No pain, No gain 3-5 | 風の痛み  Another Tale Of Minako
5.

「由佳、うちでお昼する?」
裕子が声をかけてきた。
テストは午前中で終わりだ。
裕子の家の近くのコンビニでいろいろ買って、裕子の家に行った。
いつもの行動パターンだ。
裕子の家は、お母さんはスナックのママさんで、お父さんはいない。
お姉ちゃんがいて、キャバクラのナンバー1ホステスらしい。

「真一、一人暮らしなんだって、知ってた?」
どこで仕入れてくるのか裕子はいろんなことをよく知っている。
「親は?」
「お母さんは、亡くなってて、お父さんは、今、海外に赴任してるらしいわ」
「へぇ、そうなんだぁ」
「そう」
「お母さんいないのかぁ?」
「そっちか?…ずいぶん前に亡くなったらしいわ」
「ふーん。で、どうしてそんなこと知ってんの?」
「真美さんって、お母さんの店でバイトしている人なんだけど、知ってる?」
「うん、知ってる」
会ったことはない。
裕子から聞いたことがあるだけだ。
裕子に言わせると、とびっきりの美人らしい。
「真美さんがね、真一のお父さんと付き合ってるの。向こうも独身だから、愛人ってわけじゃないんだけど、けっこう歳が離れてるしねぇー」
「ふーん」
(“…ねぇー”って語尾を伸ばされても…、何が言いたいの?)

「あっ、そうだ。わたしが作ったケーキ食べる?」
(出た、得意の言いっぱなし)
裕子が冷蔵庫からケーキを出してきた。
「えっ、これ、裕子が作ったの?」
ありえない。
こんなこと絶対にありえない。
裕子がケーキを作るなんて…。
「お母さんがね、お店のお客さんにあげるんで、材料いっぱい買ってきて…」
「裕子、正直に言え」
「まぁ、大半はお母さんが作ったんだけどね」
そんなことだろうと思った。
しかし、いかにも手作りですよっていう風情をかもし出す見事な一品だ。
きれいに作りすぎると買ってきたんじゃないかと疑われる。
といって不細工だと、まずそうに思われる。
おいしそうで、なおかつ手作り感を漂わせる。
裕子のママはただものではない。

「明日、ラグビー部、花園に出発するみたいよ。見送る?」
とりあえず裕子にも声はかけとかないと…
「そうなの。いく。どこ?何時?」
「学校、朝7時集合だって」
「7時?何よそれ」
「わたしに言ったって…」
「行けたら行く」
でた。根性なし裕子。
「わかった。じゃぁね」

裕子の家を出て、さっき寄ったコンビニを通り過ぎたところで急に雨だ。
どうしよう…もどって傘買おうかななんて思ってると
キーッ
突然後ろでブレーキ音がした。
コンビニに入ろうとした車が歩道で止ってる。
横で人が転んでいた。
何なの?事故?
車から慌てて人が降りてきた。

(あれ?)