「ボクはやっと認知症のことがわかった」 長谷川和夫 猪熊律子 KADOKAWA
「長谷川スケール」という認知症度数を測る指針を作った認知症専門医が、自らも認知症になった。その医師による著書。
NHKでやっていた長谷川先生のドキュメンタリーを観たとき、長谷川先生が、音大出身のご夫人が弾く、ベートーベン悲愴の2楽章に耳を傾けるシーンが印象的だった。長谷川先生は、自分では患者にデイサービスなど奨めていたくせに、自分はあまり気が進まないようで、ご夫人はどんなにか大変だろう、と気になった。いったい、長谷川先生はどんな気持ちで介護されているのだろう?などとも思った。
ご夫妻の姿が心に残り、自分の家族が少しずつ介助が必要になり、時おり対応に悩むようになった私にとって、何か参考になることがあるかもしれないと、手にとった本だけれど、この本には明確なアドバイスが示されていた。
認知症は、朝は調子がいいが、午後になるとだんだん疲れてくるなど、調子の変動があり、「固定されたものではない」こと。
先に「こうしましょう」とどんどん話を進めるのではなく、待ってこちらの言うことを聞いてほしい。
「認知症になったら「何もわからなくなる」と思っている人がいます。でも、繰り返しますが、そんなことはありません。心は生きています。嫌なことをされれば傷つくし、褒めてもらえばやはり嬉しい」
「認知症の人を、ただ「支えられる人」にして、すべての役割を奪わないということも心がけていただきたい」……
「褒めることを忘れないでほしい」
このことは繰り返し書かれていた。
認知症に限らず、病気や体の不自由な家族に決して忘れてはならないことだと思った。
構成も文章も読みやすく、なにしろ本人が患者であるだけに、必要以上の薬や検査をすすめていない。認知症を知る最初の1冊としてもいい本だと思う。
