4.
「土曜日、お母さん、来たわよ」
真治が佳子のところに行く前に、陽子は話しかけた。
「ああ、そう言ってた。ああ、あれ、おふくろが、ありがとうって…」
「どういたしまして、じゃぁ、今度はこれ」
陽子は、サラダバーの半額券を2枚渡した。
「これは、ちょっとなかなか回ってこなくて、2枚でごめんね」
嘘だ。
そう言ったほうがありがたみが増す。
「悪いな。またおふくろに渡しとくよ」
背中に佳子の視線を感じた。
この辺が限界だ。
「じゃぁ」
陽子はそう言って、さっさと教室を出て行く。
真治と佳子の様子を見たい気もするが、振り返らない。
振り返って、佳子と目があったら大変だ。
陽子と佳子は、別に仲がよかったわけでも悪かったわけでもないが、確実に悪い方向に向っている。
そのことは、陽子にもわかったが、もとより、それを改善する気などさらさらない。
今の段階では、佳子の考えすぎなのだ。
真治は、陽子のことなどなんとも思っていないに違いない。
変な気を遣うほうがよけいにおかしい。
佳子の誤解なのだ。
その誤解が、陽子の狙いでもあるのだが…
「愛美、レオタード来たわよ」
「ほんと?」
期待と不安が入り混じったというのは、たぶん今の愛美の表情を言うのだろう。
「見る?」
陽子は、包みを開いてレオタードを取り出した。
「うーわぁ、派手」
こういうものは、“ノリ”で身につけるものだ。
常識はずれなほど派手なほうがいい。
「これ、着るの?」
愛美は、度を越した派手さに笑い出した。
「陽子のは?」
「わたしのは、これ」
見た目には、どうということもない。
「着る?」
愛美のほうからそう言ってきた。
「お風呂に入ってからね」
「なんか、脇のお肉が減ってきたって感じ」
陽子は、いつものように愛美の脇のお肉を乳房のほうに強く寄せながら言った。
「うそ。ほんと?」
減ったといえるほどではないが、少し最初とは感触が違う。
「おっぱいが小さくならないようにしないとね」
「陽子」
「何?」
「ありがと」
愛美が涙ぐんでいる。
「何よ、急に…」
「えへ、なんか、うれしくて…」
「だめよ。まだまだなんだから…」
「ううん。そうじゃなくて、陽子がいろいろしてくれるのがうれしくて…」
「はぁ?」
「陽子、やさしいよね」
そんなことを面と向って言われたことはない。
「でも、ここは、変わらないみたい」
陽子は、照れ隠しに、愛美の閉じた太ももの間に腕を突っ込んだ。
「あはっ、そこ、本当に太いわよね」
愛美は、まるで他人事のような口調で言う。
「男の子って、多少太いほうがいいんだって…」
「そうなん?」
「わかるような気がする。だってね、すっごく気持ちいいよ」
陽子は、愛美の太ももの間に入れた腕を前後に動かした。
ぷよぷよも太ももと、ぬるっと暖かい股間の感触がなんともいえない。
「やだ、陽子。すけべ」
「愛美もやってみれば…」
陽子は立ち上がると、愛美の腕をひっぱって、その腕の上にまたがった。
「どう?」
「ほんとだ。なんか柔らかくてあったくて、いい感じ」
「でしょ」
「お尻が揺れて、すごくエッチだけど…」
「男の子が喜ぶかな?」
「喜ぶ、喜ぶ」
もうバスルームでのエクササイズは、問題ない。
二人ともそれをさっさとこなして、お風呂から上がった。
「さぁ、着るわよ」
着ている間は、お互いを見ない。
(うわぁ、すっごいカット、はみだしちゃう)
腰骨が出るほどのハイレグ。
それでも陽子は、わざと下には何もつけなかった。
最初は、“きつーい”とか言う声が聞こえていたのだが、陽子の後ろでいつのまにか愛美は沈黙していた。
高かったテンションが一気に落ち込んでしまう現実。
お腹にできた何段かのしわ。
はみ出している脇と太ももの肉。
陽子が振り返ると、さっきとは違う泣き顔があった。
「愛美」
「ん?」
「後ろから写真撮って」
陽子は正座したまま、上体を前に倒していった。
手を床につけて腕を前に伸ばしていくと、自然とお尻が浮き上がる。
「ねこのポーズなの」
デジカメを構えた愛美の目の前を、陽子の豊かなお尻が覆った。
ハイレグのレオタードが、股間に食い込んで、見ている愛美のほうが恥ずかしかった。
「エロい?」
陽子は、わざと楽しそうにきいた。
「超エロい」
「グラビアアイドルになれる?」
「うーん、ちょっとお尻がでかすぎかも」
「そっかー」
「嘘よ。すっごくいい感じ」
「そう?ありがと。じゃぁ、交替」
「えっ、わたしも?」
「そりゃ、そうよ」
愛美は正座すると、陽子と同じように上体を倒すが、陽子のようにはお尻をつきだせない。
「愛美、もっとお尻上げて…」
少し上がった。
「もっと」
「恥ずかしいよ」
「愛美のお尻、まん丸でいい形だよ。ぜんぜん恥ずかしくないって…」
実際、まん丸だった。
愛美のお尻がもう少し後ろに突き出された。
(うわぁ、すんごくエロい)
「超セクシー」
「やだ」
「ほんとよ。柔らかそう。触っていい?」
陽子は、思わず愛美のお尻に手を伸ばした。