生きていく上で必要なことがある。

まずこの世界は、
綺麗事だけでは生きて行けないということ。

実際私も離婚したときは、
金や後ろ楯がなければ生きていけなかった。

悪いこともずるいことも、
背に腹は変えられなかった。

ファンタジーだけの絵空事では、
電気もガスも水道も止められる。
霞か雲を食べて生きていくしかない。

そんな少女漫画かアニメみたいな世界は、
物質世界ではまずありえない。

私は幼い頃から、
少女漫画の中にも厳しい現実を見ていた。

他の女の子達が、
「いつか王子様が」
と夢みたいな恋愛漫画に夢中になっていたとき、

白馬に乗った王子様キャラより不良やさぐれキャラが好きだったし、

(キャンディ・キャンディではアンソニーよりテリィ)

「そんなの有り得ない」
とリアリティのあるものばかり読んでいた。

なんとなく、
私は早く家を出て、
ひとりでも図太くしたたかに生きなければならないと思っていた。

少女漫画は私にとって、
夢の世界ではなく、
現実を生きていくためのバイブルだった。

私が大人になっても、
まだ漫画を読み続けているのもそのためだ。




岡崎京子の漫画もそのひとつである。


彼女の描く漫画も、

「普通に生きることが難しい少女たちが、
生きていくだけの為に、
どんどん壊れていく様子が描かれている」


まず私が最初に彼女に惹かれた作品は、
「Pink」だった。



なんの変哲もない普通の少女が、 
継母に苛められ、
自由な暮らしを手にする為に売春婦となる。

金の為とはいえ男にいいように扱われ、
ワニを飼うことでそのストレスを発散していた。

親友であるワニにニワトリをエサとして与え、
嫌な客を喰わせる想像をすることで、
なんとか精神のバランスを保っていたが、


ある日、
大事なワニを意地悪な継母に、
ワニ皮の鞄にされてしまう。
あわや精神崩壊か?
と思われたが、


売春婦をやめ、
ワニ皮の鞄と共に、
自由に世界を駆け回る旅に出る決心をする。

一体どこ行っちゃったの?
どうやって生きていくの?(°Д°)


ヘルタースケルターもそうだが、
通常こういう自分の欲望に従って生きる女は、
大体不幸な道をたどり、

読者への「見せしめ」や「教訓」のように、
不幸な罰を与え、
不幸な最後を迎えるものが多いのだが、

岡崎京子の漫画は違う。

発想の転換というか、
常識をひっくり返す、
大どんでん返しが起こるのだ。

私はそこに、
強く生きなければならない現代女性への、
作者のエールやリアリティを感じて、
ぞくぞくするのだ。


しがない風俗嬢であったが、
全身整形をしてカリスマモデルになったリリコという女が、
富と名声や全ての幸せを手に入れ、
思い通りの人生を歩んでいく矢先に、

完璧だった美しい顔が崩れていく、
その恐怖に恐れおののき、


写真週刊紙に過去をスッぱ抜かれる。


薬の影響で幻覚に苛まれ、
あわや人生ここまでか?

と誰もがそう思ったその瞬間、 
リリコは姿を消す。

そして最後のページがこれだ。



何故かメキシコでタイガーリリィと名乗り、
女王様に君臨しているのだ。

何故?どうやって?

ちょっとちょっと、
これからどうなっちゃうの?(°Д°)

と読者を煙に巻いて、
物語は未完に終わっている。

(連載中に作者が事故にあったという説もある)

しかし、
未完のストーリーでも映画になってしまうほどの出来映えである。

女の人生としては愉快痛快、

「天晴れ」というしかない。

(過程はどうあれ幸せになるのは決まっているので、ガタガタ言うな!みたいな作者のぶん投げ感が逆に気持ちいい)


実際に、
私には風俗で働いている知人がいる。

夢を叶える為に、
専門学校の学費を自分の身体で稼いでいるのだ。
鬱病で働けない彼氏と同棲している。

女が親や男に頼らず、
生き抜いていく手段としては、
合理的な選択肢だと思う。

私は職業で差別する気はない、
どんな仕事でも尊い。

彼女達は間違ってないと思うし、
どんな扱いをされてもいい立場の人間ではないと思う。

どんな仕事でもこの世界に必要だから存在するのだ。
なければ性犯罪が増えるだろう。

金の為ならどんな男でも受け入れる、
彼女達は男にとって女神であり聖母である。

虐げられる存在ではない、
もっと崇め奉られてもいいはずだ。

今の女性に必要なのは、
ひとりでも生き抜いていく図太さとしたたかさとずる賢さだと思う。

結婚して男に食べさせてもらう人生なんて、
もはや幻想に近い。

全ての人間は精神的or経済的に自立するべきだ。
依存の果てに真の幸せはない。




私が離婚したとき、
法外な健康保険料に目を剥いたことがある。

役所に異議申し立てをしに行ったら、

「あなたと同世代の女性は、
このぐらいの稼ぎでこのぐらいの保険料を納めているので、それを元に算出しました」
と言われた。

「では、家賃を払い充分な生活ができ、
このぐらいの保険料を払える仕事を紹介してください」
と私は言った。

それでやっと保険料を見直ししてくれた。
言わなかったらそのままだった。

誰も守ってくれるはずなどない、
弱者はいつも弱者のままで、

ましてや、
コロナが蔓延するこのご時世に、
自分以外に信じられるものなんてない。





Twitterでも風俗で働く障害者が、
「普通の仕事では雇ってもらえないし、
こんなにもお給料ももらえない、
ありがたいことだ」
とツイートしていて、

それに対し、
「若い子がこのツイートを見て、
簡単に稼げると真似をするから、
田舎暮らしでもして畑でも耕したら?」
とリプを飛ばしている人を見た。

全くもって世間知らずの、
つまらないくだらない正義感だ。
上っ面だけの他人事のクソバイスに反吐が出る。

そういう綺麗事だけで生きてきたやつが、
ニュースを鵜呑みにして夜の商売を全てなくそうとしている。

そんな単純な短絡的な問題ではないのだ。
夜職だった人間を受け入れてくれる場所がどこにある?

裁くやつが居るなら、
私が裁いてやる。

「生きていく為だけに底辺で汚れていく人間がいる」
「お前さんは今まで虫も殺さずご立派に生きてきたのか?」と。

自分の手も汚さず、
一点の曇りもなく、
「清く正しく美しく」なんぞ生きれるはずもない。

手段など選んでいる場合ではない、

希望的観測だ、

全くもって現実味がない。

理想論だ、全て幻想だ。


何が綺麗な生き方で、
汚い生き方だったかなんて、
死んでみないとわからない。

生きていくことに意味はない、

だけど自分の人生に意味を見出だすまで、

2人の娘の母親でもある私が言いたいことは、


「なんとしてでも生きろ、
つらくても死ぬな」

ただ、それだけである。


それなら派手にやっちゃえ!」

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次回は8/5(水)に出演予定です↓

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