宇佐美まゆみ先生(国立国語研究所・日本語教育領域)
日時:2020年07月30日(木)14:45-16:15
場所:ZOOM開催
演題:『BTSJ日本語自然会話コーパスと自然会話を素材とするWEB教材NCRB
(Natural Conversation Resource Bank)―その活用法―』
7月30日に、国立国語研究所(日本語教育領域)の宇佐美まゆみ先生がZOOM(オンライン開催)でご講演してくださいました。
今回のご講演では、「ポライトネス」を主役とする自然なコミュニケーションの教育についてのお話から始まり、BTSJ日本語自然会話コーパスと自然会話リソースバンク(NCRB)のご紹介を伺うことができました。さらに、時代背景の変化にあわせた日本語教育授業のオンライン化・ICTを活用した日本語教育のあり方について、お話を聞かせていただき大変勉強になりました。
ご講演の前半では、自然なコミュニケーションから見られる「ポライトネス」についてお話を伺いました。そして、「会話能力への問いかけ」や「日本語母語話者のコミュニケーションの特徴」からみると、自然会話データを、研究のみならずコミュニケーション教育のための教材として利用するという必要性についても伺いました。より自然なコミュニケーションができるように、語用論的情報の記載が豊富な「BTSJ 日本語自然会話コーパス」が誕生したこと、また、BTSJという自然会話の文字化の規則を定めたBTSJのお話は、自然会話のデータを扱う上での重要なポイントに気づくことができ、大変勉強になりました。BTSJは、話者の話し方に大きな影響を与える社会的要因(会話の場面、話者の属性(年齢、性別等)、対話相手との関係)についての記載があり、そして、日本語の会話教育に欠かせない、周辺言語情報(フィラー、相づち、オーバーラップ、割り込み、笑い、沈黙)の豊富な記載も明確にされています。従来の会話コーパス、文字化システム、コーディング・タグ付けから見られる限界を突破したことが分かりました。
ご講演の後半では、コーパスを活用する方法論「総合的会話分析」についてのご紹介をして下さいました。具体的には、1)条件を統制したデータ収集を行う、2)「録音された会話」以外の部分も重視する、3)定量的分析も可能な文字化資料を作成する、4)定性的分析を踏まえたコーディングを行う、5)コーディングの「信頼性」を確保する(定量的処理)、コーディングの「妥当性」の確認する(定性的分析)という六つのポイントについてご説明いただきました。そして、最後の、質疑応答では、これからBTSJを用いて研究を進めていきたい院生たちの疑問に対して、非常に貴重なご意見を聞かせていただきました。
コロナの影響で対面授業、講演などが行えない中、オンライン講演のご要望に応じていただき、また我々院生の心に大きく響きを与えてくださり、本当にありがとうございました。
≪主な御著書≫
『自然会話分析への語用論的アプローチ―BTSJコーパスを利用して』編著,ひつじ書房,2020年
「ポライトネスとジェダ-:隠されたヘゲモニー」『ジェダ-で学ぶ言語学』世界思想社,2010年
『言葉は社会を変えられる』編著,明石書店,1997年
添付:当日のポスター、講演中の写真1枚、参加者の集合写真