驚 き 過 ぎ て 金 縛 り に な っ た 。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170215/11/minamina-0504/4f/ae/j/o0960040213869203514.jpg?caw=800)
「正面」から抱き締められたのは初めてで、それも、いつもとは違う抱き方だった。
いつもは、“護るため”に。
それ以外の無駄はなく、余計な動きも一切しない。
普段は、ね。
左首に、顔を埋めるのが癖なのかも。
普段後ろからくる時も、必ず顔を埋めてくる。
仕舞いには、痺れて、まったく動けなくなった・・・
何度か噛まれた。
強くじゃないけど。
それが却ってくすぐたかった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170215/11/minamina-0504/06/bc/j/o0960040813869203681.jpg?caw=800)
噛むのも癖だ。
大型の犬みたい。
頭を押さえれたら、動けない。
強引に後ろ髪を引っ張られたら───抗えない。
痺れはどんどん広がって、気が付いたら金縛り状態。
起きてて金縛りになるなんて・・・・・
もしかしたら、「魂縛」でも掛けられたのかも知れない。
何でも出来る奴だから。
それくらい、簡単にやってのける。
くすぐったさと、驚愕と困惑と羞恥。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170215/11/minamina-0504/fd/fa/j/o0500029513869203803.jpg?caw=800)
入り交じって、訳の解らなくなった全神経。
痺れた左半身、
動かない腕。
押し返すことも出来ず、
話すことも許されない。
腕はおろか、緊張で指一本動かせないまま、数分。
為す術なんて無い。
・・・あったとして、一体どうしろって言うんだ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170216/01/minamina-0504/91/70/j/o0960046413869760367.jpg?caw=800)
普段、「正面」から抱き締められる事はない。
あれが私の前に立つことは、滅多に無いから。
───バレンタイン当日。
自分が「壊滅的料理音痴」だとは知っていたけど・・・
バカでも生チョコくらい作れるだろうと言われて、普段世話になっている妻と、あいつの分だけ手作った。
『その位してもバチは当たらない』
『日頃の“感謝”不足のツケを払え』
周囲から、散々な言われよう。
けど、否定はしなかった。
概ねその通りだし。
で、なるほどバカでも簡単に作れた「生チョコ」を、相手のイメージに合った白銀色のBOXに詰めて渡した。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170216/01/minamina-0504/7b/b3/j/o0960031813869760371.jpg?caw=800)
私がしたのはそれだけ。
本当にそれだけだ。
正座して、
顔も見ないままそっぽ向いて・・・
こっそり、
人知れず渡した結果が───
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170216/01/minamina-0504/5d/34/j/o0960073313869760375.jpg?caw=800)
───これである。
驚 き す ぎ て 、
驚 愕 を 通 り 越 し て 放 心 し た 。
家出した心臓が、まだ戻って来てない。
奴は結局、礼の言葉も無いまま去った。
一度も顔を見ないままの私と、
見ることを許さなかった奴と。
ただ、何故か綺麗な笑顔を見た気がしたのは───
気のせいじゃないと思う。
見たこと無い顔だった。
もしかしたら違う人の顔を錯覚したのかもと思うくらい、人が違ってた。
意地の悪い笑みを浮かべることはあっても、笑うことなんて無い奴だったのに。
・・・・・・・ビックリした・・・
それしか感想はない。
物心ついてから初めて───「正面」───から抱き締められた。
それは脅威から護る為でも・・・
自分が育てた“子供”を、あやす為でもない。
ああいう顔もするんだ…
あんなに喜ぶなら、
もっと前からあげれば良かった。
そうも思うけど───
衝撃の「正面ハグ」をされながら、自分はきっと、来世でもその先でも、アイツとの“契約”だけは果たさないだろうと確信した。
本人に言ったらどうなることか。
けど、やっぱり、そう。
私は、
お前だけは、
選ばない。
私の転生はあと二回。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170216/01/minamina-0504/94/f8/j/o0640042613869760381.jpg?caw=800)
古くて、ヒビの入ったこの魂は、その二回のうちに完全に砕け散るそうだ。
奴のことだから、その時が来たら私に付き合うに決まってる。
元々、それを望んでいたんだし。
だからこそ、
お前の“想い”にだけは、
気付かない振りをしてきた。
それが私なりの、返答だったんだよ。
私は、
初めて私に愛をくれたお前だけは、
恐れずに、抱き締めてくれたお前だけは、
傍で、ずっと護ってくれたお前だけは───
生かしたい...
願わくは、消えないで。
俺に、付き合わないで。
もう傍にいなくてもいいから、
どうか自分の人生を、
“魂”の天寿を、
全うしてよ...