昔々、いつも真実の法を求め続け、それを人々に広めることを願っていた(せっせん どうじ)という名の少年がおりました。

ある日、童子が山中で修行をしていると、恐ろしい姿をした食人鬼が、不思議な詩を唱えているのを耳にしたのです。

「諸行無常 是生滅法」(この世に在るものはすべて移ろいゆき、変わらぬものは何も無い。生じたものは必ず滅していくことが、本来の道理である)

それを聞いた童子はいてもたってもいられずに、鬼の前に進み出て、詩の続きを唱えてくれるよう頼みました。しかしその鬼は空腹であったので、童子を食べることと引き替えになら、続きを教えると答えたのです。

童子が約束を守ることを誓うと、鬼は再び詩を唱えました。

 
「生滅滅已 寂滅為楽」(生じることや滅することの苦しみから離れ、心が静まっていることが安らぎなのである)

童子は大いに喜んで、この詩を多くの人に伝えるため岩に刻み込むと、約束通り鬼の口に身を投げました。すると鬼の姿はたちまち帝釈天という神様に変わり、童子を空中で受け止めるとうやうやしく地上に降ろし、礼拝したのでした。

この雪山童子こそ、お釈迦様の過去世のお姿なのです。

 

この話をすると自分を犠牲にしなきゃ駄目なのかと思う人もいるのですが、そうではありません

「仏法に断じて犠牲なし」といい、ちゃんとかえってきます