スナイパーズストリート7 | 風の痛み  Another Tale Of Minako
7.

「何……隣か!」
銃声が正面の東隣のビルから聞こえて、スアドは思わず、口走ってしまった。

「隣のビルなんだな」
イヤホンからボヤンの声が聞こえた。
「ボヤン、無事か……」
スアドはほっとして、声をかけた。
「ケーノがやられた」
「ケーノが……」
スアドの脳裏に、仲間内で最も若く、いつもにこにこしていたケーノの顔が浮かんだ。

(……だめだ……)
スアドは、一瞬、ケーノのことに気をとられ、ボヤンへの指示が遅れた。
今の狙撃は、東隣のビルからだが、最初のやつが移動したとは限らない。
別のやつかもしれない。
ひとりとは限らないのだ。
「ボヤン、やめろ。降りて来い。出直すぞ」
ボヤンの返事はない。
「ボヤン、やめろ」
遅れた時間を取り戻そうとするように、スアドは大声で叫んだ。