~襲撃~
目の前の川が急に黒く盛り上がったかと思うと、そこから顔を出したのは巨大な蛇だった。
「わああ、蛇っ!!」
蛇は苦手。
普通サイズでもダメなのにこんな怪獣みたいなサイズなんてありえない!
私は後ろに大きく飛びのい手、その弾みで後ろ向きに転んでしまった。
大蛇の顔がドサッと岸に落ちてくる。
そこにいたままだったら顔に潰されてたよ・・・。
王子様も辛うじて横に飛びのいていて助かったようだ。
でも相手は蛇。
獲物として私たちを狙ってるならそのまま陸に上がって・・・て、きたー!
ズルズルと音を立てて川から這い出してきた。
気づいた回りの兵隊さんたちが槍を持って集まってくる。
私は後ずさりが精一杯。
「あれ・・・?」
大蛇は正面にいる私ではなく、王子様の方へ向きを変えた。
狙いは王子様?
「あの蛇から魔力を感じる。」
「え?」
「昨日のコウモリと一緒よ。あの蛇も魔法使いに操られているんだわ。」
「だから王子様を狙って・・・!」
既に大蛇にはたくさんの槍が飛んでいた。
何本かがその体に刺さり、大蛇は苦しむようにもがく。
シャアアッ!
大蛇の口から黄緑の液体が放たれた。毒だ!
危うく王子様にかかりそうだったけど、王子様はなんとかかわした。
「う・うう・・・!」
王子様はへたり込んだ様子だったけど、剣を手にするとそれを大蛇めがけて投げつけた。
剣は大蛇に突き刺さり、さすがにダメージが大きかったのか、大蛇は川の方へ急いで向きを変えると、また川の中へ潜っていった・・・。
「逃げた・・・助かったの・・・?」
ホッとして力が抜けた私を側にいた兵隊さんが助け起こしてくれた。
・・・。
起こされてる途中、陸の船の陰にいる人が目に入った。
さっきまで王子様の側にいた側近の一人だ。
でもその表情はなんだか苦々しい感じだった。
王子様は助かったのになんであんな顔してるんだろう・・・。
「王子様!ご無事で!?」
隊長さんが走ってきた。
離れた所にいたので騒動に気が付かなかったようだ。
王子様は足がガクガクしてるようだったけど、それなりに平静な顔をして立ち上がった。
今回ばかりは王子様に共感。
「あ・・・ああ私は大丈夫だ。・・・アンや他のみんなは大丈夫なのか?」
「あら、珍しく周りを意識してるじゃない。」
言わなくていいから。
「アン・・・。」
「私も大丈夫だよ。」
「そうか、よかった。」
ぎこちないけど、笑顔の王子様。
「それにしても、コウモリといい大蛇といい、どういうことだ。」
隊長さんの言葉。
・・・なんだろう、言葉に妙な違和感を感じるんだけど。
それにさっきの側近の人の表情も。
・・・お姫様の救出以外に別の何かが動いてる・・・?
~つづく~