~答え~
キョウスケさまと砂浜を歩いています。
・・・。
「リルさん?どうかしましたか?」
「いえ・・・その・・・。」
うっかりしていました。
私の体は機械が詰まっています。
同じ体格の人間の方より体重が重いのです。
キョウスケさまの足跡はほとんど砂につかないのに、私は一歩踏み出すごとに深めに足が沈んでしまいます。
・・・恥ずかしい。
「やっぱり、ちょっと風強いですね。」
「え・・・はい・・・。」
「岩場のほうだとあんまり風で砂が舞ったりしないかな?岩場のほうに行きましょう。」
・・・砂に沈んでしまう私に気を遣ってくださったのでしょうか。
キョウスケさまはそのことに何も触れませんでしたけど、何だか嬉しく思えました。
反面、砂に沈んでいるのを気づかれたのかと思うと恥ずかしい気持ちもありましたけど。
私たちは岩場に腰掛けました。
「・・・この海に何か思い出でもあるのですか?」
「そう思いますか?」
「よく分かりませんが、人間の方は海などに思い出がある方も少なくないと記憶しています。」
「そうですね・・・子供の頃とか家族でよく来てたし、夏とか海はいいですよ。」
「そうですか・・・。」
人間の方と違って私は泳げません。もちろん特殊なパーツを付ければ別ですが、普通は水に沈んでしまいますし、防水加工はしてあってもやはり水に入るのは危険なのです。
「・・・ご兄弟はいらっしゃるのですか?」
「生意気な妹が一人。でもかわいいですけどね。」
クス・・・。
「家族・・・。」
「・・・あ、すみません、俺・・・。」
「いえ、お気になさらないでください。それに私は一人ではありません。私にもかわいがっていただいているユウナさまたちがいらっしゃいます。」
「ほんとに仲いいですよね。」
「はい。」
私の側にいつもいてくださるユウナさま。
・・・。
そして、今は・・・。
今は・・・キョウスケさまも・・・。
「あ・・・あの・・・。」
「はい。」
「・・・キョウスケさまの、連絡先を教えてはいただけませんか?お互い・・・便利なこともありますし・・・。」
「・・・。」
キョウスケさまは笑顔のままでしたが、しばらく考えていらっしゃるようでした。
「・・・あと三日の約束ですから、連絡先の交換は必要無いと思います。」
・・・。
どうして・・・。
確かにそう約束しました。
だけど・・・。
「・・・あの・・・約束でしたら、撤回しても・・・。私は全然構わないですし・・・」
「・・・そう言ってくれるのは嬉しいですけど。」
・・・やはり、機械の私が相手では本当の恋愛はできない・・・。
・・・そういうことなのでしょうか。
「・・・そう・・・ですか。」
「すみません。」
「・・・いえ。」
波の音が聞こえます。
私はしばらく何も言えませんでした・・・。
~つづく~