第11章

 

ロシア大統領エリツィンは、議会を守ることで政権の座に就いたが、公約を破りクーデターを起こし、議会に火を放ち、ホワイトハウスをブラックハウスに変えてしまった。

議会が機能してない間に(邪魔な民主主義の障壁が取り除かれている間に)、法律の作成に着手し、国家予算の大幅削減や食品価格の統制の廃止、民営化の急速な推進などの自由主義改革法案を強引に可決。

エリツィンの支持率は低下。

回復のために「ちょっとした戦争をして勝つ必要がある」と安全保障会議書記。

チェンチェン独立運動を制圧した。しかし、支持率は回復せず。

結局、オリガルヒからの100億円の資金提供を受け、再選。

 

言語道断なのは、ロシアの国家資産が本来の価値の何分の一という値段で競売にかけられたことだけではない。それらはまさにコーポラティズム流に、公的資金で購入した。(中略)

「ごく少数の選ばれた者だけが、ロシアの国家が開発した油田を無料で自分のものにした」(中略)

国営企業を売る政治家とそれを買う実業家との協力という大胆不敵なことが行われ、エリツィン政権の閣僚数人が、国営銀行や国庫に入るはずだった巨額の公的資金を、オリガルヒがあわてて法人化した民間銀行に移動。次に、国はこれらの銀行と、油田や炭鉱を民営化するための競売を行う契約を結んだ。(p.328)

 

日本でも、郵政民営化により、国営事業の民営化が断行された。

たしか、高速道路も国営のままだったら、債務を返済し終えて無料化されるはずだったが、民営化されたことで永久有料化されてしまった。その他、郵政民営化については、調べれば調べるほど問題点は山ほど出てくる。

 

エリツィンは、ショック療法により、「付随的損害」を引き起こした。

 

大飢饉や天災、戦闘もないのに、これほど短期間に、これほど多くの人がこれほど多くのものを失ったことはなかった。1998年にはロシアの農場の8割以上が破産し、およそ7万の国営工場が閉鎖、大量の失業者が生まれた。(中略)

ロシアの「経済改革」によって、たった8年間で7200万人が貧困に追いやられたことになる。(p.335)

 

ショック療法に対する情熱がロシアで最高潮に達したとき、推進派の人々は既存の制度をひとつも残らず破壊することによってのみ、国家再生の条件が生まれると信じて疑わなかった。これはのちにバグダッドで「白紙状態」という夢物語として反復される。(p.338)

 

 

なんというか、、、、

確かに、ショック療法元祖のCIA拷問技術では、破壊して白紙状態にすることが戦略の第一段階だけど、破壊が目的化しているというか、、、、

ユダヤ流の、シオニズム的な、悪意を感じる。

自分たちを迫害してきた、人類や文化に対する憎しみ。

そこから生まれる、慈愛や共感の欠片もない、保守的な要素が微塵もない手段。

復讐・怨念をエネルギーとする新手の植民地支配・帝国主義。それが新自由主義。

 

スミスの言うような西洋の法律が存在しない「未開で野蛮な国」をあさり回る(これはもはや現実的な選択肢ではない)のではなく、既存の法や規制を組織的に取り除いて、はるか昔の無法状態を再現しようというのである。スミスの時代の入植者は、彼の言う「未開拓の地」を「ごくわずかな金」で手に入れ莫大な利益を得たが、今日の多国籍資本は政府プログラムや公共資金など、売りに出されていないあらゆるもの ――郵便局から国立公園、学校、社会保障、災害救済などの公的な管理のもとにあるものすべて―― を征服し奪い取る対象とみなす。(p.341)

 

まったく同じ事が、日本でもリアルタイムで行われている。

詳しくは、堤未果「日本が売られる」にて。