さ~て、先日、ある資料を読んでいましたら『アミド結合』と言うモノに出会いました。
久し振りの出会いのため、小職の復習の意も込めて、今日は『アミド結合』に関して見て参ります。
以下、『サイエンス系お役立ちメディアM-hub』の公式ホームページに掲載されていました内容を転載させて頂きます。
尚、主旨が変わらない程度、小職が書き換えています。
縮合剤選びのポイントを解説!アミド結合生成反応を学ぼう
ケミカルバイオロジー研究に欠かせないアミド結合
アミド結合は、ペプチドやタンパク質を始めとした生体分子の基礎と成る他、医薬品や生理活性化合物にも頻出する重要な結合です。このためアミド結合形成については、多くの反応や試薬が存在します。
ただそれだけに、専門の研究者で無い者に取っては、どれを使えば良いか悩ましいところです。
以下に、いくつかのアミド結合生成反応のポイントを紹介しましょう。
アミド結合は、カルボン酸とアミンの縮合によって作られます。
実際の合成手法としては、カルボン酸側を他の形に変換し、アミンがここに結合しやすくする活性化操作を行います。
活性化の方法としては、反応性の高い方から酸塩化物(X=Cl)、酸無水物(X=OCOR’)、酸アジド(X=N3)、活性エステル(X=OR’’)などがあります。
アミド結合生成反応
またアミドカップリング反応では、しばしば不斉点のエピ化が問題に成ります。α-アミノ酸のように、カルボキシ基に隣接する炭素が不斉炭素である場合、反転が起きて光学純度が損なわれる事があるのです。アミド結合形成反応では、この問題に気を配らねばなりません。
酸塩化物法
酸塩化物は、最も反応性が高い活性化法です。カルボン酸から酸塩化物への変換には、塩化チオニル(SOCl2,)が良く用いられます。ジクロロメタンなどの溶媒に溶解したカルボン酸に、1.1当量程度の塩化チオニルを加えて撹拌し、しばらくしてから留去するだけで、ほぼ純粋な酸塩化物が得られます。得られた酸塩化物は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、ジクロロメタンなどの溶媒中でアミンと反応させる事で、容易にアミドが得られます。
酸塩化物法
立体的に混み合った基質や、アリールアミンなどの反応性の低い基質のアミド化には、酸塩化物が適切です。ただし、酸に弱い官能基を持つ化合物では、カルボン酸を酸塩化物に変換する条件に耐えられ無い事があります。またペプチド合成の場合には、不斉点のエピ化が起きるため、酸塩化物は向いていません。
酸アジド法
酸アジドを経由する試薬として、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)があります。カルボン酸及びアミン、1当量の塩基(トリチルアミンなど)とDPPAを混合するだけで目的のアミドが得られます*1。ペプチド結合に用いても不斉点のエピ化が少ない、優れた試薬です。一般にアジド類には爆発の危険があります。しかし、この試薬ではリン原子がアジドを安定化しているため、安全に取り扱う事が出来ます。反応終了後は、弱アルカリ水溶液による洗浄で副生成物を除去する事が出来ます。
DPPA
活性エステル法
また、活性エステルを経由する方法も広く用いられます。活性エステルは、通常のエステルより反応性が高い特殊なエステルで、カルボン酸とアルコール及び脱水試薬を混合する事で合成されます。
活性エステルに用いられるアルコールとしては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)が最もポピュラーです*2。
1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)はより反応性が高く、HOBtでは反応が進行しにくい場合に試す価値があります*3。
ただし、HOBtやHOAtは爆発性が指摘されており、特に高温を必要とする場合には危険が伴います。
これらに代わりうる試薬として、エチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセタート(Oxyma,)が開発されています*4。
Oxyma活性エステルの反応性はHOAtに比べても遜色なく、安全性及びコスト面でも優れた代替試薬と言えます。
活性エステル法に用いられる試薬
活性エステルの合成に用いる脱水試薬としては、水溶性カルボジイミド(WSCD)が良く用いられます。
これらを用いれば、活性エステルを単離する必要は無く、単にカルボン酸とアミン及びWSCDとHOBt(またはHOAt, Oxyma)をN, N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒中で混合するのみで、目的とするアミドが得られます。
ペプチド合成に適用しても、不斉点のエピ化などの問題がほとんど無いため、現在ではアミド結合生成の最もスタンダードな手法と成っています。
カルボジイミド系縮合剤
WSCD-HOBt法によるアミドカップリング
ホスホニウム・ウロニウム系カップリング試薬
また、WSCDなどを使わず、カルボン酸及びアミンと混合するだけで良いカップリング試薬も開発されています。
最初に開発されたのはBOP試薬*5と呼ばれるものです。
そして、これは強い発がん性がある副生成物が出来て仕舞う難点があります。
PyBOP試薬は、この点を改良したものです。
BOP系カップリング試薬
同様な改良版として、ウロニウム系と呼ばれるカップリング試薬も開発されています。
対アニオンとしてテトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)を持つものと、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)を持つものがありますが、両者に反応性の差はほとんどありません。
反応性の高いOAtエステルを形成する、HATUが最も優れたカップリング試薬として多用されます*7。
ウロニウム系カップリング試薬
また、Oxymaと組み合わせた新たなカップリング試薬COMUも報告されています*8。
立体障害の大きなアミノ酸を用いたペプチドの固相合成においても、COMUはよい結果を与えて居り、コスト面でも優れています。
COMU
これらカップリング試薬は、カルボン酸とアミンをDMFなどの溶媒に溶解し、1.1当量程度を加えるだけの簡便な操作で、目的とするアミドが得られます。
重曹の飽和水溶液などの弱アルカリで洗浄するだけで副生成物を除くことができる点も、大きな長所です。
DMT-MM
これらと別系統のカップリング試薬として、DMT-MMがあります。
これはカルボン酸と反応して活性エステルを形成し、ここにアミンが置換してアミドが形成されます*9。
DMT-MMは多くの有機溶媒に不溶です。
カルボン酸及びアミンと混合するだけで容易に反応が進行し、良好な収率で目的物が得られます。
重要な特徴として、水やエタノールなどを溶媒として用いてもカップリング反応が進行する点が挙げられます。
また、副生成物は水洗のみで除去でき、精製が簡便である事もメリットです。
DMT-MM
DMT-MMによるカップリング反応
<References>
*1) Shioiri, T.; Yamada, S. Org. Synth. 1984, 62, 187
*2) König, W.; Geiger, R. Chemische Berichte, 103, 788
*3) Carpino L. A.; El-Faham A. Tetrahedron, 1999, 55, 6813
*4) Subirós-Funosas R et al., Chem. Eur. J. 2009, 15, 9394
*5) Castro, B. et al. Tetrahedron Lett. , 1975, 1219
*6) Kiso, Y. et al., K. Chem. Pharm. Bull. 1990, 38, 270
*7) Vrettos E. I. et al., RSC Adv., 2017, 7, 50519-50526
*8) El-Faham, A et al. Chem. Eur. J. 2009, 15, 9404.
*9) Kunishima, M. et al. Tetrahedron Lett. 1999, 40, 5327.
なかなか、興味深いですよね。
では、本日の小職の予定です。
今日は、終日、山積している書類と格闘します。