月の位相角と輝面比 | 池袋駅南口の天文計算

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前記事で月齢・月相・位相角・輝面率(輝面比)という言葉を使ったのですが定義を再確認しておきます。

月齢

Wikipediaの説明をそのまま引用してしまうと

  「直前の朔の瞬間からの経過時間を日を単位として表したものである

となります。注意しなければならないのは月齢というのは経過時間であってそれ自体が月と地球と太陽との位置関係や月の満ち欠けの状態を示すものではないことです。

月相

これも引用すると

  「太陽と月の黄経差を月相と定義する

ということになります。ただし月相と言った場合は

  28 * 太陽と月の黄経差 / 360

として表します。これは月・地球・太陽の位置関係を表していると言えば表しているのですが月の位置を黄道面に投影したものと地球・太陽の位置関係ですからこれも月の満ち欠けを表すものにはなりません。

位相角

さすがにこれはWikipediaにはありませんが

  「太陽と月と地球がなす角

です。より詳しく言えば

  「月と太陽が結ぶ直線と月と地球を結ぶ直線がなす角

です。太陽も月も真球だとすれば月の満ち欠けを示す値になります。つまり0度であれば__これは日食の状態です__月は完全に欠けた状態ですし、180度であれば__これは月食の状態です__100%光っている、欠けた部分がない状態ということになります。

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満ち欠けはじっさいには輝面率(輝面比)で表されることが多いようです。すなわち(見かけの)月(水星や金星でも同じです)の面積に占める光っている部分の面積の割合です。

位相角と輝面率がどういう関係にあるかを考えてみます。

月の光っている部分と光っていない部分の境目はほぼ大円になっています。位相角が0度あるいは180度でないときはこれを斜めから見ることになりますから楕円に見えます。

仮に右側の方が欠けているとすれば円の左半分と楕円の右半分の面積を加えたものが光っている部分の面積になります。また楕円の短半径は位相角をθとすると

  月の半径 * cos(θ)

になります。楕円の面積は

  π * 長半径 * 短半径

ですから月の半径を1として考えると

  月の光っている部分の見かけの面積 = π * 1 * 1 / 2 + π * 1 * cos(θ)

そしてこれを

  月の見かけの面積 = π * 1 * 1

で割ったものが輝面率ということになります。したがって

  輝面率 = ( 1 + cos(θ) ) / 2

となります。

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位相角から輝面率が求まるわけですが、では位相角はどうやって求めるかということになります。これは位相角の定義から

  cos(θ) = 月から見た太陽の方向余弦月から見た地球の方向余弦内積

となりますのでこれから位相角θを求めることができます。

正確には「月から見た地球の方向余弦」ではなく「月から見た観測地の方向余弦」になりますが、「月の光っている部分と光っていない部分の境目は大円」という仮定は厳密には怪しいので実際そこまで考える必要があるのかないのかよくわかりません。
でも計算例は「月から見た観測地の方向余弦」で計算してみました。

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下記のExcelファイルは観測点から見た月の座標の計算の仕方に問題があったので差し替えてあります。月や太陽の視位置も計算で求めるものになっています。

一般的に「位相角」、「輝面比」ということばは地心から見たものを指すようです。地心から見たものであれば暦象年表などで検算できるのですが、観測点から見たものはそういう方法がとれません。日食の中心食の地点の緯度・経度と時刻を入力して位相角が180度、輝面比が0.0になるのを確かめるというのが検算の方法としてあり
ます。このとき一般的にいう位相角つまり地心から見た位相角はぴったり180度にはなりません。なお検算用の中心食の地点として高緯度の地点、朝または夕方に日食が起きるようなところが選べるような日食を選んだ方がいいです。

(2014-04-21 17:38:53)
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実例

  「輝面率.xls

  2013年11月18日 00時16分(望=月相:14.0)
  東経   139.70度
  北緯   35.70度
  位相角   1.86度
  輝面率  99.97%

  地心から見た場合
  位相角   1.60度
  輝面率  99.98%


  ※ 地心から見た場合の値は「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表」で検算できます。

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