『アルツハイマー病研究、失敗の構造』カール・へラップ(みすず書房)を読んでみた。
アミロイドのプラークは、アルツハイマー病の原因のひとつ。
でも、アミロイドプラークがある人が必ずアルツハイマー病の症状が出ているかというと、そうではない。
だから、アミロイドプラークがアルツハイマー病の原因とは言いきれない。
なのに、そのアミロイドプラークひとつに賭けて治療薬を追い求め、業界(大学、製薬産業、政府肝いりの研究機関)は迷走を続けてきた。そのありさまが綿々と書かれている。著者もアルツハイマー病の研究者。長年にわたって、アミロイドβのみに焦点をあてて研究することに異議を訴えつづけ、ソデにされてきたものから、もう筆が止まらない。
一番面白い(?)のは1990年代の後半、アルツハイマー病を防ぐ手段として、プラークワクチンが開発されるという出来事。それはマウスに接種され、「驚愕の大成功」となる! 予防効果があっただけでなく、できはじめたプラークにも効いたというからすごい。「シャンパンの栓が抜かれ、葉巻に火がつけられ」そして人間さまへの治験が始まる。すわ、衝撃のアルツハイマー病ワクチン誕生、だった。人にワクチンを投与した場合も、マウスと同じく、アミロイドプラークは脳からきれいになくなった!しかし人の場合はアルツハイマー病は消えなかった。 そして、人への治験では命にかかわる副作用が出た。しかし、それでも業界はアミロイドプラークにしがみつき続ける。
最後まで読んでも、なぜ、それほどまでに成果の出ない「アミロイドプラーク」に固執し続けるのかのわかりやすい回答はなかった。科学者であるから推量でのオチは避けているのだと思う。
読みながら、私自身は、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)のことを思わずにはいられなかった。
90年代の後半、ワクチン開発に大失敗をしてからダッチロールを続けるアルツハイマー病研究とは逆に、世界には、輝かしいワクチンが誕生している。HPVワクチン。HPVが子宮頸がんの原因ウイルスであるというハウゼン博士の仮説のもと、原因ウイルスを同定してHIVワクチンが誕生する。2008年にはハウゼン博士のノーベル賞のお墨付きも得る。世界中で推奨され、若い女性に接種された。大もうけだ。
子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)が持続感染して、すごく悪化した場合に、やっとがん化する病気とされている。ヒトパピローマウイルスは常在菌で、200近くも種類がある。健康な人は感染しても自然に排除してしまう。だから、ヒトパピローマウイルスに感染すること自体は、なんの問題もない。なのに、それを排除するワクチンができた。それで子宮頸がんが防げるのか? 実際、日本の場合で見ると、このワクチン接種がスタートしてから、まったく子宮頸がんでの死亡率は減ってない。副作用も多すぎて裁判になっている。ハッキリ言って、疾患を減らすために、ワクチンはなんの役にもたっていない。でも、大もうけだ。
それを考えると、アルツハイマー病の場合、アミロイドプラークでワクチンをつくる夢に、どれほどの人が投資したのだろう?と思う。投資したものは回収しなければならない。きっとできる。アミロイドβのプラークというわかりやすい敵は広報にはうってつけだ。投資家の心もつかむだろう。金持ちは長生きに執着するからなおさらだ。ワクチンができれば人は我先に打ちたがることだろう。どこの国の政府も買うだろう。ほんとうに効くワクチンである必要はない。副作用も多少は仕方ない。HPVワクチンだってそうじゃないか。そんな妄想のとりこになっていた連中がいたに違いない。・・・なんてことは本には書いてありません。これは私の感想です。
正直言って本の後半の、この著者のアルツハイマー病研究の展望論は難しくてよくわからなかった。でも、とにかく、アミロイドプラークが悪の巣窟ではないこと、その排除を求めてもアルツハイマーの治療にならないこと、アミロイドプラークにしがみつく輩に要注意、ということだけは、しっかりわかった。
この本の刊行と同じタイミングで日本で発売される認知症の薬。これがまさに、アミロイドプラークの薬なのだからガックリくる。しかも、プラークができるのをほんのわずか遅らせることができる(といえるのかもあやしい)だけの薬。脳の腫れなど副作用も指摘されている。しかも、心疾患やがんなどの既往症があると使えないとはどれほど怖い薬なのか。しかも値段は一人一年間390万!!!保険適用だから7割税金!!! どんだけ~!!!!!
本は今年の8月に刊行されて2カ月とたたずに重版しているから、評判になっているんだろうか? 帯や宣伝文句には、「良心の一石」「真摯な総括と告発の書」とある。どれだけの人に届くのか。
