尾辻 恵美先生(シドニー工科大学・准教授)
日時:2025年1月9日(木)17:00-18:30
場所:Zoom開催
演題:「個人から分散化された能力―セミオティック・アセンブリッジの視点から―」
2025年1月9日に、シドニー工科大学にご所属の尾辻恵美先生先生が、Zoomで「個人から分散化された能力―セミオティック・アセンブリッジの視点から―」についてご講演をしてくださいました。
ご講演の前半では、社会言語学でのパラダイムについて論じ、人間的と非人間的要素によりことばと能力が形成されることを紹介してくださいました。その中で、バグラデッシュのコンビニで撮られたビデオ(アフリカ人のお客様と現地のスタッフの相互行為)を通じて、場所に分散されたセミオティック資源を駆使しながら、社会的な相互実現が生まれたことが分かりました。また、分散化されたことばとセミオティック・アセンブリッジの視点から、より包括的で能力を提唱すべきであると尾辻先生より提起されました。
ご講演の後半では、質疑応答の時間が設けられ、基調講演に基づいたことばの教育における課題と示唆について話が続き、各国の国勢や政策への推察、教える現場と社会の現場といった現場への関心、社会言語学や応用言語学といった領域の対話などの重要性について言及されました。これからのことばの教育を考えていくには、批判的・倫理的姿勢が大切であり、従来の言語と言語教育のイデオロギーの変革が必要であることが分かりました。
この度、尾辻先生にご講演に応じていただき、誠にありがとうございました。今回の講演を通じて、ゼミ生一同は言語と言語の教育についてセミオティック・アセンブリッジという新たな視点で考えさせられました。
≪主な御著書≫
・尾辻 恵美(2016)「ことばの市民性形成の将来的展望―社会観,言語イデオロギー,言語教育イデオロギーの転換に向けて」細川 英雄・尾辻 恵美・マルチェッラ マリオッティ(編)『市民性形成とことばの教育―母語・第二言語・外国語を超えて』くろしお出版
・尾辻 恵美(2021)「第二言語イデオロギーの転回におけるメトロリンガルの強み」尾辻 恵美・熊谷 由理・佐藤 慎司 (編)『ともに生きるために―ウェルフェア・リングイスティクスと生態学の視点からみることばの教育』春風社
添付:講演のポスター(コバ研より作成)、講演中の写真