~第1話 妖怪退治!?私が!?~
・プロローグ
「はあ・・・」
うなだれた様子で夜道を歩く女性。会社帰りのよう。
頭上の線路を電車が通り過ぎていく。
ポツポツと街灯の灯った静かな道。その女性を陰から見ている怪しい目・・・。
さらにひと気の無い道に女性が入ったとき、背後から不気味な唸り声が・・・。
悪寒に捕われ恐る恐る振り返る女性。・・・誰もいない。
「やだ・・・なんか変な感じがする・・・。」
歩みを速めて以降とした女性の前に巨大な影が・・・!
!?
それは2メートルほどのガイコツだった。
目の奥は怪しい赤い光点が不気味に光り、手には骨のような棍棒を持っていた。
「ば・・・化け物!」
ガイコツは棍棒を振り上げ雄叫びを上げる。
「いやーーっ!ふられたうえにオバケに遭遇なんてついていないにもほどがあるわーーっ!!」
女性は肩にかけていたバッグで思いっきり化け物の顔を叩くと鳴きながらその場を走り去っていった・・・。
・自己紹介
さて、私は神尾崎アカネ。
ちょっと街はずれのとこに住んでいて、温泉つきの珍しい小さなレストランをやっているお父さん、お母さんと、お店を手伝っているお姉ちゃん、そしておじいちゃんと暮らしています。
元々は旅館だったんだけど、まあはっきりいってそんなに儲からなかったんで、日帰り温泉にしてレストランにしちゃったんです。
お母さんの実家だった旅館は一部昔の建物が残っていて、おじいちゃんはそこに今も住んでいます。
渡り廊下ですぐ行けちゃうんだけど。
今日は学校から帰るなりおじいちゃんに呼ばれました。
おじいちゃんとこの20畳くらいあるお部屋で、今おじいちゃんのお話しを聞いているところです。
「・・・それでお話しって何なのおじいちゃん。」
「うむ・・・実はお前に言わなければならぬことがある。」
言わなければ・・・?ま、まさか・・・。
「ま・・・まさか私がへそくってた2万円使ったのおじいちゃん!?」
「い、いや・・・そうではない。」
なぜどもる。
「・・・じゃあなに?」
向かい合わせに座っていたおじいちゃんは立ち上がると外を見た。
「・・・近頃、巷で奇妙な事件が続いておるとは思わんか?」
「そうだね、私のお部屋に隠していたへそくりがなくなっていたりね。」
「つい先日も夜道で化け物を見たということがあったようじゃが・・・。」
チッ、はぐらかされたか。
「・・・どうやらまた妖怪どもの動きが活発になってきたようじゃ。」
・・・・・。
はい?
「妖怪?何言ってるのおじいちゃん。」
「突然このような話しをして驚くのも無理はない。・・・これを見よ。」
そう言っておじいちゃんは机の引き出しから一枚の写真を出して私に見せた。それは遊園地をバックに私と友達とお姉ちゃんが写っている写真だった。
「・・・この間遊園地に行った写真じゃない。」
おじいちゃんはその写真を引き出しにしまうと別の写真を出してきた。
「これを見よ。」
・・・・・。
山の中で魚釣りをしている人の写真だった。知らないおじさんが写ってる何てことのない写真だけど・・・。
「?この写真がなに?」
「それは知人から送られた写真だが、奥に写っている茂みをよく見よ。」
奥の・・・?
見てみると・・・。
!?
何だか人のようだけど、明らかに人じゃない緑色ののっぺらぼうのようなものが写っていた。
「やだ気持ち悪い!なにこれ!?」
「・・・それが妖怪じゃ。まあそこに写っている妖怪は少しばかり人にイタズラをして喜んでいるぐらいで、たいして害のあるものではないが・・・。」
妖怪なんて・・・そんなのほんとにいたの?
「・・・なんかのドッキリとかじゃないの?」
普通はそう思うよね。
「いや、残念じゃが冗談などではない。このように妖怪が出没しはじめておるのじゃ。」
・・・漫画やアニメの世界じゃあるまいし。
「でもなんで私にそんな話しするの?」
「うむ、少々前置きが長くなってしまったようじゃが・・・率直に言おう、お前に”封魔師”として妖怪と戦ってもらいたい。」
・・・・。
今なんと?
「封魔師?妖怪と戦え?なによそれ!?」
いきなりわけわかんない。
「お前にはずっと黙っておったし、できれば何事も無く日々が過ぎてくれればと思っておったがそうもいかなくなったようじゃ。」
黙ってたって・・・。
「わしら一族は代々妖怪を封印する封魔師の役目を負ってきた。もっともここ百年ほどは妖怪もなりを潜めておったようでわしらがその役目を行なうこともなかったがな。・・・じゃが、近頃はこの世界もなにかと不安定じゃ。妖怪たちの出現もそういったことが原因かもしれぬ。」
「・・・でもうちはお寺でも神社でもないのに、普通そういう霊媒みたいことって専門のとこあるんじゃないの?」
「”妖怪退治の専門家”などと看板を掲げてまともに信じてくれる人が何人おるかのう。奇異な目で見られるのがオチとは思わぬか?」
・・・まあそれはそうかもだけど。
「そこでわしら一族は秘密裏に活動しておったのじゃ。」
「・・・まあ、そこまでの話はそこそこ分かったとして、なんで私なの?お父さんでもお母さんでもお姉ちゃんでもなくて・・・。」
「それはお前が最もその資質があるからじゃ。レイもそう言っておる。」
「レイが言って・・・?レイって誰のこと?」
「それは私のことです、アカネさま。」
いきなり女の人の声。
「え・・・」
背中の方で襖が開き、パア・・・っと光が閃いた。
振り返った私がそこに見たのは、髪の長いポニーテールの女の子だった。
~つづく~
*思いつき小説第五弾です。『ゴースト・パーティー』とは違って、コミカルな感じの妖怪退治ものを書いて見たいなと思ったのですが・・・。