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神話の蛇には二つの象徴があります。

一つは脱皮して再生する不死の象徴です。

二つ目は対立するものをすべて超える究極の超越のイメージです。

尽きることのない太陽の光の中で、蛇はすべて焼き尽くされて浄化し、永遠に光り輝くものとなります。

蛇は脱皮によって命を再生します。

不完全な脱皮をしたハブは2ヶ月持たないと言います。

蛇は脱皮しなければ生存できないので全力で集中します。

蛇の眼にも皮があり文字通りスッポリ脱ぎます。

再生された蛇の新鮮な皮膚に古代人は驚いたと思います。

そして蛇の形態は男根も連想させました。

縄文の由来は土器に縄目の文様が施されているところから来ていて神道の注連縄(しめなわ)に受け継がれています。

縄目は蛇の交尾の様子を示しているとされています。

諏訪地方は古代の縄文時代から蛇を信仰していました。

蛇は霊的な力である「マナ」を持っていました。

諏訪大社に祀られている祭神ミシャグチは蛇神です。

7年ごとに御柱(おんばしら)を建てる日本三大奇祭のひとつ「御柱祭」が有名です。

ハシ(橋)は水平にかけられますがハシからハシへ垂直に天と地を結ぶのがハシラ(柱)です。

ハシラのラは下ったものという意味なので柱を通じて神が降りてくるのです。

そして神の数は柱と数えます。

木の柱はエデンの園の中央に植えられた知恵の樹(ちえのき)宇宙樹でもありました。

古代世界で宇宙樹と蛇と知恵は偉大な女神の象徴でした

インダス文明の印章にはヨーガの姿勢で玉座に座っている人物を礼拝する者の背後に立ち上がっている大きな蛇が描かれています。

伝説によるとヨガスートラを編纂したパタンジャリは蛇の姿でサンスクリット文法家のパーニニの手に落ちて来ました。

螺旋を意味する形容詞のkundalinにiがついたのが蛇を意味する女性名詞クンダリニーです。

ヨガではこの蛇女神シャクティを目覚めさせ背骨にそって頭をもたげさせます。

左から螺旋状に上昇して右鼻に達する月のエネルギーの白い回路をイダーと呼び、右から左鼻に達する太陽のエネルギーの赤い回路をピンガラーとよんでいます。

ヨガ行者は陰陽のエネルギーを背骨の基底部に集めとぐろを巻いた蛇女神とともに中央脈管スシュムナーを上昇して各部のチャクラを目覚めさせます。

物部神道にヒフミヨイムナヤコトの呼吸法で「ふるへ ゆらゆらゆらゆら とふるへ」と言霊をとなえる鎮魂法が伝わっていました。

別系統の古神道では天津祝詞の太祝詞事をとなえて心を浄化・安定させて根の国、底の国(身体の基底部)に魂振り(クンダリニー)を起こします。

その振動は背骨(天之御中主神)を通ってタカミムスヒ(高御産巣日神)とカミムスヒ(神産巣日神)を螺旋状に上昇させて頭頂の高天原でむすびます。

こうして、タマフリ(振魂)が起こる事によって、人は本来ミコトである本性の姿に帰るのです。

それを鎮魂帰神といいます。

神道家の川面凡児は鎮魂鳥居伝で光が見える最初の鳥居をくぐって七つの鳥居に達すると示すべき形もなく、語るべき言葉もないこと(ノーマインド)を述べています。

帰神ですから本来の自分である神に帰るのです。

初期仏典の「スッタニパータ」は蛇の章から始まり文末が「蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである」で終わっています。

シッダールタ王子が出家して、瞑想修行中に嵐から守ってくれたのは大きな蛇でした。

2世紀のインドの石像には説教をしている仏陀の蓮華をささえる二人の蛇王が描かれています。

修行者もまた蛇の力によって仏陀に押し上げられるのです。

キリスト教で蛇はイブをそそのかした諸悪の根源ですが、キリスト教以前の古代社会で蛇は死と再生の象徴として崇拝の対象でした。

古代のエルサレムの神殿には、青銅のヘビと、その妻の像が祀られていました。

妻は、偉大なる女神アシェラ(asherah)で、青銅のヘビの名はネフシュタン(Nehushtan)です。

紀元前13世紀頃のユダヤは蛇を信仰していました。

エジプトを離れたイスラエルの人々が荒野で飢え 、モーセとその神に不平をこぼしたとき時のことです。

『主はモーセに仰せられた。「貴方は燃える蛇を作り、それを旗竿の上につけよ。 すべてかまれた者は、それを仰ぎ見れば、生きる。」 モーセは一つの青銅の蛇を作り、それを旗竿の上につけた。 もし、蛇が人をかんでも、その者が青銅の蛇を仰ぎみると、生きた。』(「民数記」21.5-21.9)

毒蛇にかまれてもモーセの青銅の蛇を仰ぎ見ることでユダヤの民は死なずに済みました。

紀元前2000年のシュメールのラガシュには不死の飲み物を表す容器に門番を表す蛇の王が生命の樹をもった像が彫刻されています。

聖書の蛇は罪や堕落と関連していましたが聖書以外の神話では精神的、肉体的な生命力と関連していました。

聖書創世記に蛇が智慧の象徴として出てきます。

『神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。 「決して死ぬことはない。実を食べると、目が開け、神のように善悪を知るものとなることを神はご存じなのだ。」』創世記

正統派(オーソドックス)キリスト教に駆逐される前の初期キリスト教グノーシスの分派、オフィス派、フィビオン派、ボルボロイ派などは蛇崇拝で知られていました。

ギリシアの医療の神アスクレピオスが持っていたのは不死の象徴である蛇が巻き付いた杖です。

欧米の医療機関で用いられているヘルメスの杖(ケリュケイオン)は杖に2匹の蛇が絡みついています。

ヘルメスの杖(ケリュケイオン)の2匹の蛇は光と闇、善と悪、天と地、太陽と月、男と女、陰と陽を表しています。

ヘルメスが杖を持つと2匹の蛇は螺旋状に上昇し、死者の魂を永遠の生命へと再生させました。

イスラムの神秘家バスターミーはファナー(神との合一)における自我の「消滅」を蛇に例えています。

「蛇が古い皮を脱ぎ捨てるように、私はわたしの皮を脱ぎ捨てた。そしてわたしは私自身の中をふと覗き込んでみた。すると驚いた、私は彼だった」

脱皮とは蛇が成長するにつれて、古い皮を脱いで新しい皮に変わる事から、これまでの古い硬直した考え方から、抜け出て、一段と進歩することを意味します。

つまり古い自我を脱いで新しい自我に移行するのが脱皮なのです。

現在、人類は苦しみながら脱皮中です。

昔から「脱皮できない蛇は滅びる」と言われています。

不完全な脱皮では持続可能な文明に移行できないので全力で集中して脱皮しなければならないのです。

 

 

 

クンダリニーヨガでは左から螺旋状に上昇して右鼻に達する月のエネルギーの白い回路をイダーと呼び、右から左鼻に達する太陽のエネルギーの赤い回路をピンガラーとよんでいます。

 

 

ヘルメスが杖を持つと2匹の蛇は螺旋状に上昇し、死者の魂を永遠の生命へと再生させました。

アレックス・グレイ

 

 

グレート・サーペント・ マウンド(Great Serpent Mound)幅6メートル、長さ400メートルの巨大な蛇

オハイオ州南部アダムズ郡

 

 

蛇が死と再生の象徴だったことは聖書の中の民数記(21-09)に「モーセは青銅で一つの蛇を造り、旗竿の先に掲げた。蛇が人をかんでも、その人が青銅の蛇を仰ぐと、命を得た。」と書かれていることからもわかります。