痛々しい、苦し気な笑いを観てると
もう私の涙が止まりません!鼻水も出ちゃって・・。家でパソコンで観ているから、周りを気にせず泣けました。
 
 
二人の感情を察すれば、わが子の無事に安堵し、秋月大膳の陰謀をかならず暴くぞという決意でしょう。
それは父親としての安堵と、男としての意地です。
 
左衛門の母で、兵衛の妻の梅の方の困ったような笑い方。
息子は助かっても、夫が切腹では、笑えと言われてもね・・・。その切ない苦し気な笑いは、母親の喜びと妻の不安ですね。
 
 
主君の為にわが子を身代わりにというパターンは、寺子屋や先代萩など歌舞伎では定番。
この定番は、日本人に脈々と伝わるDNAにうったえると思うのですが、最近は、賛同されないことも多くなっています。
外国の人には、全く受け入れられないとも聞きます。
 
でも新薄雪物語のわが子の為に父親が身代わりにというのは、また違うパターンですよね。
平成27年に観た新薄雪物語は、仁左衛門さん、幸四郎(白鷗)さん、魁春さんの配役でした。
 
令和2年3月の新薄雪物語は、新型コロナウイルスの為に残念ながら公演中止。
こんなに素晴らしい公演を誰も観ずでは、あまりに悲しい・・・。
YouTubeで配信してくれた松竹に感謝ですね。
 
 
 
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