さてと、昨日観てきた「七月大歌舞伎」の感想音譜





夜の部

一、猿翁十種の内 悪太郎




 大酒飲みで酒癖の悪い悪太郎(市川右近)は、今日も酒に酔って足元がおぼつかない様子。
伯父の安木松之丞(中村亀鶴)も困り果てています。
悪太郎は酔った勢いで、通りがかりの修行僧智蓮坊(市川猿也)にからみ、修行の話を所望したり、自分の薙刀の話を聞かせたりと勝手な振舞ばかりです。
何度意見しても聞く耳を持たぬ悪太郎に対し、松之丞は一計を案じ…。

右近さんが演じる悪太郎の憎めない可愛さ( ´艸`)

踊りの技量と楽しさ両方を味わえて、最後の念仏踊りには、手拍子したくなるほど~アップ









 

二、修禅寺物語


 修禅寺村に暮らす面作師の夜叉王(市川中車)は、将軍源頼家(市川月乃助)から自分に似せた面を作るように依頼されていましたが、納得のいく面を作ることができずにいます。

そのことに苛立った頼家は、夜叉王を斬りつけようとしますが、娘の桂(市川笑三郎)が昨夜打ち上がった面を差し出します。
夜叉王が、その面には死相が表れていると言うのも聞かずに頼家は持ち帰ります。しかし、その夜・・・・。


姉の桂は、父の作った面を付け頼家の身代わりとなり、父の面の素晴らしいことを知ります・・。
父の夜叉王もまた、瀕死の娘を前に自分の面の出来栄えを誇ります。
父は、瀕死の娘の顔を紙に必死で写し、娘はまた、その父のために必死に顔を上げるのです・・・。

職人気質の天才的な面師の父と気位の高い姉娘。
二人の心がやっと通じ合う時が、娘の最期の時とは・・・(ノ_-。)

でも、最期の時でも、分かりあえたなら幸せなのかも・・・。

あまりに身近にいるから、相手がよく見えない・・・、我が家の父と娘の関係が浮かびます。

気位の高い美しい桂は、笑三郎さんにぴったり、月乃助さんの頼家も貴公子らしくて。

中車さんが頑固一徹な父を、春猿さんが優しい妹娘を演じ、薄暗い青い照明が、もの悲しく寂しい・・・。




三、天守物語




 播磨国姫路にある白鷺城。
この城の天守閣の最上階は、人間たちが近づくことのない、美しい異形の者たちが暮らす別世界。
この世界の主こそ、美しく気高い富姫(坂東玉三郎)です。
そこへ富姫を姉と慕う亀姫(尾上右近)が訪れ、久しぶりの再会を喜ぶ富姫は、亀姫に土産として白鷺城の城主である武田播磨守自慢の白い鷹を与えます。

 その夜、天守閣に播磨守に仕える姫川図書之助(市川海老蔵)が鷹を探しに現れました。
富姫は、凛とした図書之助の応対に、命を奪うべきところを無事に帰すこととしますが、図書之助は天守を降りる途中で燈を消してしまい、火を求めて最上階へと戻ってきます。
図書之助に恋心を抱き始めていた富姫は、自分に会った証として、城主秘蔵の兜を渡しますが、再び天守を降りた図書之助は、家宝の兜を盗んだ疑いをかけられてしまい…。
 




白鷺城の天守閣の最上階、赤い着物の禿達、糸を垂らして秋草を釣る次女達、目の前に現れた光景は、まぎれもない「天守物語」・・・。一瞬で泉鏡花の世界でした。
最前列15番、私の1メートル先に、この世ではない世界があるのです!

吉弥さんの薄は、姿が全く変わっていない!

そこに現れた富姫の玉三郎さんの妖しい美しさ・・・。
玉三郎さんは、さらに美しくなっていて、この世のものでない者、確かにそう思える説得力!

玉三郎さんが、天守閣から下界を見下ろして、様子を語ると、玉三郎さんの目線の先に、その景色が浮かびます!
本当に、富姫が語る世界が、私に見えるから不思議・・・。
もう富姫の魔法にかかってしまったのね~。

さらにこの作品は、美しい言葉のシャワーです。美しい言葉を聞き、美しい物を観れるなんて最高~!


亀姫さんは、尾上右近さん。初々しくて・・・・玉三郎さんの富姫相手では、緊張しちゃいますよね(;^_^A

図書之助は、海老蔵さん。花道のすっぽんから灯りを持って現れた姿、すごく綺麗でした。

富姫の恋の相手ですもの、美しい若者でなければね!
海老蔵さんも玉三郎さん相手だと、いつもより控え目な感じがして、正に図書さま~。


近江之丞桃六は、我當さん。足が痛そうで重そうで・・・、いつも心配になります。

でも最後は、玉三郎さんと海老蔵さんの真ん中で、客席からの拍手喝采γ(▽´ )ツヾ( `▽)ゞ
お元気で良かった~。




平成18年の七月大歌舞伎・夜の部も玉三郎さん主演の「天守物語」でした・・・・。
7月31日の千秋楽を観終わった私達(加齢なる一族の義姉、私)は、雲の上を歩いていくかのように、軽い足取りで、銀座駅まで歩きました・・・。

その日は、義姉は体調が悪く薬を服用しての観劇でしたが、熱が出ているのか、興奮で気持ちが高ぶっているのかわからないと言いながら、今観てきた夢の世界を繰り返し確認し合いましたアップ

あれから8年、そして21年の7月の「天守物語」以来の観劇でしたが、間違いはなかった!
観に来て良かった(チケット代が高くないの!)~クラッカー
とさらに加齢した私達は、大満足(o^-')b


玉三郎さんは、泉鏡花の世界を魅せてくれましたラブラブ