今日は、CFAの重要科目である「Financial Reporting & Analsis」と「会計」との違いについて考えてみましょう。「会計はあまり好きではない」という方は多いです。しかし、会計が好きでないからFR&Aをあまり勉強する気にならないようではまずいです。理由は2つです。
1.FR&Aはスコア配分が高い
昨日の私のCFA Level 2合格体験記 にも書きましたが、CFA合格のためには、スコア配分に合わせて勉強する必要があり、FR&Aのように配分の高い分野(Level 1でもLevel 2でも2割程度がFR&A)で確実にスコアを稼げないと受かりません。私が講師を務めるCFA研修に参加されている方の友人がLevel 2で勉強を断念されたそうなのですが、原因はFR&Aが苦手だったから、ということだそうです。Level 1は何とか乗り越えられても、Level 2はそうはいかなかった、ということですね。
2.FR&Aはいわゆる会計とは異なる
私も「会計」や「アカウンティング」という言葉を聞くと、「簿記」と同じような退屈なイメージしかわきません(私は商学部出身なので、簿記は必須科目でした)。たしかに会計とか簿記は大事な仕事なのですが、私は他の誰かがやればいい、と考えてしまいます(とはいえ、私が経営する会社は小さく、在庫も借金もないので、自分で経理もやってます)。しかし、CFAはアナリストのための試験であり、経理や会計士の試験ではありません。アナリストと会計士のどっちがえらい、ということはありませんが、視点が異なるのです。ですから、経理や会計士の視点でFR&Aに取り組むのはよろしくないです。よって、経理や会計士がCFA試験で有利かというと「視点をCFAに合わせられないと有利にはならない」ということになります。ではCFA(アナリスト)の視点とは何でしょうか?
財務諸表を分析することで、企業のファンダメンタルズを理解すること、だと私は考えます。経理や会計士が作成、監査した財務諸表をインプットとして、ファンダメンタルズ分析というアウトプットを出すのです。作成と分析はまったく異なる業務ですから、視点が異なるのは当然です。では、CFAのFR&Aでは何が問われるのかというと、
異なる会計基準・方針を用いる会社同士をApple-to-Appleで比較せよ、ということです。U.S.GAAPとIFRSの差もありますし、在庫に関してLIFOかFIFOか、リースに関してオペレーティングかファイナンシングか、という差もあります。つまり、「(不正会計がなくても)経済的にまったく同じ企業が用いる会計基準・方針によって、良く見えたり、悪く見えたりする」ことを是正せよ、ということです。ですから、StallaにもSchweserにも、会計基準・方針の差が財務指標(ROA、ROE、CFO等)に与えるインパクトの表が至る所に出てくるわけです。違いを是正してから、Apple-to-Appleで財務指標を分析しましょう、ということです。
では、視点が違うならFR&Aの勉強は楽なのか、ということが気にかかるところですが、「細かいことは問われないので、暗記の負荷は軽い。しかし、ビッグ・ピクチャーを理解する必要があるため、難易度は上がる。ただ、業務に直結するはずで、役立つし、楽しいはず」、と私は考えます。簡単に言うと、大変だけどCFA突破と業務の両面で報われる、ということです。いわば、NPV>0ってところですかね。CFAの勉強以前と比較して、財務分析のスキルが高まるのは確実です。そう信じて勉強してみてください。