1-1 現代社会の特色
1⃣ グローバル化と情報化
(1) グローバル化…人や物、お金、情報が国境を越えて移動することで、世界の一体化が進むこと。
① 国際戦争…国内で作られた商品と輸入された商品の間で、品質や価格を競うこと。
② 国際分業…それぞれの国が不得意な産業については外 国からの輸入に頼ること。日本では食料品の輸入が増え、食料自給率が約40%まで低下した。ただ、品目別でみると輸入が制限されている米の比率は100%に近い。
③ 多文化社会…さまざまな文化を持った人々が共に生活する社会のこと。
(2) 情報化…インターネットの普及など情報通信技術の発達
により、社会において情報が果たす役割が大き
くなること。
① 情報リテラシー…情報を正しく活用する力のこと。大量の情報から、必要な情報を適切に選択して、入
手すること。
② 情報モラル…情報を正しく利用していく態度のこと。個人情報など、他人に迷惑をかけないような情報
を発信しないこと。
2⃣ 少子高齢化と持続可能な社会
(1) 少子高齢化…1人の女性が産む子供の数が減少すると同時
に、平均寿命が延び、高齢者の割合が増加すること。21世紀の半ばでは、日本の人口の約40%を65歳以上の高齢者が占めると予想されている。高齢者の生活を支える公的年金や医療保険、介護保険などの社会保障制度の維持にかかるお金が増える一方で、それを支える労働力人口が減少することが問題である。
(3) 持続可能な社会…将来の世代の幸福と現代の世代の幸福が両立できる社会のこと。実現するためには一人ひとりが社会の問題に関心を持ち、社会参画することが重要である。
1-2 文化と現代社会の見方・考え方
1⃣ 伝統文化と多文化共生
(1) 伝統文化…長い歴史の中で育まれ、人々に受け継がれてきた文化のこと。
① 専門家により受け継がれてきた文化…能や歌舞伎などがある。
② 生活文化…広く庶民によって受け継がれてきた文化のこと。2月の節分や11月の七五三といった年中
行事や伝統的な習慣「おかげさま」「もったいない」といった日本独自の言葉に込められた
価値観などがある。
(2) 日本文化の地域的多様性…日本には気候や風土に応じた多様な伝統文化が存在する。中には少子高齢化
や過疎化によって、存在が危ぶまれるものもあるが、国は文化財保護法に基
づき、伝統文化の保存に努めている。
① 琉球文化…沖縄や奄美群島の文化。踊りのエイサーなどがある。
② アイヌ文化…北海道を中心に暮らしてきた先住民族の文化。鶴の舞などがある。
(3) 多文化共生…多文化社会では、国籍や民族、宗教などの異なる人々が共に生活している。異文化理解に
より、たがいの文化の違いを認め合って対等な関係を築くことで多文化共生が実現する。
2⃣ 現代社会の見方・考え方
(1) 合意…考え方や求めるものが異なるために対立が生じたときに、話し合いにより得られる解決策。
(2) 効率と公正…たがいが受け入れられる解決策に求められる考え方。
① 効率…無駄を省くこと。資源を無駄なく使うことで、全体の満足を増やすこと。
② 公正…特定の人が不利な扱いを受けることがないようにすること。
・手続きの公正…関係者全員が参加して決定するようになっていること。
・機会の公正…正当な理由なく、特定の人の機会が制限されないようにすること。
・結果の公正…正当な理由なく、特定の人の結果が不利にならないようにすること。
(3) 全会一致と多数決…決まりを決める話し合いにおいて結論を出す方法。
① 全会一致…全員の賛成を必要とする方法。関係者全員が納得するが、決定に時間がかかることがある。
② 多数決…より多くの人が賛成する案を採用する方法。一定時間内で決定できるが、関係者全員が納得
しないことがある。少数意見の尊重が大切である。
2-1 人権の歴史と日本の憲法
1⃣ 人権の歴史
(1) 基本的人権…個人として尊重され、平等に扱われ、自らの意思に従って自由に生きる権利のこと。
(2) 3人の人権思想家
① ロック…イギリスの思想家。17世紀後半に「統治二論」で抵抗権を唱える。
② モンテスキュー…フランスの思想家。18世紀前半に「法の精神」で三権分立を唱える。
③ ルソー…フランスの思想家。18世紀後半に「社会契約論」で人民主権を唱える。
(3) 人権思想に関連する文書…時代が進むにつれ、人権の対象と内容が広まっていった。
① マグナ・カルタ…1215年、イギリスで貴族の権利を国王に認めさせた。
② 権利章典…1689年、イギリスで議会に基づく政治を確認した。
③ アメリカ独立宣言…1776年、アメリカで基本的人権の保障がうたわれる。
④ フランス人権宣言…1789年、フランスで「人は生まれながらに自由で平等な権利を持つ。」と基本的人
権の保障がうたわれる。
⑤ ワイマール憲法…1919年、人間らしい生活をする権利である社会権を世界で最初に取り入られた、
ドイツの憲法。
⑥ 世界人権宣言…1948年、国連で採択。第二次世界大戦後、人権思想は世界共通の理念となった。
2⃣ 日本の憲法
(1) 憲法…様々な法の中で最高位に位置する最高法規。憲法に反する法律や命令は効力を持たないとされる。
憲法の改正については、慎重な手続きが定められている。
① 立憲主義…憲法によって政治権力を制限する考え方。政治は人の支配ではなく、法の支配に基づいて行
われるべきだという考え。
② 日本国憲法における憲法改正の手続き
(2) 日本の憲法
① 大日本帝国憲法…1889年に発布された憲法。主権者は天皇とされ、国民の基本的人権は法律の範囲内
でのみ認められた。
② 日本国憲法…第二次世界大戦後の1946年11月3日に交付、1947年5月3日の施行された憲法。
基本的人権が保障されている。
2-2 日本国憲法の基本原理
1⃣ 日本国憲法の3つの基本原理
(1) 国民主権…国の政治の最終決定権を国民が持ち、国の政治が国民の意思に基づいて行われること。
① 前文「ここに主権が国民の存することを宣言し、この憲法を確定する。」
② 第1条「天皇は、日本国の象徴であり日本国統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国
民の総意に基く。」
(2) 平和主義…戦争を放棄し、戦力を持たず、交戦権を認めないこと。
① 第9条1項「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と
武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」
② 第9条2項「前項の目的をお達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権
は、これを認めない。」
(3)基本的人権の尊重…個人の尊重の原理のもと、平等権、自由権、社会権、参政権といった基本的人権を
保障すること。
① 第11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権
は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。」
② 第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求の対する国民の権利につい
公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
2⃣ 天皇と平和主義
(1) 天皇の役割…天皇は国の政治についての権限を持たず、内閣による助言と承認のもと、国事行為のみ
行う。
① 主な国事行為…法律などの公布、国会の指名に基づく内閣総理大臣の任命、内閣の指名に基づく最高裁
所長官の任命、栄転の授与など。
② その他の活動…国際親善のための外国訪問、式典への参加、被災地の訪問など。
(2) 日本の平和主義
① 自衛隊…日本の防衛のために発足した部隊こと。政府は「自衛のための必要最小限度の実力」と説明し
ている。日本の防衛だけでなく、海外で国連の平和維持活動(PKO)などの国際貢献活動も行っ
ている。
② 非核三原則…核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」という政府の基本方針。日本は唯一の被爆国
として、国際社会に核兵器の廃絶を訴えている。
2-3 基本的人権
1⃣ 3種類の基本的人権
(1)平等権…いかなる差別も受けない権利。
① 法の下の平等…第14条1項「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分
又は門地より、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
② 女性差別の解消…1985年に男女雇用機会均等法が制定され、雇用における女性差別が禁止された。
1999年には男女共同参画社会基本法が制定され、雇用以外の社会のあらゆる場でも
男女平等が求められている。
③ 障害者差別の解消…公共の交通機関や施設では、体の不自由な人でも安心して利用できるように、段
差を取り除くなどバリアフリー化が進められている。
(2) 自由権…国家の行きすぎた命令や強制から、個人の自由を保障する権利。
① 精神の自由…思想・良心の自由、信教の自由、集会・結社・表現の自由。
② 身体の自由…奴隷的拘束および苦役からの自由、法律の定める手続きによらなければ逮捕されないこ
と。
③ 経済活動の自由…居住・移転及び職業選択の自由、財産権の保障。
(3) 社会権…生物的に生きるだけでなく、人間らしい生活をする権利。
① 生存権…第25条1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
1919年、ドイツのワイマール憲法で初めて取り入られた。
② 教育を受ける権利…義務教育は無償。
③ 労働の権利…働く機会を得る権利。
④ 労働基本権…雇い主に対して弱い立場にある労働者のための権利。
・団結権…労働組合を作る権利。
・団体交渉権…労働組合が労働条件の改善を求めて交渉する権利。
・団体行動権…ストライキを行う権利。
2⃣ 人権を確保するための権利
(1) 参政権…国民が政治に参加する権利。
① 選挙権…国会議員や都道府県知事などの代表者を選挙する権利。
2015年6月に改正公職選挙法が交付され、2016年の参議院選挙以降、満18歳以上の国民に
選挙権が与えられる。
② 被選挙権…選挙に立候補する権利。
(2) 請求権…国に対して一定の行いをするように要求する権利。
① 裁判を受ける権利…人権が侵害されたとき、裁判所に訴え、法に基づいて公正に判断してもらう権利
② 国家賠償請求権…公務員の行為によって受けた損害に対して賠償を求める権利。
③ 刑事賠償請求権…裁判で無罪の判決を受けた人が補償を求める権利。
2-4 人権の限界と新しい人権
1⃣ 人権の限界・制限と国民の義務
(1) 人権の限界と制限…人権には、他人の人権を侵害してはならないという限界がある。また、社会全体
の利益のために制限されることがある。
① 公共の福祉…社会全体の利益のこと。
第12条「この憲法が国民に保証する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これ
を保持しなければならない。又、国民はこれを濫用してはならないのであって、常に
公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。」
②自由権の制限の例…一部の自由権は、公共の福祉のために制限されている。
・無資格者の営業禁止…職業選択の自由の制限。
・感染症による入院措置…居住・移転の自由の制限。
・他人の名誉を傷つける行為の禁止…表現の自由の制限。
・デモの規制…集会・結社の自由の制限。
(2) 国民の義務…憲法に3つの義務があげられている。
① 普通教育を受けさせる義務…第26条。教育を受ける権利を確保する。
② 勤労の義務…第27条。勤労の権利と同時に義務も生じている。
③ 納税の義務…第30条。具体的な内容は法律で定められている。
2⃣ 新しい人権と世界の働き
(1) 新しい人権…日本国憲法に直接的に定められていない権利のこと。
① 環境権…高度経済成長期の公害問題を受けて生まれた、良好な環境を求める権利。住居への日当たり
確保することなどを求める日照権などがある。大規模な開発事業を行う前には、環境への影
響を調査する環境アセスメントが義務づけられている。
② 自己決定権…自分の生き方や生活の仕方について自由に決定する権利。患者が治療方法を十分な説明
に基づき同意するインフォームド・コンセントや、自分の死後の臓器移植についての
臓器提供意思表示カードが広まった。
③ 知る権利…政治に関わる様々な情報を手に入れる権利。情報公開制度により、国や地方の行政は請求
に応じて保有する情報を開示している。
④ プライバシーの権利…個人の私生活に関する情報を公開されない権利。自分の顔や姿を勝手に撮影さ
れたり、公表されたりしない権利である肖像権などがある。個人情報保護制度
により、行政や企業は個人情報の慎重な管理を義務付けられている。
(2) 世界の動き…従来の人権保障は各国の区内で行われてきたが、国によって差が生まれ、重大な人権侵
害がおこってきたため、国際連合による活動が行われている。
① 世界人権宣言…1948年、基本的人権の国際的模範を示す。
② 国際人権規約…1966年、締約国に人権の保障を義務づける。
③ 子ども〔児童〕の権利条約…1989年、子どもも人権を持つことを確認した。
3-1 日本の政治と選挙
1⃣ 日本の政治
(1) 日本政治体制
① 民主主義…1人または少数の指導者がすべての物事を決めるのではなく. 関係者全員が話し合って物事
を決める, 政治のしくみ。
② 議会制民主主義…人々が直接話し合いに参加するのではなく, 代表者を選挙で選び、その代表者が
集まって議会をつくり, 話し合って物事を決める, 政治のしくみ。
(2) 政党政治と世論
① 政党…政治で実現したい理念や政策について同じ考えを持つ人々がつくる団体。選挙の際は、政策を
政策を明記した 政権公約 〔マニフェスト〕を発表する。日本では、議会の選挙で最も多くの
議席を獲得した政党が, 内閣を組織する。内閣を組織し, 政権をになう政党を与党といい、
それそれ以外の政党を野党という。1つの政党が過半数の議席を獲得できない場合は連立政権として内閣を複数の政党によって組織することもある。
② 世論…社会の問題について, 多くの人々によって共有されている意見のこと。 政府や政党は政治を行
ったり, 政策を考えたりするときに参考にする。新聞やテレビなどのマスメディアは世論の形成に強い影響力を持っている。国民には, マスメディアから発信される情報を、さまざまな角度から批判的に読み取る力であるメディアリテラシーが求められている。
2⃣ 日本の選挙
(1)選挙の基本原則と制度
① 基本原則…財産・性別に関係なく選挙権がある〔普通選挙〕、1人1票〔平等選挙〕、無記名投票
〔秘密選挙〕、議員を国民が直接選出〔直接選挙〕。
② 選挙制度…選挙で代表者を選ぶしくみのこと。公職選挙法に定められている。
・小選挙区制…候補者個人に投票, 1つの選挙区で1人の代表者を選ぶ。
・大選挙区制…候補者個人に投票,1つの選挙区で2人以上の代表者を選ぶ。
・比例代表制…政党に投票, 得票率に応じて各政党の議席数が決まる。
③ 選挙の問題…「一票の格差」。選挙区ごとの議員1人あたりの有権者数に著しい格差があり、最高裁
判所は「法の下の平等」に反する違憲状態だとしている。一般的に、1票の価値は都市
部より地方のほうが高い。
(2) 衆議院と参議院の選挙 (2015年時点)
|
衆議院 |
参議院 |
議員定数 |
475人 |
242人 |
任期 |
4年、解散がある |
6年、3年ごとに半数を改選 |
被選挙権 |
満25歳以上 |
満30歳以上 |
制度 |
小選挙区比例代表並立制 |
選挙区制 (小選挙区と大選挙区の混合) 比例代表制 |
3-2 国会
1⃣ 国会の地位の仕組み
(1) 国会の地位
① 憲法上の位置づけ…第41条「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」
② 日本の政治…法律を定める国会、 法律で定められたことを実施する内閣、法に基づいて争いを解決す
る裁判所が中心となって行われている。
(2) 国会の仕組み
① 二院制…国会には衆議院と参議院がある。目的は、国民のより広い意見を国会に反映させることと、
慎重な審議により衆議院の行きすぎをおさえること。
両院の議決が異なったときは、両院協議会が行われることもある。
② 衆議院の優越…法律案・予算案・条約の承認・内閣総理大臣指名の議決や予算の先議、内閣不信任の
決議といった重要な点では、衆議院を優先させる。衆議院が優先される理由は、任期
が短く解散もあるため選挙の回数が多くなり、国民の意見とより強く結びついている
と考えられるからである。
③ 会期(国会の種類)…毎年1月に召集される常会、必要に応じて開かれる臨時会、
衆議院の解散・総選挙の後に開かれる特別会がある。
2⃣ 国会の仕事
(1) 法律の制定…憲法の次に強い効力を持つ法である法律を制定する。
*法律制定の流れ
(2) 予算の審議・議決…内閣が作成した国の予算案を審議・議決する。
(3) 内閣総理大臣の指名…国会議員の中から指名する。
(4) その他の仕事
① 条約の承認…内閣が外国との間で結んだ条約を承認する。
② 憲法改正の発議…衆議院・参議院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成によって
憲法改正の発議がされる。
③ 国政調査…衆議院と参議院は国政調査権を持ち、証人喚間などを行う。
④ 弾劾裁判…職務を果たさなかったり、ふさわしくない行為をした裁判官をやめさせるかどうかの
判断を行う弾劾裁判所を設置する。
3-3 内閣と裁判所
1⃣ 内閣
(1) 内閣の役割と組織
① 役割…国会で決められた法律や予算に基づいて政策を実施すること。行政という。また、
法律案・予算案の作成、条約の締結、最高裁判所長官の指名、天皇の国事行為に対する助言と
承認を行う。
内閣は閣議を行い全会一致の原則により行政をつかさどる。
② 組織…内閣総理大臣 (首相)と内閣総理大臣が任命する国務大臣で構成される。
国務大臣の過半数は国会議員から選ばれる。
(2) 議院内閣制…国民は立法を行う議会の議員を選び、その議会が行政の中心となる内閣総理大臣を選ぶ
制度のこと。内閣は国会に対して連帯責任を負う。
衆議院で内閣不信任決議が可決された場合は,可決から10日以内に総辞職するか衆議院
を解散し、 総選挙を実施する。
(4) 行政機関
① 省庁…国の予算案作成を行う財務省や教育を所管する文部科学省などがある
② 行政改革…公務員の数を減らしたり、行政の効率化のために規制緩和などを行う。
2⃣裁判所
(1) 裁判所の役割と仕組み
① 役割…法に基づいて争いを解決することを司法という
② 三審制…1つの事件について3回まで裁判を受けられる制度。裁判を慎重に行い、被告人などの人権を守るための制度でもある。裁判所には最高裁判所と下級裁判所がある。高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の5種類がある。
下級裁判所では事件の第一審が行われ、判決に納得できない場合は高等裁判所に控訴する、さらに不服があれば最高裁判所に上告することができる
③ 司法権の独立…憲法第76条3項「すべて裁判官はその良心に従い、独立してその職権を行い、この憲法および法律にのみ拘束される」→ 立法権、行政権と距離を置き、公正な判断を行うことが求められる。
(2) 裁判の種類
① 民事裁判…個人や企業菜とが起こした裁判。訴えた側が原告、訴えられた側が被告となる。
② 刑事裁判…犯罪行為について、有罪・無罪の決定を行う裁判。検察官が被疑者を訴えることを起訴といい、起訴された被疑者は被告人となる。被告人は弁護人を依頼する権利があり、費用がなければ国が用意した国選弁護人が弁護を行う。被疑者の逮捕には裁判所が出す令状が必要で、裁判は公開となる。
③ 裁判員制度…抽選で選ばれた国民が裁判員として刑事裁判の第一審に参加する制度。
3-4 三権分立
1⃣三権分立
(1) 三権分立…フランスの哲学者・シャルル・ド・モンテスキューが提唱した仕組み
国家権力を立法権、行政権、司法権に分立し、互いが監視しあうことで権力の均衡が保たれることで権力の乱用を防ぐことが狙いである。
(2) 違憲審査制(違憲立法審査権)…裁判所が、国会の制定した法律や行政の活動などが憲法に違反してい
ないかを裁判を通して審査する仕組み
(3) 国民審査…最高裁判所の裁判官がその職にふさわしいかを国民が直接審査する制度。衆議院選挙の
投票と同時に行われることが慣例となっている。
2⃣地方自治
(1) 地方自治の仕組み
① 地方議会…地方公共団体(地方自治体)=都道府県や市区町村に設置される議会のこと。地方公共団体独自のルールである条例を定めることができる。
② 首長…都道府県知事や市区町村長のこと。住民から直接選挙でえらばれる。国会と内閣の機関と同様に 首長は議会を解散する権限を持ち、議会は首長の不信任決議を行うことができる。地方公共団体は首長と地方議会の議員を住民の直接選挙で選出する(二元代表制)
③ 直接請求権…住民による直接民主制の要素を取り入れた権利。住民は一定以上の署名などを集めることで様々な請求ができる。そのため、地方自治は「民主主義の学校」と呼ばれる。
④ オンブズマン(オンブズパーソン)制度…地域の重要課題について住民全体の意見を問う住民投票などが行われる際などに行政から独立した視点から調査・提言を行う存在。
(2) 地方財政
① 自主財源…地方公共団体が独自に集める地方税(住民税など)地方財政全体の4割ほどを賄う。
過疎地域や少子高齢化による人口減少など、自主財源の割合が少ない自治体も多い
② 依存財源…地方公共団体の財政格差を埋めるために国から支給される財源または地方債などの公債
金。使い道が国に指定されている国庫支出金や、財政格差を埋めるための地方交付税交付
金などがある。東京都は地方交付税交付金を受け取っていない。