2006年の冬、12月の冷たい空気が肌に触れる中、13歳の私はひとり、AKB48のチームBオーディション最終審査に臨んでいた。


オーディションの場は緊張に包まれていたが、

私の心は驚くほど落ち着いていた。


胴着を着て、帯を締め、ゆっくりと空手の

「形」を披露する。


まるで過去の自分との対話のようだった。

自分を信じ、ただ静かにその瞬間を生きていた。


審査の後、総合プロデューサーから

「どうして胴着を着ているの?」

と尋ねられた私は、

真っ直ぐに「好きだからです」と答えた。


その時、言葉にしたその「好き」は、

私の人生に深く根付いた空手への想いだった。


最終審査を無事に通過し、

チームBのメンバーとして選ばれた私は、

これまで100回以上挑んできたオーディションに勝ち続けた経験を振り返りながら、

いつも私のそばには空手があったことに気付いた。




〈空手との出会い〉


私が空手に出会ったのは小学校1年生の時。

なぜ始めたのかは今となっては思い出せないが、

両親に聞くと「女の子だけど、強く育ってほしいから」と言われた。


空手は私にとって唯一続けられた習い事であり、その理由は単純に「楽しかったから」だったのだろう。


剛柔流空手は、肉体と精神を鍛える奥深い道。


特に「空手とは、人に打たれず、人打たず、事のなきを基とするなり」という教えは、

私の中に深く染み込んでいる。


空手が教えてくれたのは、

力強さとは相手を倒すことではなく、

自分を律することであり、

他人を尊重し、自分に誇りを持つことだ。


空手を学びながら、

私は自分の成長をゆっくりと感じていた。

他人よりも物覚えが遅いと感じることも多かったが、毎日一人で練習を重ね、形を覚え、自信をつけていった。


「継続は力なり」という言葉の意味を、

何度も自分に問いかけながら実感していったのだ。